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004 真実

「なにが危害を加えませんだ!お前の言うことは信用できない!」

俺の家族にこんなことして、よくも言えるもんだな。

「薄々感づきました。記憶が…ないんですね…」

家出少女が悲しそうな顔になって、その美しい目から涙が一筋頬を流れる。

「なんの話だ。」

彼女の言っていることが俺にはまったく理解できない。

「こちらの話です…話をする前に、まず妹さんの怪我を治します。」

家出少女は片手を伸ばし、手のひらから緑色の玉がひとつ現れ、浮かび上がる。そしてその緑色の玉が空を舞い、次に美希の体に飛び込んだ。

「な、何をしたんだ!」

「治癒魔法です、これで彼女は目を覚ますはずです。」

数秒後、美希は目を開けた。

「美希!よかった!」

思わず美希を抱きしめる。

「兄貴?なんであたしに抱き着いてるの?」

まだぼんやりしている様子、事態を理解していないみたいだ。

「ねー、リシア様、なんでこいつを助けるの?敵だよ?」

ずっと疑問を感じているようで、メイドは家出少女に尋ねる。

その声を聞いて、美希は目を見開き、これまでのことを思い出した。

「兄貴!早く逃げて!この二人は危険だ!」

俺の腕から離れた美希は立ち上がり、俺を守るように二人の前に立ちはだかる。

「先ほどはすみませんでした。わたくしの部下が失礼なことを。」

「え?だって半殺ししていいってリシア様が…」

「ルル。」

「うぅぅ。ごめんなさーい…」

展開が読めないのか、美希はどうすればいいのか分からずその場を動かなかった。

「その、とりあえず、話を聞こう。」

このままでは埒が明かないと俺は思い、事態を解決するためにも、その第一歩となるのが話し合うことだ。



大森家。

「ねー、兄貴、なんでこいつらを家に入らせたの。」

「他に場所もないし、それに、入るなって止めても多分強制突破されてしまうからな。」

「それは、そうだけど…」

テーブルを囲う形で俺たち四人は座る。

「話って言っても、何を話すんだ?」

「話の前に、改めて自己紹介をさせていただきます。わたくしはリシア、この子は部下のルルです。わたくしたちは他の世界から来た者で、ある人を探しています。」

「他の世界?」

「じゃあさっきの魔法は?ずっと気になってたんだけど、魔法って本当にあるのか。」

「魔法?兄貴、何の話?」

「ああ、美希はまだ知らなかったか。気絶したお前を彼女が魔法で治してくれたんだよ。」

「そもそもあたしを気絶にしたのはそっちじゃん!」

「まあまあ、怒らないでよ。相手は謝ったし傷も治してくれたし、話だけでも聞いてあげよう。」

「兄貴がそう言うなら…」

美希は渋々俺の考えに賛同してくれた。

俺は再びさっきの質問をした。魔法という非科学的なものは本当に実在するのかと。

「ええ、本当よ。これを見てください。」

リシアは手のひらを俺に見せる。手のひらから数センチ上に、小さな炎が揺らいでいる。

「おおおおお!すげー!」

初めて至近距離で魔法を見た。この喜びを誰かに伝えたくて、俺は美希に話しかける。

「見ろよ美希!これ!魔法だ!本物の魔法だよ!」

「あ、ああ、すごいね、兄貴。」

あれ、なんか反応薄いな。ひょっとして今時の女子高生は魔法に興味ないのか。

「リシアさんだっけ、俺にも出来るのか、それ!」

「今のところは無理かもしれません。」

「そっか、残念。」

「それと、わたくしのことをリシアとお呼びください、我が主。」

「ふんだ!ルルは認めないよ!この眼帯マスク、どう見てもあの方じゃない!」

ぷんぷん怒っているメイドを無視して、俺はさらにリシアに質問する。

「もう一つ気になることがあるんだけど、さっきからずっと言ってた主って、どういうこと?」

「わたくしは確信しています。記憶が失われたけど、あなた様はわたくしがずっと探していた主です。」

リシアの目は真剣そのもの。でも、記憶によれば、俺と彼女は初対面のはず、まさか彼女の言う通り、俺の記憶が欠落でもしたのか。

ないわ、いくらなんでも都合が良すぎる。もしや新手の詐欺か!でも魔法は本物みたいだし、むむむ、悩む!

「ずっと黙って聞いていれば、変なこと言わないでよね!これはあたしの兄貴なの!あんたの主じゃないわ!」

これ?これってもしかして俺のこと?多分聞き間違いだな、美希は俺のことを兄として敬愛している、きっとそうだ。

「いいえ、わたくしの主です。」

「あたしの兄貴!」

「わたくしの主!」

「兄貴!」

「主!」

「あの…二人とも、落ち着いて。」

俺は慌てて二人を宥める。

「し、失礼。取り乱してしまいましたわ。」

「はははは、リシア様おもしろい!」

リシアはえへんと咳払いをする。

「兄貴のバカ…」

「え、なに?」

「なんでもない!」

突然怒り出した美希。

はぁ、なんだよいったい…まあ、いつものことだし、元気そうでなによりだ。

「ルル、集めた情報を主に教えなさい。」

リシアはメイドの少女ルルに命令した。

「さきに言っとくけど、ルルはあんたを認めないからね!でも、リシア様の命令はちゃんと聞く。」

不本意ながらルルは言葉を続ける。

「この世界に着いてから無差別に数百人の精神に侵入したよ、この世界について大体分かったけど、でも重要な情報はなにも掴んでないの。今の段階で知ってるのはこの世界における文化、言葉、国家勢力、どれも上辺だけのこと。例えば、侵入した対象のすべてが、この世界に人間族しかいないと思い込んでるの。」

ルルの言葉とともに、テーブルの上にモニターらしきものが現れている。これも魔法か、ほんとなんでもありだな。

「その精神に侵入するってのも魔法なのか。」

素直に質問する俺、でもこの質問に答えてくれたのはルルじゃなく、リシアだった。

「はい。彼女は夢魔、つまりサキュバスです。人の夢に入り、そして情報を探り入れます。誰もがみな、夢の中では無防備ですから。」

「サキュバスだと!」

俺はその言葉に驚き、大声を上げた。

「主、サキュバスをご存知ですか!まさか記憶が!」

「ああ、知ってるとも!あのエロエロなやつだろ!」

「エ、エロエロ?」

次の瞬間、俺の顔を二つの方からパンチが見舞った。

「誰がエロエロなのよ!」

「このバカ兄貴!」

「うぐおぅぅ…本当のこと…言っただけじゃ…ないか…」

多分文字通りの意味で頭の骨が折れた、粉々に。俺の意識も暗闇に落ちる。

「あれ、俺はいったい…」

気付くと、俺は椅子に座っていて、顔に痛みがまったくない。

「リシア様が治してあげたのよ!眼帯マスク、次はないと思え!ふんだ!」

「ごめん兄貴、ちょっと力入れ過ぎたかも。」

「え、何のこと?」

なんか急に話についていけないけど、なにがあったのか。

「脳にダメージがあったのかもしれないわ、主は一部の記憶を失われたのよ。」

主に記憶を思い出させるどころが、逆に無くさせたとは、なんてことだ。とリシアは心の中で涙を流した。

「で、今はなんの話だ?」

「この世界に人間族しかいないと思っている人が大勢いるという話です、主。」

「だってそれは当たり前だろ、アニメや漫画じゃないんだから。」

「お言葉に出たアニメとマンガはどういうものかは存じませんが、他種族はいる、これは事実です。」

「え?うそ!」

眼帯とマスクをつけているが、俺の右目を見れば、きっと驚きは伝わるはずだ。

「先ほどもルルを紹介して…コホン、ルルのことはさておき、わたくしも実は人間族ではありません。」

じゃあなに?もし正体が男と言うのなら追い払うぞ、まじで。

「わたくしは吸血鬼、ヴァンパイアです。」

一瞬だけリシアの目から赤い光が見えたけど、気のせいだろうか。

「そちらにいる妹さんも。」

美希のこと?え、なに?

「く…」

唇を嚙みしめ、美希はリシアを睨み付ける。

「わたくしの見立てが正しければ、彼女は、人狼族です。」

そんなばかな、ずっと一緒に暮らしてきた妹が、人間じゃない?

俺は信じられず、目で美希に答えを求める。


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