拗らせた妹、職業不明の父親
「アルバイトしてるのはいいんだけど、夜遊びは程々にしないとダメだよ、遊んで楽しい年代なのは分かるんだけどね、君みたいな女の子が夜道を歩いてたら不審者に出くわすかもしれないんだから」
お説教を小一時間聞きながら、実家に送ってもらった。
今回ばかりは、警察官に感謝するわ…
「それじゃ、夜遊びはしないように」
パトカーを見送った後、俺はこっそり鍵を開けて自分の部屋に向かう。
(はぁ…どうしよマジで…こんな姿を親にでも見つかったら終わりだ)
ガチャン
「はぁ…はぁ…お兄ちゃん…お兄ちゃん…しゅきぃ…」
…
ガチャン
な ん だ い ま の
部屋に入ろうとしたら妹が何か俺の枕の匂い嗅いでた。
いや…キツいっす…
見間違えだろ…?もう一回確認するか…
ガチャン
「おにぃ…え!?え!?ギャー!!誰ぇ!!!??」
「騒ぐな!」
「ギャー!!」
ギャー!!じゃないな…もはやホラー映画さながらの絶叫を噛ましてくれたお陰で一階からドコドコドコっと走る音が聞こえる
ガチャッ!
「どうしたの!?光希!?…えぇ!?誰ぇ!?」
父さんが飛んでくる様に部屋に入ってきた。
あぁ…詰んだなこれは
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「ほーん…それで女になって帰ってきたと!?」
「はい…」
「そんな嘘をつくな!」
ただいま、客間で不審者(俺)と家族揃ってお説教タイムです。
「お父さん、この子が渚の彼女さんなら、受け入れてあげましょうよ」
「は?兄貴の彼女?ブッス!ウチの兄貴に釣り合わないんですけど!?ウチの兄貴は頭よくてジャイニーズに採用されそうになったぐらいイケメンだし、スポーツは小谷翔平並に凄いんですけど!?兄貴に似合う彼女はウチしかいないし!」
それはお前の脳内設定な。
ジャイニーズに採用どころか面接さえしたこともないし、小谷翔平並に野球やった事はないぞ。
いや、妹がこれほどブラコン拗らせてるとは知らなかった。
いや…知りたくなかった。こえーよお前…。
「…じゃあ家族しか知らねえ証拠言ってやる!光希テメエ!勝手に俺のNARUZを友達に貸したろ!?テメエの友達、べっとりページにシミ付けて返ってきたぞ!?母さん俺のパーカー勝手に自分の物にしただろ!?気に入ったら奪うのやめてくれ!あれ高かったんだぞ!?父さんも俺のバットケースにゴルフのアイアン詰め込むのやめろよ!あれゴルフバックじゃねえよ!野球のバットケースだから!」
「こ…この気迫…!威圧感…!兄貴!?」
「渚で間違いない…すまん渚…」
「ごめんね渚ちゃん…あのパーカー…つい気に入っちゃって」
さっきからイライラしてたおかげか、スラスラと家族への不満が言えた。
あのおっさんのせいだな…。
それから、家族会議で今後の話をした。
俺は大学を辞める事、そして一番理解できないんだが…光希と同じ女子高の1年生として入学する方向で決まった。
「父さん、渚が女子高に行ける様に、あらゆるコネと権力使ってねじ込んであげるからね!」
いや…マジでこの人ヤバすぎるだろ…
俺は父さんの仕事が何をやっているのか知らない。というか教えてもくれないが…とんでもなく金持ちだってことしか知らない。
我が家の地下には古いスポーツカーが20台、雑誌でしか見ないイタリアのスーパーカーが10台は揃ってるセレブなのだが…
生活は普通の一家と変わらないので、目立たないのだ。
「じゃあ、兄貴と同じ学校通えるの!?チョー嬉しいんですけど!」
「もうどうにでもなれ…」