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一次予選に続き二次予選突破

『学園トーナメント、二次予選第三試合! 勝者は一年二組藤林叶恵さんです!』

「よし、朝更―、勝ったわよー」

「おう、よく頑張ったな」


 セコンド席の俺に手を振ってくれる叶恵に、俺も手を振り返す。


 叶恵は続く二次予選も難なく突破。


 さすがに最初の試合を見て学習したか、今度の相手はいきなり突撃してくる事はなかったものの、しばらく相手の攻撃を回避し続け、イラついた相手が大きく踏み込んだと同時に相対突きで倒した。


 アメリアを倒した必殺剣は、学園トーナメントでも有効なようだ。


 おそらく、この学園で相対突きに対応できるのは去年の優勝者であり、現学園最強であろう生徒会長、小野寺心美だけだろう。


 それでなければ、叶恵に一切近づかず、射撃だけで戦わねばならない。


「さて、と」


 人々の歓声を受けながら退場する叶恵を迎えようと、俺は選手入場口へと足を向けた。


   ◆


 大会一日目、一次予選と二次予選を終えたその日の夜。女子寮の自室で俺と叶恵が作戦の確認をしているとチャイムが鳴った。


 こんな時間に一体だれだろうと、俺が部屋のドアを開けると、


「チャッホー朝更君。可愛い心美お姉ちゃんが来てあげたよ♪」


 幼馴染の小野寺心美が、能天気な声で両手を上げていた。


「おう心美か」

「生徒会長!」


 部屋の方で叶恵が素っ頓狂な声を上げた。


「お邪魔するよ」


 言いながら心美は靴を脱いで勝手に上がって来る。


「どうしたんだよ心美」

「いやぁ、可愛い弟と後輩の頑張りを褒めてあげようと思って」

「そうか、ありがとうな心美」


 俺が頭をなでてあげると、心美は腰に手を当て平らな胸を張った。


「ふふ、それほどでもあるさ」

「会長……それじゃ逆じゃ……」


 叶恵が、かなり渋い顔で心美をジト目で見た。


「細かい事を気にしていたら大きくなれないよ叶恵ちゃん」

「あんたにだけは言われたくないわっ!」


 叶恵の女性的なふくらみが揺れた。


「おいおい一応心美は生徒会長なんだから」

「おっと、って、朝更だってタメ口じゃない!」

「え? この体格差で敬語は無理だろ、幼稚園の時から小さくてタメ口だったし」

「ボクはいつもお姉ちゃんって呼んでもいいって言っているのに」


 心美が溜息をついて、叶恵が渋面を作る。


「まぁいいや、それより朝更君。戦場では随分頑張っていたみたいだね、それにせっかくリハビリという名の長期休暇を返上して我が学園のコーチまで、ご褒美に昔のように裸エプロンでおやつを作ってあげようじゃないか」

「裸エプロン!?」


 叶恵の顔が、首から耳まで一気に上気しながら真っ赤に染まった。


「ねつ造だからな」

「もしくは昔のように下着姿で添い寝とか」

「下着姿で添い寝!?」


 叶恵の顔から湯気が出て、両手を頬に当てて震える。


「ねつ造だからな」

「でなければ昔のように一緒にお風呂に入って背中を流してあげよう」

「なな、何言ってるんですかもお! そんなウソに騙されませんよ!」

「いや、俺中一まで心美と風呂一緒だった」

「変態撲滅!」


 叶恵の右ハイキック。俺はすばやく腰を落として、右ハイキックは頭上を通り過ぎた。


 俺の目の前には白と水色のストライプパンツが広がっていた。


「はうっ!」


 叶恵が慌てて部屋着のスカートを押さえた。今叶恵は半袖のシャツにミニスカートという動きやすい格好で、動きやすい格好だけに下着のシークレット性が低かった。


「なんだよ急に」

「急にじゃないわよ! ちゅちゅ、ちゅー」

「チュー? キスか?」

「叶恵ちゃん朝更君とキスしたいの?」


 叶恵が柳眉を逆立てる。


「バカ! 中学生よ! 中学生になってそんな」


 俺は無機質な顔で一言。


「おい叶恵、言っておくけど、この心美の中学時代だぞ」


 俺が指差した心美を見て、叶恵は頭を悩ませる。

 俺よりも頭一つ分以上小さく、胸は絶壁で、お尻は小ぶりで可愛らしく、イベント会場で風船をもらえそうなクオリティだ。

 叶恵は頭を抱えて首を回して体をゆすりながら唸りに唸ってしまう。


「そうだ朝更、ボクがこのぷにぷにの太ももで膝枕してあげるから代わりに腕枕をしてくれないかい? 昔のように」


 叶恵の体がぴくっと反応した。


「おおいいぞ、お前ほんと昔から腕枕好きだな」


 叶恵が顔を上げる。


「じゃあ朝更君、さっそく」

「駄目ぇっ!」


 叶恵がアメフトタックルで俺に飛びしがみついてきた。


「朝更が生徒会長に腕枕なんて駄目よ!」


 叶恵がぎゅっと腕に力を入れるものだから、叶恵の恵まれた胸の感触がきもちいい。潰れた胸が弾力で戻ろうとして、俺のお腹をぐいぐい押しこんで来る。


「なんだ叶恵ちゃん。君は朝更君と付き合っていたのかい? なら邪魔しちゃってごめんよ」

「ぬあっ! 別にあたし達は」


 チラッと俺を見上げてから、


「付き合ってなんて」

「じゃあ君に口を出す権利は無いんじゃないかい? 朝更がいつどこでどの女の子とキスをしようとお風呂に入ろうと寝ようと子作りをしようと勝手じゃないか」

「こづっ!?」


 俺にしがみついたまま、叶恵は何かを考えているご様子。


 叶恵の顔の赤みが増して、汗をかいて、次に口をわなわなさせて、最後に目をぐるぐる回し始めた。


「あっ、朝更のえっちぃっ!」


 叶恵の昇龍拳が発動。

 俺がアゴを引いてかわすと、ブレーキを失った叶恵の体は天井めがけて上昇。

 真下から叶恵のおっぱいが迫ってきて、俺の顔をはさみこんだ。


「むぐぐ」

「ひゃんっ!」

「わお♪」


 心美が口を手で覆う。

叶恵はすぐさま自分の胸を抱き隠すと飛び下がり、俺に背を向けた。


「と、とにかくよ!」


 肩越しに俺らを見ながら、叶恵は真っ赤にして叫ぶ。


「今、朝更はあたしのコーチなんだから、その間はあたしのコーチングに集中する事! 恋愛禁止条例執行中なの! コーチを引き受けた以上はやる事はやってもらうわよ! その……お礼はちゃんとあげる……から……」


 なんだか最後は随分恥ずかしそうだった。あー、多分最初に俺にパンツ見られた事思い出しているんだろうなぁ。


「お礼ってなんだい?」

「まだ解らない。けど叶恵をレッドフォレスト杯に連れてったらなんかもらうよ」


 心美の瞳がキラリンと光る。


「貞操?」

「かいちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 叶恵がヤカンのように熱そうな顔で怒鳴ると、心美は楽しそうに笑いながら走り去って行った。


 本当に、あいつは何がしたかったんだろう。


「凄い汗だぞ、先に風呂入ってこいよ」

「はぁ はぁ う、うん、そうするわ」

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