出会い
屋上で憂鬱になっている浩介。
そこに少女がやってくる。
今でも時折、屋上に足を運ぶ。
放課後、帰路につく生徒や部活動に明け暮れている生徒達を見下しながら、僕はボーッとしている。
――この世の終わりは何時訪れるだろう。
宇宙人を見たとか、未確認飛行物体を発見したとか、そんな希有な出来事も成り行きもおきたことがない。ただ見つけたからといって、そんなこと世が滅びるなんて考えもしない。
――ただ、人間だって、地球だって、lastがいつか来てしまう。
1日1日、何気ない日常を過ごしていても、自分が実感しなくても、lastに近づいてきている。
そう、永遠に続く歯車のように。
人間で言えば命。どうあがいても、抗うことは絶対出来ない運命。
「だからって、何が出来るんだろう……」
そう自分に言い聞かせてみるが、良い案は出てこなかった。その代わり妥協案は出てきた。
――自殺。
僕は首を振る。心のどこかにそのような気持ちを感じている自分がいて、憂鬱になった。
自殺なんて、一時の気の迷いのなんだ。死んだ後は絶対後悔する。死がこんなに苦痛なモノなんだ、こんなことなら自殺しなければよかったと。明日の輝きを失った人は鬱になって、生きていくことを拒むが自殺の域までには達してはいけないと思う。自分の論ではあるが。
ぶぁ、っと夏の生暖かい風が僕の横をすり抜ける。この一週間、天気はいつも快晴で気が狂いそうになるほど熱い。その中で部活をしている野球部やサッカー部の幾重にも繰り返される叫び声が、気の狂った奴の雄叫びに聞こえる。
「――飛べるかな」
ふと、金網に近づいて下を見てみる。アスファルトにたむろっている女子生徒が点のように小さく見えた。飛び降りたら、確実に死んでしまうだろう。過程頭の中では出来ても行動が出来ないとはこういうことなのかな。それ以前に飛べるはずもなく、ただ奈落に落ちることを潔く喜ぶ気の狂った奴のような思考を少しでも持った自分が、やはり憂鬱だ。
「病んでるのかな」
独り言のように呟いてみる。しかし、その言葉は一瞬のうちにいたずらな風によって吹き飛ばされてしまった。
「はぁ……」
なんだか、自分の心も吹き飛ばされた感じでイヤになってしまった。誰に自分の心情を吐露すれば、安心できるのだろう。独り言ではダメらしい。
踵を返し教室に戻ろうとしたとき、不意にドアが開く。
「あ……」
半開きになったドアから女の子の顔がヒョコッと現れた。僕がいることに驚いたのか、目を丸くして硬直していた。
刹那、女の子は勢いよく扉を閉め、姿を消した。
「なんなんだ?」
突然の出来事に対応しきれなかった僕はただ立ちすくむことしかできなかった。