ルームメイトを決めるクジ
俺と藤林の間に、四〇枚程のカードが投影される。
「恨みっこなしのくじ引きだ、当たりを引いた奴の部屋に住まわせてもらうよ。じゃあどうぞ藤林」
クラス中で歓声が上がり、藤林の表情が曇った。
それでも藤林は、
「よ、よーし、見てなさいよっ」
と腕まくりをして、気合たっぷりにカードを選ぶ。
たっぷり一分も悩んで、クラスメイトから『はずれろ』コールを浴びせられながら、藤林はついに意を決した。
「でりゃああああああああ!」
大仰な掛け声と共に、一枚のカードを指先でタッチ、勢い余って映像を腕ごと貫通させると、カードの画像に『おめでとう』と表示される。
「え!? 本当!? やったー♪ やっぱ神様って普段の行いを見てるわね♪」
藤林は上機嫌にちっちゃく飛び跳ねて喜ぶ。
対照的に、クラスの女子と水越先生は肩を落としてうなだれた。
なーんてね、実はこのクジゲームは軍の先輩に教えてもらってダウンロードしたイカサマゲーム。全部当たりで、最初の人が必ず当たりを引くようになっている。
なんて事も知らずに無邪気に笑う藤林を見ると、素直に可愛い子だな、と思えて来る。
皆が席に腰を下ろしてお祭りムードが沈下。
俺はみんなの前から少しはずれて教室の端へ移動しようとする。
「はいでは皆さん。実は皆さんにはもう一人、素敵なお友達を紹介しますね。アメリアさーん、入っていいですよー」
俺を含めて、皆が教室のドアに注視する。
機械的に左右に開いたドアから、ド派手な金髪縦ロールの美少女が、大きくてサファイアのように青い瞳を輝かせながら大きな胸を揺らし、モデル歩きで入室する。
ファッション雑誌でもお目にかかれないような絶世の美少女が皆の前に進み出ると、水越先生の紹介も待たずに腰に手を当てたモデルポーズ、そして右手の人差し指を立てて、
「アッメーリカのニューヨーク州からきマシタ! アメリア・ハワードデース! USAの同盟国でありミリタリーメイル、通称M2の本場Japanでワタシの力を試すためにきマシタデスネ! 皆さん、ここのナンバワンはワタシデスカラ、覚えておくように! アイアム! ナンバッワーーン!」
そのまま『HAHAHA』と高笑うインパクトに、クラス中の女子は呆気に取られて何も言えない様子だ。
うん、俺もちょっと驚いている。ちょとだけな。これも戦場で鍛えられたおかげだな。
「ん? OH♪ AHA~N」
アメリアは俺に気付くと、斜め四五度の眼差しでウィンクしてから跳びかかりそうな勢いで俺に歩み寄って来る。
「YEAR♪ アナタがキリュウアサラ、デスネ? 会いたかったデース♪」
彼女は握手でもするような自然さで俺の首に両腕を回して、豊満な爆乳を俺の胸板に押し当てながらキスをしてきた。
それも唇に、情熱的な甘いキスだった。
「~~~~~~~~っっっっ!??」
あまりに唐突な出来事に俺の脳内がパンク寸前だ。
なにが起こるか解らない戦場でも、これほどの不意打ちは無かった。
敵軍のスナイパー並に予測不能かつ大胆な一撃は俺を撃ち抜き戦闘不能に追い込んだ。
「ななななな何やってんのよあんたわー!」
藤林が席から大股に進み出てアメリアを睨みつける。
「何って親愛のキスですが?」
「どこが親愛よ! いいから離れなさいよね!」
俺はアメリアよりも頭一つ分大きいので、アメリアは背伸びをしたまま、俺の首に体重を預けるようにしたまま挑発的な声で藤林と対峙する。
「ン~ン、アサラはいやがっていまセ~ン。ハンパガールは黙っているデース」
「半端? あたしのどこか半端だって言うのよ!」
アメリアの視線が落ちて、
「アナタのバスト、大きめだけど巨乳と言うほどのサイズもないデス。巨乳好きにも普乳好きにも需要のない中途半端おっぱい、略してハンパイデスネ♪」
「アメリカ基準で言われたく」
「NON! ワタシは日本人の平均バストサイズを調べた上で言っているのデスヨ」
「Dカップのどこが――」
藤林の視線が俺に向けられる。
アメリアが俺にキスしてから赤みが差していた藤林の顔は、首筋と耳まで赤くなって、肩を震わせながら頭上に蒸気を上げた。
「今のは忘れてぇええええええええええええ!」
窓からベランダに、そしてそのままアイ キャン フライ とばかりに跳んだ。藤林の全身が淡い光に包まれて機械の翼を生やすと、そのままどこかに飛んで行ってしまった。
「藤林さーん、軍事甲冑の私的使用は禁止ですよー」
水越先生の言葉が空しく虚空にかき消える。
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