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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第0話 夜明けの序章あるいはプロローグ
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■開戦 ◎アズミ

   序文





 この世界には種々の物語が存在する。しかし、その全貌を知る者はあまりに少ない。



   ――◇◇◇――


   

 ほの暗い海中にうごめく人影の群れ。

 その背後には巨大な魚影の群れ。


 それらが機械仕掛けのものであると理解するにはかなり近づく必要があった。

 人型のものはロボットのようだし、魚影は艦のようだが、この暗がりでは細かい形状や色まではわからない。


『セイオーム軍・三部五機大隊、並びに我々フユクラード軍・二部四機中隊の陣形配置が完了しました』


 男が「了解」と短く返答する。

 目の前のディスプレイから立体の部隊配置が浮かびあがっている。


 一五本の黄色いピンと八本の黒いピン。後方には五機の艦影。相対するのは青いピンが一二本。

 そのうち黒いピンが一本点滅している。それが自身の配置を示していた。


 フユクラード軍はセイオーム軍の「進軍」という号令を待つ立場にある。フユクラードという国家はセイオーム国との同盟により軍を派遣したという形を取っているためだ。

 この場合の指揮権は呼びかけた側にあるというのが慣例である。


 二三本のピンは黄色いピンを中心としてアーチ形を保ったまま並列している。黒いピンはその両翼に四本ずつ配列されている。


 方角にして東方より。輝光きこうが一閃のごとく射しこまれて扇状へ広がっていく。筒闇は徐々に退き、光明こうみょうが世界を照らしはじめる。


 その世界では海がどこまでも果てしなく広がっていた。ただし、ひどくいびつである。

 泳いでいるのはおそろしく巨大なクラゲに鋼の魚と機械仕掛けの人形たちだ。


 その機械仕掛けの人形たちが夜明けとともに動きはじめる。

 フユクラード軍とセイオーム軍の目標地点は海中を漂う巨大クラゲだ。拡大してみると傘の中に建造物が見える。


 クラゲの傘内で人間が生活をしていることを示していた。

 人型機械が朝日に照らされる。黄色い一五機と黒い八機。それぞれが盾と銃を構えていた。


『各機に告ぐ。進軍せよ』

 その合図で全てのピンが動きはじめる。しばらくは均整のとれたアーチの陣形であったが、端の方から徐々に乱れはじめる。


『フユクラード軍、どういうことか。陣形を崩すな』

「我々が先行をする。たったいま作戦変更の計画をそちらに送った」

 男が答えると、八本の黒いピンが先行をはじめ綺麗なアーチの形は崩壊する。


『フユクラード軍に告ぐ。作戦に変更はない。陣形を戻せ。繰り返す――』

「今さら止まれるものか」


 乱れた陣形は相対する青いピンを中心へ押し込めるような動きを見せる。

『セイオーム軍は第一部を中心に密集せよ。陣形を立て直す』


 切り替えが思うより早かった。そもそも損害は最小限に抑える必要がある。そういう意味で彼らは軍の意向に忠実と言えた。セイオーム軍はやはり優秀と言えるだろう。


 だからこそフユクラード軍は裏をかく必要があった。同盟とは単純な友情で結ばれたものではない。

 セイオーム軍の行動に対してフユクラード軍は懐疑的であった。


「先陣はフユクラードが務める。私、サカトモ・アズミの嶺玄武ベルティワイザーに続け」

 各機から『了解』という返答がくる。


 青い機体たちをすり抜けて黒の軍隊は水母のほうへ突き進んでいく。

『アズミさま、本当によかったのですか?』


「副長か。こうでもしなければ、次の標的がフユクラードになる可能性がある。それにセイオームがハルキアへ攻めこむ理由……貴公は納得できたか?」


『他国へ侵攻準備をしているということでしたが……』

「だが、実際に軍備を増強して先制攻撃を仕掛けているのはセイオームだ。警戒するなというほうが難しいな」


『証拠を探すために侵攻するということでしたね』

 そのセイオームの動きに各国が理由を問いただしても納得のできる回答は得られていなかった。


 今回の侵攻は各国の制止を振り切って断行したものだ。つまり、政治的な意図が強い。

 その中で同盟として追随したのがフユクラードであった。


『間もなく、ハルキア・カミトの水母くらげへ接近します』

 クラゲの傘が間近に迫る。


「時間差で攻勢をかける。第一部が先行して傘から強制突入を敢行する。第二部は二〇分待機。何も連絡がなければ続けて強制突入をかけるよう。よろしいか副長」


『了解です』

「よろしい。第一部は我に続け。これよりハルキア首都を攻略する」

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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