不定・定型詩:静寂《しじま》の詩
一緒に投稿した「散文:静寂の歌」を七五調に直したものです。
通常、定型詩を書く場合は、初めから定型詩として書くのですが、たまに、散文で書いたものを、遊びのつもりで直してみることもあります。
もちろん、散文を直したものですので、行数までは合わせられません。そこで、「不定・定型詩」としてみました。
読み取れる内容は、ほぼ同じで、心象詩となっていますが、印象は少し違うかもしれません。
消えてしまった街の灯に 輝きを増す空の星
午前三時のこの世界
飽くことのなき営みや いのちでさえも
無に近く なるひと時の訪れる
貨物電車や遮断機も 久しく鳴らず
パトカーの 追尾を逃げる二輪車の 排気音さえ遠ざかり
停止を叫ぶ拡声器 誘われ犬の遠吠えも
別の世界に流れ去り
すべてが夜の闇の中 消えて静かになりにける
このひと時は知らしめる
いのちの業の喧噪は 永遠にあらずと知らしめる
静寂の統べるこの時の 世界が、実は本質と
沈黙のうち物語る
暗闇に立ち、東天を
望めば、月は海を越え、いま、天空へ上りゆく
静寂の中に生み落とす
瞬く星の瞬きの 静かに灯る明滅は
いつか、あざなう縄のごと 力となりて流れだし
その気は宙に渦を巻く
見えぬ力の上昇と 下降が生まれ、地に届く
その一瞬に、穏やかに 我を貫き
我が耳に 聴こえぬ歌の聴こえだす
ひとり、いのちの営みの あらぬ静寂を我想う
ひとり、いのちの醜さと 美しさとを我想う
振り子のように揺れ動く こころを、風の吹き抜けて
その一瞬の静けさの 中に、音なき音を聴く
星の瞬く、幽かなる 光は音と聴こえくる
もはや、静寂は溢れだし 星の間にまを流れれば
割れては出会い、また、別れ
あざなうままに、静けさは 星のいのちを紡ぎだし
いつか、音なき韻律を 刻んで、夜を満たしゆく
静寂の刻む韻律に
捨てる数多の感情の 遠き調を纏わせば
歌わぬ歌に乗せられて やがて、空へと舞い上がり
そのひと時を揺蕩える 我はひとつの星となる
静寂の星は、我となる