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第2話 まともなのは僕だけか!?

 「はぁ〜…。」


 深くため息を吐きつつ、俺は喫茶店で紅茶を啜りながら経緯を振り替えっている。

 変なアクシデントが起こったせいで冒険者登録が無駄に長くなった。

 そもそもなんだよ[暗黒騎士]って。あれか?「最後のファンタジー」って言っときながら15以上も作品出してるあれなのか?

 初っ端からダークサイド満開のジョブなのホントやだ。だってヒーローサイドに殺されるじゃん、多分。


 なんか1人でわけわかんない事ばっか考えてたら虚しくなってきた。[暗黒騎士(よくわからない)]職に関しては、使えるスキルなどが[魔法剣士(マジックナイト)]と変わらなかったため、名目上は[魔法剣士]で登録されている。


 「おーい!ロキー!」


 頭を悩ませているとそう懐かしくもない大声が聞こえた。

 …ってなんだあの血まみれの人間は。まだこの世界で話したことあるのは2人しかいないはずだが。

モンスターの知り合いなんていないぞ。いてほしくもないぞ。


「すごい血まみれじゃないかアイン。異世界に来てまだ数時間なのに、もう外で戦ってきたのかい?」


 異世界転生してすぐに戦闘を行うバーサーカーなんて正直知り合いとしてすらお断りしたいが、無下にするわけにもいかないので仕方なく応対する。


 臭ッ?!何と戦ってきやがったコイツ!?オイバカ寄るな!対面に座るんじゃねぇ!獣臭いんだよお前!


「そっちは冒険者登録終わったのか?職は何だった?転生者だから強力な職だったりしたのか?

 俺は[勇者]かな〜やっぱ。

 自分ではそう思わなかったけど[勇者]になれるって言われた。

 適正検査のときも総合S評価で気づいたら美人の受付嬢さんに質問責めにあったんだ。

 俺前世はオタクだったんだぜ。勇者になれるとまでは思ってなかったわw

 ちなみにヒロインは○スナ似を希望。」


 知らねぇよ、聞いてもいねぇよ。イキリト構文みたいな事延々と口走ってんじゃねぇよ。

 そも悪臭放つ人間が彼女とかおこがましいわ。謝れ、全国の淑女の皆様に今すぐ土下座して謝れ。


 後半以降ずっと自分語りしてくるが俺は強烈な臭いにばかり気を取られて意識が飛びそうになった。

 なんとか意識を手放さないようにして最初に言っていた質問を答えようとしたらアインの背後に水バケツを抱えた女性がいたので俺は持っていた紅茶を体の横にずらした。

 

 バシャァ!と勢いよく水がかかり、2人とも頭から水浸しになる。冷水が全身を覆い、アインはくしゃみをしているがコイツはどうでもいい。

 良かった、何とか紅茶は守ることができた。


「さっきからその匂いが不快なのよね。最近の冒険者はマナーも知らないの?それとも営業妨害のつもりかしら?

 どれにしても他の客の迷惑だから今すぐ退店して(消えて)もらいたいんだけど。」


 さぁ、早速異世界の洗礼を受ける時が来たようだ。前世の日本じゃ店員から水をぶっかけられるなんてまず無いだろう。

 しかしSNSも無ければ法律も曖昧な異世界じゃ勝手が違う。

 てか血の気の多そうな奴がゴロゴロいるんだからこれくらい気が強くなくちゃ食われるんだろうな。

 

 「え、あ、その、すみませんでしたぁぁ!」


 鬼の形相で責め立てる女性店員にアインは驚き、少しキョドった後に一目散に逃げ出した。

 いや勇者ザッコ。最っ高にダサいものが見れたわ。

 前世でもあんな怖いオーラ放てる奴そうそういないし、耐性無きゃチビるわあれは。だけどこの店員、()()()()()()()()()()()()()()

 そんなことはさておき、アイツよりも俺のティータイムの方が重要だ。店員さん?シュガースティック一本いただけます?


 「…さも気にせず紅茶飲める度胸は凄いんだけど、さっきのアンタのツレ追わなくていいの?」


 「いえ別に。残念なことに僕の知り合いではありますがそれ以上ではありませんので追う義理もありません。寧ろ異臭で気を失いかけていたので助かったところです。」


 別に当の本人は何処かへ走り去ってしまったので、ここでボロクソに言ってしまっても構わないだろう。

 追ってもまた面倒くさいだろうからほっとこう。どうせまた外で戦いでもすれば会うことになるだろうし。


 しかし俺にはほとんど非が無いと言いたいところだが、認めたくないとはいえ知り合いが起こした不祥事にそのまま知らんぷりして居座り続けるほど恥知らずじゃない。

 

 「まぁ流石にずっと入り浸るというのも忍びありませんので、そろそろ失礼致します。」


 せっかくいい店見つけたと思ったんだけどなぁ。仕方ないか…。はぁ、マジで俺の休息返してくんないかね。

 代金より少し多めに入れた小袋を差し出し、店を後にする。


「ちょっと、明らかに金額が多いんだけど。」


「いえ、それで構いませんよ。多めの分は迷惑料としてお納め下さい。それでは。」


ーーーーー

 さて、水浸しになった服も移動している間になんとか乾いてきた。…異世界にきたとはいえ何をすればいいんだマジで。

 普通なら「魔王討伐の旅にでるのじゃ~」なんて言われるんだろうけど、それは断固として拒否する。痛いの嫌だし、2回も死にたくない。

 つーか、そのあたりの説明は転生前や転生直後にするもんだろう。具体的なことなんて何も聞かされてねえんだぞコッチは。


 『だってそういう[命令(おねがい)]を聞くのが嫌だから君のチートは強制力がないものにしたんじゃないか。』


 (うわびっくりした。急に話しかけてこないでもらえますかね女神様。

 確かにそういった面倒ごとを引き受けたくないからクソザコチート選んだわけですけど、そのわりには貴方が監視みたいなことしてくるものなので気になったんですよ。

 何にも無いんなら[暗黒騎士(ダークスレイヤー)]なんて正体不明な職業を強制してくる理由が分かりません。…いったい僕に何を望んでいるのですか?)


 転生直前に「こちらを見ている」などと言われたがこうも早く直接関与してこられると目的を疑ってしまうのは当たり前だろう。

 レア職の[魔法剣士(マジックナイト)]と登録上はなっているが、実際は誰も確認したことのない[暗黒騎士(いみふめい)]。納得のいく説明が欲しいところだ。


 『大丈夫![暗黒騎士]は[魔法剣士]の隠された上位職ってやつだから!目的なんて異世界人にも転位者にも今まで適正持ってた人いなかったから、このまま腐らせるのも勿体ないから選んじゃいました!』


 「選んじゃいました!」で済ませる問題じゃないと思うんだけどな~俺は。

 え何?珍しかったからってそれだけ?何かしろとかそんなんじゃなくて単に面白そうだったから選んだと。…ギリシャとか北欧神話でまぁまぁ見るけど、本当に神ってマトモなのいないんだな。


 (女神様、ちょっと現世に来れますか?今ならゲンコツ一回で許してあげますよ?)


 殴っていいよな?一発くらいならコイツの頭を殴ってもいいと思うんだ。

 よかったな~女神サマは顔が整ってて。これで男神だったり人の顔してなかったり(ブサイクだったり)したら顔面を殴ってるぞもう。


 『神様の扱いが酷いッ!?しかも思念してないだけで割と黒い事考えてるよこの暗黒騎士!ブサイクに温情は無いのかい!?』


 (中身がブスで、外側もブスならば情を掛ける価値も無いと思ってます。僕、下品な方は嫌いですので。)


 取り繕っているのも馬鹿らしくなってきた。俺自身は顔も性格もお世辞でさえ綺麗と呼べるものではないと自負しているが、人様に必要以上に迷惑かけたり、周りの事を考えない奴は嫌いだ。それを何回も繰り返す奴は一回でいいから氏んでくれとマジで思う。

 そういった奴が起こした面倒ごとって、何故か知らないがたまたま居合わせる俺がフォローしたり誤解を解いたりしなきゃならなかったんだよ…。

 そんなの無視してもいいんだが俺の平和主義のモットーが許してくれない。

 前世でもお人よしだの、時に偽善者だのいわれることもあるが、何も計算してやってるんじゃなくて口と体が勝手に動くんだよ。自分でも嫌気がさすけど他人に[良い顔]するのは一種の本能なんだよチクショウ…。


 『うわ、なんか思い出して勝手に顔が疲れてる。いやほんとにゴメンふざけすぎた。[暗黒騎士]にしたのにはちゃんと理由があるんだ。』


 それを早くいってくれ。ここまで考えてしまったらバレただろうけど俺は〔()()()()()人のことそんなに好きじゃない〕んだ。


 『詳しくは聞きたくはないけど相当闇が深いなぁこの子…。でも結構な無茶ぶりしてるんだけどね。

 簡単に言えば君が最初に考えていたようにダークサイド…つまりは[魔王軍]側についてほしいんだよね。』


 いきなり魔王軍につけ、つまりは人間を裏切れと言われ、呆気にとられてしまった。

 …は?マジで言ってますかこの女神は。確かに他人の事好きじゃないとは言ったけど、何の理由もなく闇落ちしろってのは無理がある。

 そうゆうのって普通は他人に強い憎しみもってる奴とかの役割だ。俺は別に人類全員が嫌いってわけではないんだし、人の事を転生させるくらいなら適材適所くらいは考えてくれませんかねバカ人事女神(じんじめがみ)


 『言葉を思念されてないのに感じるこの嫌悪感ッ…。何も魔王軍に忠誠を誓えって訳じゃないんだ。

 場合によっては君が魔王を倒す立ち位置になっても構わないよ。』


 (何ですかそれ?魔王軍につけという割には随分と自由な立ち位置ですね。場合によっては…ということはスパイをしろというわけでも無いのでしょう?)


 明らかに矛盾している。本当にこの女神が意図していることが分からない。

 やる気があるかは別とするがこれならばいっそ「人類の敵になれ」と言われたほうがまだ納得できる。


 『理由は…そうだね。君は人間界の奴隷にどんな種族が使われているか知ってるかい?』


 (…チュートリアルには[亜人]または[魔族]といった会話可能なまでの知性をもった()()と書いてましたね。)


 『正解。むしろ人間は強者の立ち位置だからね。倒して経験値にするもよし、捕らえてこき使うもよし。悲鳴を上げても、命乞いしても人間にはお構いなし。

 人間からしたらこの世界のモンスターは人型の家畜同等の感覚でしかないからね。』


 家畜同等の扱いを聞き、俺はこの世界の異常さに少しの恐怖と疑問を覚えた。

いくらモンスターとはいえ人型で会話も出来るんだったら普通は多少の情が移るはずだ。


 前世でも会話不可能な食用の家畜さえ、情が移って殺しずらいから名前を付けてはいけないなんて言われるくらいなのに、そこまで自分たちと似た姿をしているのに悲鳴も命乞いもお構いなしなんて。

 そんなの、まるで…


 『化物(モンスター)みたい。かな?』


 思念していない心の先まで読まれてゾッとした。まさに俺が考えようとした答えと同じだったので、俺はただ黙ってうなずいた。


 『そうだね、君の前の世界を知っている僕でも分かるよ。この世界の人間はとてつもなく無情だ。

 そんな人間達に対して弱者なりに必死に抵抗しているのが[魔王軍]なんだ。君に魔王側につけって言う理由は簡単さ。

 君に、この異世界(レティナ)に住まう種族に、ささやかな[希望]を持たせてほしい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 無論、引き受けたからと言ってどうこうしろと言わないけど、これは全てにおいて[普通]としてどんな境遇にも馴染もうとする君にしか頼めない大役だ。

 うまくいけば君が望んだ安全な生活が送れるだろうし、そうなったら君はもう必要以上はしなくても済むよ。』


オイ、いくら神とはいえ、俺の事を何処まで調べてやがるんだ?


 女神は何とか提案を受け入れてもらおうと必死に交渉してくる。それもそうか、神の命令(おねがい)が使えないならこうやって何とか相手にも得がある交渉でも持ち掛けないとやっていけないのだろう。


 でもいいか。ある程度自由だって言うならそこまで苦でもないだろうし、俺だって俺と同じ生物を無下にする必要もない。

 うまく立ち回ればモンスターにも人にも狙われないっていう平和な生活(スローライフ)が送れるのはこちらも願うところだ。一時の苦行くらい、やってやろうじゃないか。


 (分かりました。その大役、お受けしましょう。ただし!僕は安全第一で動きますからね。危険な賭けはしませんので過度な期待はしないでください。何度も死ぬのは嫌ですから!)


 『ありがとう、もちろん君の命や精神が第一で構わない。僕も何度も死亡後の手続きとかやるのメンドくさいし、また新しい適性者を探すのもメンドくさいから!』


 まるで開き直るように自分の心を隠さずに伝えてくる。

 本音はそっちか。つくづく自分本位な女神だな、いい加減に敬語外すぞこの野郎。


 (…その理由はさておき、僕が魔王軍に入る手立てはあるんですか?チュートリアルは読みましたが、人間の[ステータスはレベル制][職業は熟練度制][スキルはポイント制]ですよね?

 魔王軍に入るなら味方であるモンスターを倒すのはご法度でしょうし、かといってレベルも熟練度も上げなかったら一生弱いままですしポイントも貰えません、いったいどうやって魔王軍に取り入るんですか?)


 『そのへんも大丈夫!この街に来る前に遠くに廃城みたいなものが見えたと思うんだけど、覚えてる?』


 確か覚えがある。いかにもモンスターの巣窟みたいな廃城。敵幹部の一人くらいいても全く違和感なさそうな雰囲気と大きさだったからよく覚えてる。


『そこに敵幹部の一人が居座っているから…今からそこに飛ばすからなんとか交渉してきて!』


 そういわれた次の瞬間、足元に自分を包み込む大きさの魔法陣が広がった。…じゃねえよ!唐突すぎんだろ!?

 もはや戦闘未経験のままでいきなりボスマップ転移とか、ゲームだったら知識浅い俺でも即クソゲー認定するぞ!

 俺、安全第一って言ったよな!?なに初っ端から俺の事殺しにかかろうとしてんだコイツ?!


(ちょっと待て!まだ武器も無ければ装備も大したものじゃないんだぞ!?モンスターとの戦闘経験すらないのに敵の拠点攻めに行くとか殺す気か!?)


『アハハ!敬語じゃない君の素ってそんな感じなんだ!武器は神様特性の神器(笑)用意してるから大丈夫だって!』


(なんで武器に(笑)がついてんだ!それ絶対ろくなのじゃないよな!?もうお前ほんとにふざけ…!)


 最後の、いや最期の言葉もむなしく、俺は敵幹部の廃城に転移させられた。

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