第2話「ハローニューワールド」
「最悪だ」
目がさめると俺は草原のど真ん中に倒れていた。え?ここがどこかって?知るかそんなこと。
「これあれか。ひょっとして異世界召喚とかいうやつか。」
瞬から借りた小説で見たことがある。引きこもりの主人公が異世界へ飛ばされる話だった。
アニメ好きな人間であれば、喜ぶべき状況なのかもしれないがアニメは見ないハジメにとっては喜ぶどころか焦るべき状況であった。
「受験どうすんだよ…てかそれ以前に重大な事に気付いた」
そう。苗字が思い出せないのだ。日本での記憶の大半は覚えているのに自分の苗字だけ覚えていないのである。
「あーもうどうすんだこれ。終わったわ俺の人生」
しかもなんか手の甲に「青い本のタトゥー」がしてあるし。一部記憶が飛んでるからなんとも言えないけど俺こんなのした覚えないよ?
「…しゃーない。ここでじっとしててもな」
行くあてはないがひとまず動こうとした瞬間だった。
「おうい、大丈夫か?」
「え?人———?」
「このご時世に草原で倒れておるとは珍しいもんじゃのう」
いきなりじいさんが話しかけてきた。…いい機会だ、色々聞いてみよう。
「あのーつかぬ事をお聞きしますが…ここってどこなんですかね?」
「どこって…ここはグラン王国だが?」
グラン王国?なにそれおいしいの?どうやらここは異世界で間違いないらしい。
「…お主、すごい魔力量じゃの。魔法師団か?」
ん?魔力?魔法師団?やばい分かんない事だらけだ。ここはもう正直に言って助けを求めよう。
「あの、驚かずに聞いてください。実はおr…」
「記憶喪失か?」
「…え?なんでわかんの?」
「勘じゃ」
勘かよ。凄えなこのじいさん。
「そうなんです。実は俺自分の名前だけ覚えてて苗字は忘れるし、目覚めたらここにいるし…」
「…なるほどのう」
記憶喪失だということをもう少し疑うもんかと思ったが意外にもじいさんは全く疑わずハジメの話を信じた。
「あの…俺が記憶喪失だって事疑わないんですか?」
「目を見れば嘘をついているか分かる。お主の目は濁ってない、まっすぐな瞳じゃ。それだけで信じるには十分じゃよ」
このじいさんなんかかっこいいな。
「お主、どうせ飯も食ってないんだろう。この先にわしの家があるからそこでしばらく休んでけ」
「い、いいんですか!」
「構わんぞい」
やっべ、このじいさん超いい人だ!惚れそう!俺は迷う事なくじいさんについていく事にする。
「そういえば名前聞いてなかったの。」
「あ、俺はハジメです。じいさんの名前は?」
「わしはクザン。クザン=ミカヅキじゃ」
〈第2話「ハローニューワールド」END〉