第316話 一時帰還
「そろそろ撤退を考える頃かと思ってたけど、当たってたね」
飛行船の戦果報告を聞いて、ロセルがそう言った。飛行船はセンプラーから撤退したキャンシープの船を、一隻沈めたようだ。
作戦通り飛行船で、敵の輸送船を攻撃した。飛行船の魔法攻撃は上手く命中して、敵の輸送船を破壊することに成功した。
それからもう一回輸送されたので、それも破壊。二回目は一隻逃がしてしまったようだが、そのくらいは問題ない。一隻では満足に兵糧や資源を輸送することは不可能だ。
その後、ロセルがそろそろ撤退するだろうと予想した。敵からすると、二回やられたら、もはやなすすべもなく、撤退しないとどうしようもないからだとロセルは説明した。
輸送船を沈められれば、兵糧がまず無駄になってしまうが、それだけでなく兵も無駄死にしてしまう。留まるという選択肢はないに等しかった。
ロセルは敵が撤退する日を予想する。
撤退する敵に飛行船で追い打ちをかけ、一隻でも船を沈めれば、大きなダメージを与えることができる。
ただで撤退されると、その後、再び準備を整えて、センプラーを陥としに来るかもしれないが、ダメージを受けた状態ではそう簡単に再び戦をしようとはならない。
その考えに私も賛同し、飛行船で船を追撃をするように指示。
ロセルの予想は怖い位ピッタリと当たって、船を一隻沈めることに成功した。
敵が撤退していったので、センプラーから逃げてきた守備兵たちを現在、センプラーに戻していた。
「これで敵はもうセンプラーを狙っては来ないだろうか?」
「そうだね。しばらくは戦が出来ないはずだし。ただ、もし落とした船の中に重要人物とかがいたら、恨みを買ってしまってしつこく狙ってくるようにはなるかもね」
「たまたま乗ってなかったら良いのだが」
まあ、仮にセンプラーがしつこく狙われることになっても、あそこはクランの領地なので私たちが直接防衛する必要はないか。
陥とされるたびに今回みたいに奪還の任務を受けることになるのは、かなり面倒ではあるがな。
流石に今回の件でクランも守りを固くするだろうし、そう簡単には落ちない城になるだろう。
「とにかく今回はセンプラーを簡単に奪還できた。シューツ州の援軍に向かった方がいいだろうから、一旦カナレに帰還して少し休養を取り、サイツ州へと向かおう」
シューツ州には守りに残しておいた兵で援軍に行けと、クランは指示していたので、厳密に言うと行かなくてもよくはあるのだが、家臣であるミレーユやトーマスが戦っているのに、私だけカナレ城で休むわけにもいかなかった。
ここまで休みなしで戦っているので、休憩は必要だと思った。
私たちはタンプラ―城を出て、カナレへと向かった。
〇
「おかえりなさい! アルス!」
カナレ城へ帰還した。
私が帰ると同時に、リシアが抱き着いてきた。
戦に出るたびリシアを心配させてしまって、心が痛んでしまうがこればかりはどうしようもないな。
「心配させて済まなかったな」
「いえ、無事に帰ってきてくれただけで、とても嬉しいです」
リシアの目は涙ぐんでいた。
「でも、まだ戦があってしばらくサイツに行かれるのですね」
「……すまない」
カナレに帰還する前に、リシアには手紙を送っているので、どういう状況なのかは理解してくれている。
「ならカナレにいる間は、ずっと一緒にいましょうね」
リシアは暗い顔はせず、笑顔でそう言ってくれた。
「ああ。一緒にいよう」
私はリシアと固く手をつなぎ、カナレ城へと戻っていった。




