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彼女の私服が可愛い

「お前まだ着替えていなかったのか?」


 次の日の日曜日。

 俺は脱衣所で、黒いチノパンと青いシャツに着替える。でも部屋に戻ると叶恵はまだパジャマだった。

 髪のセットは終わっているようだが、何故かまだ私服には着替えない。


「朝更は先に校門の前で待っててよ、あたし、後で行くから」

「へ? 一緒に街行くのになんで待ち合わせするんだよ?」


 叶恵はちょっと語気を強める。


「別にいいでしょ、こういうのは男子が先に待ってて、女の子は後から行くって決まってるのっ。ほら、さっさと行った行った」

「解ったよ」


 俺が玄関へ向かうと、


「腰のハンドガンは置いていってね」

「いや、警察と軍人はハンドガン装備が基本だろ」

「そんな物騒なの持っていたらムード出無いじゃない!」

「どういうムードが?」


 なんとなしに聞いた俺に、叶恵はまたも言葉を濁し、うつむく。


「それはさ……ほら、その……うぅ」

「解ったよ、とにかく置いていけばいいんだろ?」


 まだ見えない場所に隠しているしな。

 俺は腰のハンドガンを部屋に置くと、玄関から外に出た。


   ◆


「お待たせ朝更」


 国防学園付属専門高校の校門前で待つこと三〇分。


 待ち人、登場に俺は振り返って、息を吞んだ。


 叶恵は純白のワンピース姿だった。


 なんていうかもう、その姿が卑怯なくらい似合っている。


 短めのスカートから伸びる脚線美はどこまでも続き、白いミュールのおかげで可愛らしい足の指までスラリと通っている。


 東京とはいえまだ四月。なのに叶恵は露出の覆い半袖で、でも手首につけたハンドウォーマーがチャームポイントとなり可愛らしさを主張する。


 おまけに、胸元が少し開いていて、ごく一部ではあるものの健康的な鎖骨と一緒に胸の谷間が常に見えている。


 可愛らしさとセクシーさを両立させた私服姿に、俺は前の作戦で死ななくて良かった、と心の底から思う。


 俺をリハビリ生活に追い込んだあの戦いでもしもしあれがああだったら、あれがあと少しズレていたら俺はいなかった、と色々考えてしまう。


「あ、あのさ、朝更……」


 叶恵が期待を込めた眼差しで、だけど躊躇いがちに口を動かす。


「どう、かな? 似合ってる?」

「正常な男子なら一〇人中一〇人が振り返って五人がナンパするな」


 叶恵が嬉しそうに赤面する。


「も、もおやだ朝更ってば!」


 彼女の鋭い平手打ちを、俺は身を逸らす事でかわした。


  

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