第313話 センプラー奪還
私たちはセンプラーを奪還するため、センプラー近くにあるタンプラー城に入城した。
「現在のセンプラーの様子はどうなっている?」
「キャンシープの兵たちが守りを固めているようです。かなりの人数が城の中に入り、防衛を行なっています」
斥候の兵士がそう返答した。
「キャンシープ軍の守りは固いのか? 制圧したばかりだから、今が取り返すチャンスかもしれない」
「キャンシープに制圧され、その後、取り返すためにセンプラーから撤退した兵士たちと、周辺の城の兵士たちを集めて、侵攻したのですが、あっさりと追い払われてしまいました。水軍も強力ですが、普通に陸での戦も強力です」
そうなのか。
センプラーという大都市を陥とすためだから、精鋭兵を集めて侵攻してきたのかもな。
「しかし、取り戻すと言っても、センプラーだと飛行船が使いづらいぞ」
攻め込む場所が敵の城だったり、砦だったりした場合は大丈夫だが、センプラーは元々ミーシアンの都市である。
制圧されたとはいえ、元々の住民も大勢残っている。
飛行船で空爆をするのは難しいだろう。
「街を攻撃するのは難しいかもしれないけど、センプラーに輸送する船を攻撃するのには使えるよ」
ロセルがそう言った。
「なるほど……輸送船を潰してしまえば、敵は陸路が使えないから、物資が入ってこず干上がってしまうね」
リーツがロセルの考えていることを代弁するように言った。
輸送船を飛行船で攻撃するか。
攻撃がちゃんと当たるかどうかだが、成功すれば敵は撤退するしかなくなりそうだな。
ただ、一つ懸念点がある。
「その方法を使うにしても、センプラー内にいる領民も同じく食事が取れなくなるよな。もしそれで大勢の領民が飢え死にすることになったら、大変なことだぞ」
センプラーはクランが直接統治している領地だ。
領民を多く餓死させることなど、やっていいものか。
戦なのである程度犠牲が出るのは仕方ないが、ミーシアンの領民を餓死させたくはない。
「戦なので仕方ないことではあると思いますね。ただ、アルス様の懸念も理解できます」
リーツは私の考えに一定の理解を示した。
「そうだね……でも、結局力押しで攻め込むにしろ、何をするにしろ、街に被害が出ないなんてことは起こり得ないし……キャンシープも輸送が不可能と分かったら、餓死する前に撤退を判断すると思うから、領民が餓死する心配は、そんなにないと思うよ」
ロセルが説明をした。
「それはそうか……確かにほかの方法でも結局同じく領民や都市に被害は出てしまう……」
何の被害も出さずに勝つ方法などないかもしれない。
それこそ飛行船で輸送船を破壊するのが、一番穏便にことを運ばせる方法かもな。
「敵の船には魔法防壁があるという話ですが……恐らく、シャーロットとムーシャの魔法攻撃であれば、突破できるかと。あとはいかに当てられるかですが、飛行船の乗組員の練度も上がってきていますし、大丈夫かと」
飛行船は魔法兵の力だけでなく、乗組員の能力も必要だ。
魔法兵は地上を見ることはできないため、照準は乗組員が合わせるので、乗組員の腕が良くないと命中率が下がってしまう。
最初はシンに飛行船を任せていたが、彼は現在開発中なので、船長ではない。
今の飛行船を任せているのは、昔からローベント家に仕えている兵士で、空軍適性が高いものである。
正直、空軍適正は飛行船が出来るまで意味のないステータスだったので、あんまりちゃんと見てないことも多く、調べると意外と高適性のものがいた。
B以上の者を空軍隊に配備して、訓練を行なってもらっていた。
その中で上達が早かったものを、船長にして飛行船は運用している。
乗組員皆がそれなりに適性が高いので、飛行船の操作はかなり安定していた。
「よし、それでは飛行船を飛ばして、敵水軍を撃ち倒すのだ」
私はそう指示を出した。




