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プロローグ 異世界?やだよ面倒そうだし

 学業を行い、バイトをし、クラスカーストから落ちないように気を使っている高校生。

 ごく普通な陰キャよりの性格の青年に不幸が襲う。

彼が為せることはあるのか、その前に自主的に動けるのか。不安が残る青年は渋々と異世界に足を向ける

 「…人付き合いって、本当にめんどくさいな。」 


 手にしていたスマホをベットに投げ捨てて、ぼそりと呟きながら体を横にする。

時刻は既に深夜1時。明日も学校とバイトを控えている高校生だというのに、いつまでも会話が続いているSNSのチャット欄を見て内心呆れている青年がここにいた。

 流石にもう疲れてきたし、会話している人も少なくなっているので俺も適当に理由をつけて眠ろうとした矢先、今度は別の人が入ってきたので会話の熱が再燃してしまった。やめてくれよホントに。


 「うわっ、まだ続くのかよ…」


 自分の体はもう限界を迎えていてそろそろ眠らないと明日の行動に多大に響くのだが、そんなことを相手方は知る由もないので会話が続いている。


 「あぁ…あと一時間は続きそうだなぁ。仕方ない、コーヒーでも買ってくるか。」


 本当はこんな会話など真面目に読んでないし相手をする必要もないのだが、後々になってから学校で後ろ指を刺されることになるのが怖いので、悟られないように嫌々と話に混ざっていた。

 「クラス内のコミュニケーションは義務だ」という我ながらふざけた(こころざ)した行動をとる俺は、まだ会話が続くことを見越して[飲み物切れたから買ってくるわ(笑)]とコメントを残し、ジャケットを着こんだ。


「……コンビニ行ってくるけど、買うものある?」

 

「モンエナ、それと菓子パンで。」


 出かける前に同居人の妹に一応確認を取る。

 相変わらずモニターから顔を外さないし、コントローラーとキーボードの手も全く止める気配も無しに注文のみ告げられる。

 いつもの事かとやや諦めて、俺は家を後にした。



 「まぁ、これだけあれば足りるかな。」

 大きめのポリ袋いっぱいにポカリと缶コーヒー、そして数量のモンエナと菓子パンを詰め込んで帰宅する。

 狭い道路を通りながら帰っているとバイク音とサイレンの音が近づいてくるのが分かった。


 「よくやるよ。珍走団はこういうスリルが楽しいとか聞くけど、巻き込まれる第三者以降はほんとに迷惑するんだよねぇ…。」


 しかし深夜に18未満の青少年が出歩くのが禁止されているにも関わらず、外を歩いている俺が見つかっても面倒なことになるため、警戒しながら道を右に曲がった。

 

 そこで意識が途切れた。


_____

 「…ここは、どこだ?確か俺は飲み物買いに行って、帰ろうとして、それで…」

 『…お、目が覚めたかな?』


 いや待て、本当に何処だここ?飲み物買おうとして出かけたのは実は夢でしたってことか?うわぁ、それなら会話途中で寝落ちしたってことじゃないか。明日学校で弁解すんのが怖いわ〜。


 『ここはどこだ~とか何してこうなったっけ~ってテンプレなこと考えてる所悪いんだけど、結論から言わせてもらうね。おきのどくですが君は死んでしまいました。』

 「…は?」


 振り返った先にいた自分よりも小さい、紫髪の少女に「自分は死んだ」と告げられた。当然何が起こっているのかわからない俺はあどけない返事を返すことしかできなかった。


 『そういう返事になるのも仕方ないネ!大型のバイクに轢かれて後頭部を打っての即死だったんだから覚えてないか~。』

 「へぇ~そうだったのか~…マジで?」

 『マジで!』


 あぁ、そうだったのか。良かった寝落ちはしてないのか…いや良くねぇわ、マジか俺死んだのか〜。元気よくサムズアップしながら返事されたのは予想外だったが。


 『でも結構君フランクに接してくるよねぇ~、一応目の前にいる僕は女神なんだよ?』

 

 「死んだからとは言っても僕はあんまり神様とか信じてないからね。エセ宗教とかに絡まれることもあったし。神様とはいえ初対面にフランクなのはお互い様だと思うよ。」


 [俺]と一人称を使っているが、人と話すときは[僕]を使う、現実でもロールプレイング。人とあんまり衝突しなくてもいいような性格を目指したらこうなった。…いや訂正しよう。「()()()()()()()()()()()()()()」という理由のただの厨二心だ。高校になってもキャラ作って過ごすなんて俺自身もイタイとは思っているが…まぁ、いきなり女神とかどうとか言ってる頭おかしい奴よりはマシだよな。…だよな?


 『じゃあ死んだということの確認も取れたということで!お待ちかねの死後についてのはっぴょ~う!』

 「いぇ~い」


 正直言って死んだことは認めたが、今何をしているかについては全く呑み込めていない。とりあえずテンション高くしているので、適当に相槌をとっていた。


 『普通なら死後の世界行ってもらって、そこから転生の順番待ってもらうんだけど~…若くして事故死や病死などしてしまった場合は、記憶そのままで好きな年齢からファンタジー満載の[異世界転生]を選べまぁ~す!

 どう?やっぱり高校生あたりまでだとこういうのに憧れるひと多いんだよねぇ~。もちろんちゃんと一つだけチート持ってける特典もついてくるよ、無論行くよね!?』


 「ハハハ~すごい夢のある話だね~、やっぱり異世界で英雄なんて憧れるよね~じゃあ折角だし…死後の世界で。」


 『はぁ~い!死後の世界で…え?』


 高いテンションが続いていた状態は俺の予期せぬ一言で収まった。


 『あれ?聞き間違っちゃったかな?今死後の世界って…。』


 「間違ってないよ、死後の世界を希望したよ。

 そもそも、チートがあるだのなんだの言ったって戦いとは無縁の国で生きてたんだし、そんな僕が行ったところで犬死して終わるだろうからね。」


 実に夢のない発言であるが、いくら厨二病とはいえ自分の能力を過信するほど俺は馬鹿じゃない。

 生まれてから熊どころか犬や猫でさえ戦ったことも無いんだぞ、それ以上のバケモンがうじゃうじゃいる世界とかマジでご遠慮願いたい。

 チートとかいうので一瞬だけ惑わされそうになったが、やっぱりいらない。

 絶対に何かと面倒ごとになりそうな物いらないからな。

 俺のモットーは平和主義、暴力反対、安全第一の3つなんだぞコノヤロー。


 『ノリを良くしてテンション上げれば押し切れると思ったんだけどなぁ…。魔法適正MAXと魔力無限とか、最高峰の武器セットとか、ステータスカンスト&上限突破とかあるんだけどそれでも行かない?…あ!なんなら異世界の女性から好感度上がりやすくすることもできるよ!』


 「そう何回も死にたくないからね。それにそんな補正ありで彼女手に入れたら、その女性に失礼だと思うよ。あと、言っちゃ悪いかもしんないけど『こんな能力あげたんだからこっちの命令(おねがい)も聞いてね!』とか言われそうだから。」


 よくある展開だと「このチートを用いて、魔王をたおすのだ!」ってのがテンプレだ。神の力云々なんていうんなら自分でやれよそのくらい。


 『疑り深いね君…しかもあながち間違ってないから何も言えないよ。あ~逆に君みたいなのばっかりだったらこんな規定も守らなくてよくなったのにな~。』


 文句を垂れている女神の言葉をすこし聞いてみると俺が聞いても「めんどくさい」と言えるような規定が定められていたようだ。

 どうやら人には現世での寿命と()()()()寿()()を合わせて[人の一生]になるようだ。

 現世で長く生きれば転生までの寿命を待つ時間が短くなり、逆に早死にするとこちらでの寿命が長くなる。

 死後の世界は天国と呼ばれるものとは違い、何もないまっさらな部屋に入れられて過ごすのだそうだ。

そんな中で転生を待つ時間が現世よりも大きく超える時間を過ごすと、魂が消えてしまい()()()()()()()()()そうだ。

 誰かが死んだ魂を、新しい生命の器に入れて始めて[人]が生まれるため、世界の生命バランスを保つのにはむやみに消失させてはならない。


 それゆえに魂の保管のために寿命を消費するために[異世界]を作り出し、余生を消費してもらうという形になったのだ。


 『で、そんな世界を作ったところでまた早急に死なれても困るからチートを適当に持たせて生存確率を上げてるってわけ、そんでそのチートが折角あるんだから異世界の危険因子を排除するのにも協力してもらいましょうって話なんだ。実に面倒でしょ?

 僕も死者の管理以外に異世界の管理があるのは本当にめんどくさい…。』


 「ずっと聞いてたけど本当に面倒くさいね。ただ、そんな事情があるなら異世界転生させてもらうよ。」


 そういうことならば仕方ないと重い腰を上げる。女神も穏便に終わりそうでホッとしている。

 ここまでの話が長かった気もするが早速[転生の儀式]に取り掛かる。


 『じゃあ、転生の準備始めるね。チートも必ず選んでもらう決まりだから欲しいものあるなら言って、…普段はこれ隠すんだけど、あまり強力なチートになればなるほど神のお願いの強制力が強くなるから無理のないものを頼むといいよ。』


 「そんなこと僕に言っちゃっても大丈夫なの?だったら遠慮なく[異世界のチュートリアル]と[言語能力]で。」


 『うわぁ、ホントに必要最低限だ…。ここまでくると異世界人と識別するのが難しくなってくるからもうちょっとだけ特別なので頼むよ。

[言語能力]は人語は最初から使えるし、説明書とか転生場所付近のマップも申請されればチート関係なしに発行できるアイテムだからさ。

付け足して言うと始め一ヶ月は豪遊しなければ問題なく使える資金も渡しておくよ。』


 「注文の多い女神様だなぁ…。

[獲得資金補正]はバレたら面倒なのに絡まれそうだし、[初期ステータス補正]や[ステータス上昇UP]も最初は苦労するだろうな。」


 あまりにも求めるチートの敷居が低すぎるため、強制力の薄いチートの一覧表を渡され探していた。

 されども、強制力のみならず異世界人とのあいだの厄介事も考えて選んでいるためになかなかに「コレだ!」と言えるものが無い。

 てかどれ選んでも戦闘系しかないじゃん。生活に役立つ方で頼みたい。


 「あ、これが一番いいかも。」


 ・道具自動使用[オートアイテム]

 自身の所持する道具を思念するだけで取り出したり、回復や強化の道具を自動で使用することができる。


 『決まったかい?ってまた地味なのを選んだね。いいんじゃない?ピッタリだと思うよ。』

 

 皮肉交じりで女神に言われたが、これがいいんだ。と押し切った。

 さて、準備は全て整った。いまだに乗り気ではないが仕方ないものは仕方ないと割り切り、魔法陣の様なものの中心に足を踏み入れる。


 『(なんじ)、魂の天命(てんめい)を待つ者。我、汝の消失を認めぬ者。現世にて非業なる死を遂げたものに今一度の安らぎを。

 汝の行く末を預かる者として我が内なる世界[レティナ]への扉をここに開かれん。

 神なる祈りをここに、今は慎ましき汝に我が慈愛(じあい)なる心を共に送らん。』


 詠唱が終わり、胸をなでおろす女神、自分も安堵と先行きの覚悟を持って転送を待つ。

 しかし次に女神が放った一言で一気に精神を絶望させられた。


 『僕は結構君のこと気に入ったからね。お願いのほうの強制力はほとんどないけど、こっちからいつでも話せるように詠唱を強力なものにしたんだ。

 話相手、よろしくね!』


 「え!?ちょっと待ってそんなの聞いてな…!」


 最後の言葉を言い切る前に転送が完了した。最後に見た女神の無垢な笑顔が俺には悪魔の微笑みのように見えた。



「―――彼ならば、きっと何とかしてくれる。…か。

【最高最強の勇者】と呼ばれたのパーティが、口をそろえて助けを求めた君の力。

 どれほどのもなのか。期待させてもらうよ。」


 新たな転生者を見送った女神っぽい者は、既に何もない魔法陣を見つめつぶやいた。

 青年の名前が一切明かされてないのは仕様です。名前を付け忘れたのは女神の方です。

 

 気持ちの持ちよう次第で書きたい内容がコロコロ変わってしまう病ゆえに、2作目書いてみました。正直どっちも完結させられるかは不安ですが、マイペースに頑張っていきます。

 今回は王道テンプレの異世界転生を一度描いてみようと思いました。

数ある王道の中で、他と全部が一緒にならないような良さが出せたらなと思います。

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