第197話 祝宴
バサマークの処刑が行われた後、祝宴が開かれた。
大勢の貴族たちが集結していた。
「おっ! アルスではないか!」
よく知った人物の声が聞こえてきた。
元カナレ郡長で、現ベルツド郡長である、ルメイル・パイレスだった。
「何とも大活躍したらしいではないか。いやー、やはりカナレはお主に任せて、何の問題もなさそうじゃな!」
ルメイルは愉快そうに笑った。
少し酒が入っているのか、顔が赤くなっている。
「ベルツドはどうですか?」
「中々いいところじゃよ。カナレに比べると、とにかく規模が大きくて色々と大変だな。あと、カナレ郡長だった時には、素っ気ない態度だった貴族も、今ではわしに一目を置いて、言葉を聞いてくれるし、そこは良い面だな」
カナレはミーシアンの中でも、辺境にある郡であり、規模もそこまで大きいわけではない。
戦乱の世の貴族の格は、結局実力で決まる。
実力とは、動員できる兵数で決まると言っても、過言ではない。
広い領地を治めているものが、一目置かれて見られるのは、当然のことではあった。
祝宴が始まる。
クランが貴族達の前に出て、スピーチを行う。
私の耳にスピーチの内容は入って来ず、代わりにバサマークが死の直前に言った言葉が気にかかっていた。
いずれミーシアンは分裂する。
クランには兄も弟も、もういない。
息子は待っていれば、いずれ継げると思っているだろうから、よほどクランがひどい真似をしない限り、反旗を翻すことはないだろう。
分裂する確率は、正直あまり高くないような気がする。
なぜバサマークはあんなことを言ったのだろうか?
家臣から信を失うとか、そういえば言っていたな。
つまり、サイツ州のように、有力な家臣が反旗を翻し、それが原因でミーシアンが分裂する。
そう言いたかったわけか?
まあ、しかし、私はミーシアンの郡長は全員見たが、クランより有能な人物はいなかった。
クランより無能な家臣が、下剋上を起こすことなど、当然無理だろうし、そんなことが起こることはないか。
私はバサマークの言葉は、やはり的を射ていない発言であると思った。
「今回の戦の最大の功労者は、カナレ郡長、アルス・ローベントだ! アルス、前に来い!」
考えていたら、呼ばれた。
呼ばれたので行かねばならないと、私は急いで貴族達の前に出る。
「カナレには大勢のサイツ軍が攻め寄せ、カナレが取られたら、こうしてアルカンテスを落とすことができなかったかもしれん。サイツ軍は8万のところ、カナレ軍は私が出した援軍と合わせて、3万だ。倍以上差があったわけだが、それを守り切った。凄まじい戦果である」
その説明には貴族達も、誰も文句はつけられなかった。
子供なのに郡長になった私に、反対の声は今までは多くあったが、これを機になくなってくれればありがたい。
「アルスからも何か一言」
クランは無茶振りをしてきた。
困った。
言うことなんて、何も考えてないぞ。
喋らないと、場がシーンとしてしまう。この空気には耐えきれない。
とにかく月並みでもいいから、何か言うことにした。
「えーと……かなり危機的状況でしたが、必死で頑張りました。これからもクラン様のためミーシアンのため頑張ります……」
大したことは言えなかった。
特に大したことは言えなくても問題はなかったようで、その場は普通に盛り上がった。
祝宴は終わり、私たちはカナレに戻った。
そして、八月八日、私の14歳の誕生日。
リシアとの結婚式を開催することになった。
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