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ウサギ

「いきなりやけどね。うちのオカンに好きな動物がおるって話やねんけど」


「あ、そーなんや」


「その動物の名前を忘れてもうたらしくてね」


「好きな動物の名前を忘れてもうて。どうなってんねん、それ」


「うん。でな、いろいろと聞くんやけどな。全然わからへんのよ」


「わからへんの? いや、ほな俺がね。オカンの好きな動物、ちょっと一緒に考えてあげるから。


 どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ~」



「あの~、いわゆる小動物でね」

「ほーほーほーほー」

「で、耳がすごく長くてね。ピョンピョン跳ねるやつって言うねんな」


「おー……、ウサギやないかい。

 その特徴はもう完全にウサギやがな」


「あぁ、ウサギな」

「すぐわかったやん、こんなん」


「でもこれが、ちょっとわからへんのよ」

「なにがわからへんのよ~」

「いや、俺もウサギやと思うてんけどな」

「そうやろ?」

「オカンが言うには、



 その動物はよく道端で見かけるって言うねんな」


「あー、ほなウサギとちゃうかぁ。


 ウサギは犬や猫みたいに、そこらにいるわけではないからね。


 もし、道端で見かけたらそれは、すでに車にひかれて、ご臨終してもうたヤツぐらいやねんから」


「そやねん」

「田舎に住む友人いわく、野生のウサギよりはまだ、野生のモモンガのほうが見ることできる言うてんねんから。


 自ら探しに行かんと見つからん、動物界のメタルスライムって言われてん」


「そやんそやねん」


「あれー? わからへんやん。

 ほな、もう一度くわしく教えてくれる? う~ん」



「昔、小学校でね。数え方で「一匹」って答えたらバツ食らったらしいねん」

「ウサギやないかい。


 納得できんけど、あれの正しい数え方は一羽二羽やねんから」


「そやねんな」


「しかも、その理由が昔の人が四つ足動物ではなく、鳥であるとして食うためとかね」

「所説あるけどね~」


「いや、知るかと! 俺は現代人よ。一匹でええやないかい!」


「まぁね~。所説あるけどね~」

「こんなもん、ウサギやんか」


「わからへんねんて、これでも」

「なにがわからへんのよ」

「俺もウサギや、思ったんやけどな]

「そうやろ」

「オカンが言うにはな。



 ペットにしたい動物ランキングでね」

「ほー」


「その動物はランキング一位に輝いた、ってゆうねん」

「ほな、ウサギとちゃうやないかい!


 ウサギってペットの優先度にしたら、妙に低いんやから。

 トップファイブに入れんよ、あんなもん」

「そやんな」


「ちょっとペットの選択肢を思い浮かべてみ?


 まず選ぶなら犬か猫かやろ?

 でも、やっぱ大きいし、犬や猫には飼うには負担も大きいねん。ならと言って選ぶのが、ハムスターかインコや。


 また、そう言うのでもなくて、っていう人が金魚とか、カメとに手を出すもんよ。


 な? ウサギは選択の対象から外されんねん」


「そやねん、そやねん」


「ウサギってそういうもんよ。


 あれ?

 ほな、もうちょっとなんかゆうてなかったか、う~ん?」



「俊敏やけどな」

「ほー」

「カメには負けるイメージしかないらしいねん」


「ウサギやないかいっ!


 それ、どう考えても童話の「ウサギとカメ」に影響されてもうてるがな」


「そやねん」


「子供はこの絵本を読み聞かせされて、ウサギ、イコール怠け者で愚か者のイメージを植え付けられんねんから。


 ペットの優先度として低めなのは、このイメージも一枚かんでると俺はにらんでんのよ。


 俺の目は騙されへんよ。俺騙したら、たいしたもんや」


「まぁねー」

「ウサギやんか、絶対!」


「わからへんねんて、でも」

「なんでわからんの、これで」

「俺もウサギと思うてんけどな」

「そうやろ」

「オカンが言うにはな。



 絵で表現するのがすごく難しい動物やって、言うねん」

「ほな、ウサギとちゃうやないかいっ!!


 ウサギなんて、だぁれでも書けるよ。試しに、紙とペンを用意してみ。俺の言う通り書けばいいんやから。


 まず、真ん中に丸を書くやろ? じゃ、上に二本の長い耳付け足してみ。 

 な? ウサギやないかい!!」


「そやねん」


「幼稚園児が真っ先に書く動物筆頭レベルに簡単やねん」


「そやねん、そやねん」

「ウサギとちゃうがな。ほな!


 ほな、もうちょっとなんか、言うてなかったか?

 う~ん」



「なぜか学校で飼われたらしいねん」

「ウサギやないかいっ!


 あれ、なんか知らんけど、ほとんどの学校で飼われてんねんから。

 特に創作物やとその確率は爆上がりするからね?」


「そやねん」


「もし、小学校を舞台にしたドラマで、ウサギが飼われてなかったら、それは予算の都合上にほかならんよ」


「そやねん、そやねん」


「もう、ウサギや絶対!」

「分からへんねんて、だから」

「なんで分からへんの、もう~」


「いや、俺もウサギやと思ってんけどな」

「そうやて!」

「でもな、オカンが言うには、



 その動物を持つときは優しく抱えてあげたくなるってゆうねん」

「ほな、ウサギとちゃうやないかいっ!!


 ウサギの持ち方の代表例はただひとつ。耳をつかむ方法だけやねんから」


「そやんな」


「あの長い耳は人間がわしづかみで持てるように長くなった説すらあるからね? ちなみに、持ち方の第二位は首根っこや。


 あれ? これは捕らえたウサギの場合のみか? でも、ええわ。どうせ、そういうイメージしかないんやから」


「そやねん」


「ほな、ウサギとちゃうやないかい!


 ほな、もうちょっとなんか、言うてなかったか? う~ん」



「ライオンの獲物というイメージが強いらしいねん」

「ウサギやないかいっ!!


 ウサギはライオンが弱者にも全力で狩りをするその代表として選ばれてんねんから。


 ウサギは弱者で、強者に全力で狩られるのは運命やねん。


 ちなみに、自然界の弱肉強食を伝えるために犠牲になるのは、インパラや!

 この違いが重要やねん」


「そやねん、そやねん」


「こんなん、ウサギで決まりやんか」

「でも、わからへんねんて」


「わからへんことはない。オカンの好きな動物はウサギや。

 ウサギで決まりや、そんなもん」


「いや、でもな。オカンが言うにはな。



 ウサギではない、ってゆうねん」

「ほな、ウサギとちゃうやないかいっ!


 オカンがウサギちゃうってゆうたら、ウサギとちゃうがな」

 

「そやねん」


「それ、先ゆえよ。ホンマにわからへんがな。どうなってんものう」


「んでな、オトンが言うにはな」

「オトン!?」


「ウーパールーパーとちゃうかって」

「いやオトン、年齢バレとるで!」

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