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無理むりムリ

「さっすが最強の少年兵、期待してるわよ♪」

「任せとけって、それでクラス代表戦はいつだ?」

「四日後よ」

「無理」

「なんでぇええええええええ!?」


 ズガガーン と音がしそうな顔で、藤林は涙目になって拳を振り上げる。


「男子三日会わざればかつもくして見よって言うじゃない!」

「お前女子だろ……まぁ致死率三割で生き残っても『殺せ!』しか言えなくなる特訓で良ければ三日で東京最強になれるけど」

「どんな洗脳よ! 辞書で『人権』を調べなさい!」

「訓練内容としては七二時間、一秒の休みも無く俺と殺し合うという豪華仕様に」

「おどれは閻魔大王かゴルァ!?」

「ちょっ、おま、怖いからその目やめて」


 藤林は、両目をメラメラと燃やしながら俺を威嚇する。

 戦場では多くの猛者と戦ったが、こいつもなかなかの殺気だ。


「ハッ!? ごご、ごめんなさい、今のは違うのあの、機嫌悪くしないでね」


 途端におたおたしながら取りつくろう姿を見て、戦場には無い癒しを感じてしまう。

 本当にさっきから笑ったり泣いたり慌てたり忙しい奴だ。


「まぁいい、それより一回試合だな、お前のセンス見ないことには作戦も立てらないや」

「そ、そうよ、その通りよ、さ、学校に行きましょ!」


 話題を逸らそうとするみたいにして、藤林は必死に喋った。


「そ、そうだ、コーチしてくれるんだから、何かお礼しないと」

「ヴぇっ!?」


 俺の脳裏に、程良く大きくも引きしまったヒップと、ピンク色のショーツが克明に鮮明に生々しく鮮烈に細胞繊維レベルで再生された。


「あれ? 顔が赤いけどどうかしたの?」

「いやいやいや、えっとほら、別にお礼なんていいよ」

「そういう訳にはいかないわよ。確かにおない年だけど、あんた程の大人物の時間を拘束するんだから。でも私、お金はちょっと、できれば他の形で」

「だからいいんだよ!」


 俺は凄く強い声で言ったので、藤林が小首を傾げる。


「何よムキになって。あんた何か変よ?」


 背伸びをして俺の瞳を覗きこんで来た。

 藤林の大きな瞳に、俺の目が映った。

 藤林の香りが俺の鼻腔を刺激して、たまらなくなって、俺の口が緩む。


「さっき、お前が土下座した時」

「した時?」

「スカートがめくれて……ピンク色の」


 察したのか、藤林は今更お尻を押さえて、頬がほんのり赤くなる。

 俺は視線を逸らした。


「ごめん」

「いやぁあああああ!」


 顔を真っ赤にして、拳をめちゃくちゃにふりまわしてくる藤林。

 俺はその全てをかわし、さばき、難なくさける。


「おいちょっと落ち着けって、だからごめんて言って」

「わふ」


 なにを思ったのか、俺の隣でしっぽを振っていた柴犬のエイドリアーンが藤林に跳びかかる。


「きゃっ」


 小さな悲鳴をあげて、藤林は尻もちを打つ。


「いったー、ててて」


 俺の目が限界まで見開かれて血走った。


「どうしたの桐生? …………!?」


 藤林視線を落として気付く。

 藤林の引きしまったお腹の上で寝転がり甘えるエイドリアーン。まくれ上がったスカート。M字に開かれた足。

 藤林は耳まで赤くして、口を金魚のようにぱくぱくさせながら、


「あ あ あ」


 と、声を上げながら瞳を震わせている。頭からは蒸気が上がってヤカンのようだ。

 スカートを直そうにも、めくれあがったスカートはエイドリアーンの体の下だ。

 バックに続いて、ショーツのフロント部分を目にしてしまった俺は、頬を引きつらせて硬直。

 ようやく絞り出した言葉は、


「じゃ、じゃあこれでチャラに」

「それはイヤァアアアアアアアアアアアアアン!」

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