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第4話 おぉ[きし]よ しんでしまうとは なさけない

 さて階段も登り切り、始めに目に入ったのはいかにもボス部屋前とも感じ取れるおおきな扉だった。

 用意されていたかの如く、丁度一人が入れるような隙間があったため中を覗いてみる。

広さは一階の大広間よりは狭いが、高さは先ほどより少しだけ高い構造だ。…そして部屋の中央には5Mはある、皮鎧を纏い巨剣を担いだ獣人(コボルト)


 一階の獣人と比べずとも分かる威厳が漂い、現在ここに幹部がいなかったら間違いなくこの城の主はコイツであることだろう。


 「それが今では中ボス扱いか。せっかくだし、さっき取ったスキルを試してみようか。…”分析(アナライズ)”、動作開始(ムーヴスタート)。」


 お、ちゃんと敵のステータス出てきた。どれどれ…?



 *ヴァイオレンス・コボルト・ジェネラル Lv50

 推定HP―???


 STR:A―???


 MND:E―???


 VIT:B―???


 SPD:D―???


 DEX:E―???

 

 ※推奨、最低Lv35以上かつ4人以上のレイドパーティ。


 

 ……あれ~?おかしいぞ~?

 もうこの際ステータス表記がオンラインゲームみたいな英語だっていうのはどうでもいいんだ。

 

 明らかに無理だろコイツは?!!

 雑魚のレベル(俺も含む)の二倍以上の差だぞ!挑むにしたって、俺のレベルは最低レベルより10も下だし、さらに言うとこっちは味方のいないソロ(ぼっち)なんだぞ!


 ギブギブギブこんなん無理だって勝つ負けるじゃなくて挑んだら死ぬってワンパンだってそもそもダメージ与える武器じゃないにしたって効くかすら分かんねえし効いたとしても途方もない時間かかるのは目に見えてるし攻撃しようにもあの巨体じゃ膝までしか攻撃届かないし何かもう絶対無理だ本能がもう諦めてるだって足動かないもん逃げることすらもうできないって状況なら…


 「僕は死ぬしかないじゃない!!」


 瞬間、僕の身体はパァーンという音と共に跡形もなく潰れてしまった。

 多分、ボスが何か大きな物体を投げつけたのが、僕に直撃したのだろう。

 扉の隙間にいた僕を正確に潰すとなると、当たったのはボスが持っていた巨剣だろう。


 …だがもうそんなことはどうでもいいことだ。

 僕はまた死んでしまったのだから。

 肉体はミンチにされ、今自分がどうなっているのかなど認識できない。

 あぁ、ただ…せめて…あの駄女神(ゴミクズ)を一回殴っときたかったなぁ……。



――――――――――


 「…まだ数時間しか経ってないんだけどな。」


 戻ってきてしまった。死後の世界(この場所)に。

 肉体は…ここではちゃんと元に戻るんだね。まだ使ったことも無いからよくは分かってないけど、魔力も一応は扱えるみたいだ。

 そして、ちゃんと女神は出迎えはしてくれたようだ。嬉しいね、笑顔がこぼれるよ。


 『おかえり~早かったねぇ~。』


 「えぇ、レベルも、経験も、武具も、アイテムも。何もかもが足りませんでしたね。”属性付与(エンチャント)”、”自身の右腕(ライトアーム)”」

 

 『いやいや、城前に転送したのはいいけど、まさかいきなりこっちを見つけるとは思わなくてさ~。』


 「あそこで幹部も雑魚くらい見逃してくれるかと思いきや、そうもいかなかったのも辛かったですね。”火炎(フレア)”、”追加付与(ツイン)”」


 『でも大丈夫だよ!あの世界なら、寿命が残ってる限りは何回でも生き返れるんだ!』


 「そうなんですね。死んだら終わりではなく、やり直し可能なんてゲームみたいですね。ステータスとかありましたし、本当にゲームの中に入ったみたいだ。”電撃(サンダー)”、”追加付与(ツイン)”」


 『昨今の転生者はやっぱりこういうのが好きだからねぇ。やっぱりファンタジーを自分で体験するってのが一番人気があるね。……ところでさ。』


 「なんでしょうか?”旋風(エアロ)”」


 『その、さっきから右腕を強化しまくってるけど、なんでかなぁって…。

 あ、向こうで使えなかった分の魔法の練習かい?な~んて、あは、ははは…。』


 「もう一度現世に戻る前に、どれくらいまでなら魔法が出来るか試したかったですし。”詠唱終了(セットアップ)

 それに分かっているんでしょう?フフフ。」


 『はは、は…』


 

 「……テメェもいっぺん〇ねやこのゴミクズがぁぁぁ!!!!」

 『ゲッッホォォァァァァ!!!!!』



 安心しろよ。せめてもの温情として、顔を殴るのだけは勘弁してやった。

 その分、ボディを全力で殴らせてもらったがな。その地面に這いつくばるので今回は許してやるよ。

 オラ、いつまで寝てやがる。とっとと起きて元の世界に戻しやがれ。


 『はぁはぁ…本当に死ぬかと思った。

 下腹部の金的より上を狙ってる時点でマジに殺しに来てた。

 やばいチ〇〇ン使えなくなったかも。』


 神なのについてんのか。てゆうか男だったのかお前。

 ミスったな、顔殴っとけば良かった。

 よし、やり直しだ、もっかい殴らせろ。


 『やめてくれ!僕の綺麗な顔に痣が付いたらしばらく外に出られなくなるじゃないか!君だってこんな女性と同じくらい可愛い容姿を殴って、良心が痛まないのかい?このサイコパスめ!』


 「自分の事を間接的にも殺しに来るような奴に、好意なんてあるわけないだろ!

 例え見た目が良かろうが、恨み憎しみしか湧かねぇんだよ普通は!」


 サイコパスにサイコパス言われたか無いわ。

 もうどうでもいいからさっさと元の場所に戻してくれよ。


 『しょうがないなぁ。まぁこれ以上続けて、また死に目に会うようなことしたくないし。さっさと返しますか。』


 女神?男神?もうどっちで表したらいいか分からなくなったが、渋々と帰還準備を始めた。

 …ただ何か最後に仕掛けそうって魂胆(こんたん)がみえる表情がよみとれてしまったので、最後に釘を刺しておく。


 『(僕を殺しかけたせめてものお礼さ。またちょっと手を加えさせてもらうよ)』


 「……もし次に変なことしたら、二度と子孫を残せないようにしてあげますよ。」


 最後に、殴る直前に見せたのと同じ笑顔を見せて転送される。

 言葉の後に神の顔が青ざめたのを見て、実行は免れなくなってしまったが。

・分析<アナライズ>

 敵のステータスを覗き見る魔法。

 発動条件として相手がこちらに気付いていないか、術者に情報開示を承認した場合のみ使用可能。

 相手と実力差が離れていると、覗ける情報に制限がある。

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