表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

145/302

第145話 最後の軍議

 ベルツド城の軍議の間。


 郡長のカンセスとトーマス、その他重臣たちが、暗い表情で軍議をしていた。


 スターツ城の戦いで失った兵数は多く、さらに重要な拠点であるスターツ城を奪われた。


 スターツ城が落とされたのは、致命的と言ってよかった。


 立地的に、スターツ城が落とされると、バサマークからベルツドへ援軍が来れなくなる。

 ここまで追い詰められた場合、バサマークの援軍を頼るしか、戦況を巻き返す手段はないが、それが来れないとなると、このまま落城するのは目に見えていた。


 もはやこの状況で策を思いつく者はおらず、暗い沈黙が続いていた。


 その沈黙を破り、家臣の一人が口を開いた。


「……もはや、降伏なされるべきだと思います」


 それは、その場にいた家臣が考えていた事だった。


 徹底抗戦して負けた場合、確実に郡長であるカンセスは殺されるだろう。

 現状、カンセスの命を取らないという事を条件に、降伏をすれば郡長の立場が守られるかどうかはともかく、殺される可能性は低かった。


 徹底抗戦することになれば、無駄な死者が出ることにもなる。降伏の提案は、クラン側にも大きなメリットがあるため、受けてくる可能性は極めて高い。


 主君の命のため、その家臣は降伏を提案したのだ。


「ならん……降伏など……」


 カンセスは表情を歪ませる。

 彼にとってバサマークは義理の兄である。

 能力も高いと尊敬していた。自分の命惜しさに、降伏は出来ない。


「カンセス様……どうかご賢明な判断をお願いいたします!」

「私たちはカンセス様を失いたくはありません……それだけでなく、このままでは、ご子息も処罰されバンドル家自体が滅ぼされてしまいます。私の一族は代々バンドル家に仕えてきました。それだけは避けていただきたく存じます……」


 家臣たちが必死の思いでカンセスを説得する。

 カンセスも、自分の命だけならまだしも、我が子の命が危ないと思うと、降伏という手段を選ぶのか迷いが生じた。


 そんな時、沈黙を続けていたトーマスが口を開いた。


「……もう打つ手がないというのは、まだ分からないんじゃないかと思いますぜ」


 その場にいた全員がトーマスに視線を向けた。


 期待を込めた視線を向ける者もいれば、もう少しで説得できたのに余計な口を挟むなと、迷惑そうな視線を向ける者もいる。


「何か手段を思いついたか?」


 カンセスが質問をした。


「確実に成功する作戦ではないですが……上手くいけばスターツ城を取り返せるかも知れねーです」


 トーマスがそう言うと場がざわついた。


「倍以上の軍勢が守っているスターツ城を、どうやって落とすのだ?」


 作戦を淡々とトーマスは説明した。


 トーマスが語るとざわつきは大きくなっていく。

 とんでもなく無謀な策だが、トーマスならもしかしたら成功させるかもしれない。そんな作戦だったからだ。


「俺がこの作戦に失敗したら、カンセス様は降伏してください。まだあなたは生きてなきゃならない人材だ」


 カンセスは少し躊躇って頷いた。


 それを見た後、トーマスは起死回生の作戦を決行する準備を始めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ