表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

268/303

第268話 面談終了後

 ボロッツが帰っていき、何とか面談を終わらせることは出来た。


「リーツ。私はいつも通り振る舞う事が出来ていたか?」

「ばっちりでしたよ。僕の方が怒りを押し殺せていたか、少し不安ですね」

「それは間違いないな」


 仮にリーツが怒っているとばれても、特に問題はないだろう。

 こちらが怒っている原因については、向こうも良く知ってるだろうからな。


「流石にちょっと疲れたから、寝室に行く……」

「あ、はい。お供いたします!」


 私はリーツと一緒に寝室に向かった。



 〇


 会談を終わらせた後、ボロッツはプレリード砦へと帰還していた。


(完全に解毒が成功した……というわけではなさそうだったな。時折苦しそうな表情を見せる時があった。しかし、大幅に症状を緩和できたのは事実のようだ。ゼツは一か月ほどで死ぬと言っていたが、少なくとも死んでいないのは事実だし、会話することは可能なくらい症状も軽い)


 馬に乗りながら、先ほどの会談について考えていた。


(完全に解毒が成功していないということは、また悪化していくという可能性もあるが……いや、恐らくアルス・ローベントは死なないだろう。目が死んでいなかった。解毒する方法を見つけた可能性がある。家臣たちが動揺しているという感じでもなかった……)


 自分の戦略の失敗をボロッツは悟った。


(まあ、鑑定眼自体を使い辛くさせただけで、とりあえずは良しとして置こう)


 先程の会談で、アルスの鑑定スキルについて詳しい風を装って話をしていたのは、意図してのことだった。

 そうすることで、人材発掘をする際、サイツからの密偵であるという事を警戒せざるを得ないので、人材発掘することが難しくなる。


 実際は、ボロッツはゼツからちょっとだけ話を聞いただけで、全く詳しくはない。結局、鑑定結果を偽装する方法も、教えては貰えなかったので、密偵など送り込むことは不可能である。


(ただ……現時点でローベント家の戦力が非常に強力なのも事実だ……特に魔法兵が厄介だ。野戦ならまだしも、攻城戦だと、強力な魔法兵が存在するだけで、一気に落としにくくなる。経済も順調のようで、資源も豊富にあるだろうし、カナレを計略なしで落とすのは、難しいだろうな)


 カナレは落とせない。ボロッツはそう結論を出した。


(一度、総督閣下と話をするべきだな。ミーシアンとの戦は恐らく避けられないはずだ。今後どういう戦略を取るべきか、献策をしなければ)



 〇



 会談が終了して、数日後。


 サイツ軍はその後あっさりと撤退していった。

 こちらから撤退を要請したとは言え、あまりにもあっさり撤退していったな。

 野盗退治という建前がある以上、もうちょっと粘ると思ったが。

 まあ、引くと決めたら、早い方が良いしな。兵糧も無駄になるし


 とにかく、私の無事を信じてくれたようだ。

 これで戦を回避するという目的は達成できた。

 ひとまずは安心していいが……


 あとは私の毒を本当に解毒できるかだな。


 体調に関して……正直、だいぶ悪化してきている。

 立つのも苦しい。苦痛で眠れない状態が続くときもあるので、体力をかなり消耗している感じがする。


 流石に限界が近づいてきているのを感じた。

 気合で何とかするにも限度があるし、早くヴァージが帰ってこなければ本当に死んでしまうかもしれない。


 何とか耐える事数日経過。


 ヴァージがカナレ城に帰還した。




「それじゃあ解毒魔法使うよ~」


 シャーロットの気の抜けた声が聞こえてきた。


 私は今、野外にいる。もう歩くのも難しい状態なので、リーツに運ばれて外に出た。

 解毒魔法は大型の触媒機を使用する。大きさ的に屋内には運び込めないので、野外で行うことになった。


 現在季節は冬だ。厚着をしているが、それでも少し寒い。


 妻のリシア、リーツを始めとした家臣たちが、固唾を飲んで見守っている。


 シャーロットが解毒魔法の呪文を唱え、魔法を発動させた。


 光が私の体に降り注ぐ。


 一気に症状が緩和されていく。

 そして、すっかり体を蝕んでいた症状が無くなった。


「ど、どうですか? アルス?」


 リシアが心配そうな表情で尋ねてきた。


「一気に楽になった……こんなに体が楽になったのは久しぶりだ」

「ほ、本当ですか?」


 体力は大分落ちていたので、今すぐ歩けるようにはならなかったが、ちょっと休めば歩けるようにもなるだろう。


 家臣たちから歓声が上がる。


「よ、喜んでいるところ水を差すようだけど、数日は様子見ないと完治したとは言い切れないと思うよ」


 ロセルが冷静な意見を言った。確かに彼の言う通りである。

 毒魔法で症状が緩和することは分かっていた事なのだ。

 油断することは出来ない。

 ただ、自分の感覚では、以前毒魔法を使ったときは、まだ若干体に違和感があったのだが、今回は完全に症状が消え去ったという感じがする。


 今回は解毒に成功した。そんな確信があった。


 ロセルの言葉通り、まずは一週間ほど様子を見た。

 一週間たち、体調は良化の一途をたどり、症状が復活することもなかった。


 私が確信した通り、解毒に完全に成功したようだ。





本日アニメが各種動画配信サイト(Netflix、Huluなど)で配信開始されたみたいです。

加入されている方はぜひ見てみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 思ったより簡単に解毒できたな。てっきりゼツを捕えるか、 エリクサーを作るためにドラゴンを倒して素材を手に入れるとか、 そういう次元の難易度かと思ってた まあシャーロットが異常に優秀すぎたっ…
[一言] いや~、この敵腹立つ アルス達に感情移入し過ぎなのかもですが、本当に腹がたってしまいます!
[良い点] 更新ありがとうございます。 やっとアルスが解毒に成功しました。ここからは、一気にサイツとの戦いに突き進む気がします。他の州の動向が気になりますが、流石にクランがなんとかするでしょう。 アル…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ