第83話 話し合い開始
「バサマークを攻める対価として、こちらは何を用意できるのでしょうか?」
話し合いが始まり、私は早速質問をした。
「金、食料、資源、そして戦力ですね。先ほどの説明したパラダイル州に発生している問題をほとんど解決することが出来ます」
とにかく対価として多くの物を払うつもりはあるようだ。
これならばあっさりと交渉成立しそうなものだが、向こうの総督は感情で決めるタイプだったか。
これだけでは弱いかもしれない。
「事前にバサマークはミーシアンを統一したら、シューツと手を組み、パラダイル州に攻め込むつもりだという噂を流せばいいのではないでしょうか? あながち嘘とも言い切れませんし。交渉は今すぐ始まるわけではないですし、噂を流す時間はあるでしょうか?」
「そうですね……そうなるとバサマークにミーシアンを統一させるわけにはいきませんからね。噂を流す時間もあるとは思います。しかしながら噂程度では信じない可能性も十分にありますからね。まあ、やる価値はありますが……」
確かにそれだけで交渉が成立するか確信は出来ないな。
「リシア様はどう思います?」
私はリシアに意見を求めた。
「そうですわね……恐らくどれだけこちらと組むメリットを提示しても、パラダイル側は受けることは決してないと思いますわ。我々には一番交渉には欠いてはならないものを欠いておりますので」
「何でしょうかそれは」
「信用です。こちらが約束をきちんと守るとパラダイル側に思わせなければ、食料も、お金も、兵も全て無駄です。それと、バサマークがパラダイルに攻め込むという噂を流しても、それはクラン様も同じことだと思われるでしょう。それでは意味はありません」
「それはもっともですが……しかし信用が問題となると打つ手がありますでしょうか?」
交渉までの期間中、いきなり信用を大幅に上げるなど果たして可能なのか。
なんせ大昔からの因縁である。
短期間で払拭できるようなものではないだろう。
最初から無理な交渉だったのだろうか。
バサマークはパラダイルとの交渉は無理だと諦めたようだが、その判断が正しかったのか?
「そうですわね……今回は皇帝陛下に仲介を頼んでおりますので、協力をしていただくことで、信用度を上げることは不可能ではないと思いますわ。色々と根回しは必要だと思いますけれども」
「その根回し……とは?」
リシアはそれから具体的な方法を話し始めた。