第5話「旅立ち」
「今だ!」
「おおお!激流波!」
あれから1カ月後。俺は完璧に魔法を習得した。
あ、激流波ってのは手からビームみたいに水を出す技の名前です。
「うむ…魔法の制御は完璧じゃな。もう特訓の必要はないじゃろう」
「まじっすか!」
「まじまじ大まじじゃ。さっさと家に帰るぞ」
「サーイエッサー!」
「ハジメ。わしから提案があるんじゃが」
「?なんすか師匠」
「お主、魔法師団に入団せんか?」
魔法師団。時々師匠から聞いた言葉だが詳しく聞いたことはない。特訓が厳しすぎたからね。そんな余裕ないからね。
「魔法師団って何なんですか?」
「魔法師団というのは魔法を使って仕事をする集団の事じゃ。魔物を討伐したり生活環境を良くしたりしてお金をもらうんじゃ。」
「そんな仕事があるんすね」
「魔法の制御も完璧になったことだしそろそろ自立すべきじゃと思うんじゃがどうか?」
あれ?確か記憶が戻るまで居候させてもらえるんじゃなかったけ?
…まぁ記憶喪失って半ば嘘みたいなもんだしこれ以上師匠に迷惑かける訳にはいかないしな
「分かりました。魔法師団に入ろうと思います」
「うむ。魔法師団に入るには王都で入団試験を受けて合格せねばならんのだが…お主なら余裕じゃろう」
「試験ってどんな事するんですか?」
「魔法の威力・精度・応用力を見る。」
威力・精度・応用力か。なら余裕だな
「試験っていつあるんですか?」
「明後日」
「は?」
え?今この人なんて言った?
「い、今なんて…?」
「試験は明後日じゃ。今日中に出発するから早く荷造りしろ」
「早く言えよ!」
この人のこういうとこほんと嫌いだ———
「今までありがとうございました。」
その日の夜、俺は荷造りを終えて馬車に乗る直前に師匠にお礼を言った。
「うむ。この1カ月間結構楽しかったぞ。住む場所はわしが昔住んでいた家を使うといい。さっき渡した紙に住所書いとるぞ」
「ほんと何から何までありがとうございます」
名前も知らない俺を拾って1カ月間色々な事を教えてくれた師匠には感謝しかない。
「…最後にいいか、ハジメ」
「なんですか?」
「お主は強い。わしの特訓を乗り越えたんじゃ。王都でも自信を持って生きろよ」
「…はい!」
「何かあったらいつでも帰ってこい…っともう時間じゃな。それではいってこい!」
師匠がそう言うと馬車が動き出す。
「師匠!さようなら!」
師匠は何も言わず手を振ってくれていた。その姿を見て泣きそうになる。
「よし!頑張れ俺!」
そして—————
ハジメの本当の冒険がここから始まる。
〈第5話「旅立ち」END〉