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月面闘争後編

「男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄男漢雄‼‼」


 五時間後。


 殿を全滅させ、逃げる敵本隊の追撃に成功した朝更は、整備場でコーヒーを片手に愛機をみつめた。


 空気を読んで、オオクニヌシはいつもの軽口を叩かず黙っている。


「朝更君には、いつもながら頭が下がるわねぇ」


 オオクニヌシの修理をしてくれる女性、エンジニアの松本が額の汗を拭いながら開けた装甲を閉じた。


「甲冑の扱い方が凄く丁寧。全力全開なのに乱暴じゃない、強引で無茶苦茶なんじゃなくて、あくまで機体の全性能を引きだし切った使い方だよ。だからあんな高速機動でも機体が全然痛まない。他の人があんな動きをしようとしたらフレームが歪むか人工筋肉のマッスルパッケージが千切れてもおかしくないのに……どうしたの?」


 朝更は悲壮感で満たされた目と冷たい唇で呟く。


「食堂の晩飯、一日一〇食限定のウニ丼。田所と大田原のやつ当たってたんですよ……なのに食堂行ったら、ウに丼残ってるんですよ」


 朝更の目に、うっすらと涙が浮かんだ。


「食えよ……あんなに楽しみにしてたじゃないか……なのに、なんで喰わないんだよ!」


 朝更のカップからコーヒーが溢れた。


「朝更君……」


「今日の戦闘は日本の勝利、敵損害は約八〇〇〇、こっちは約一一三七……勝利ですよ、大勝利ですよ……でもその一一三七人のうちの三六人は……俺の仲間でした……なんででしょうね、みんなを守りたくて戦ってるのに……」


 朝更の目から涙が零れた。


「戦えば戦う程失ってばかりです……」



 松本は顔を伏せて一言。


「ごめんなさい……あたし朝更君より一〇個も年上なのに、何も言ってあげられないや。どんなに頑張っても、あたしらに出来るのは甲冑を完璧な状態で兵士に渡すとこまで。自分が整備した甲冑が戻ってこないとすっごく悲しいんだけど、でもどうしたらいいかわからないの……仕方ないからって自分に言い聞かせるしかないんだ……」


「…………」


「ねぇ、朝更君……この戦争は、いつまで続くの?」

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