第1話「青い本」
「暑い……」
俺の名前は柄井ハジメ。都内の高校に通う高校3年生だ。受験生である俺は夏休みの真っ最中にもかかわらず、図書館にこもって勉強していた。
「暑すぎんだろ…エアコン効いてんのかここ」
「ハジメが暑い暑い言うから余計に暑くなるだろ」
こいつは俺の友達の瞬。小学校の頃から一緒にいる俺の親友みたいな奴だ。
「瞬は志望校決めたの?」
「うん。明王大学にするよ」
「まじかよ。あそこちょー名門じゃん」
「頑張らなくちゃね。ハジメはどーすんの?」
「まだ決めてない」
こんな感じのいかにも受験生な会話をしながら毎日勉強を進めていた———
そして数時間後。
「飽きた。本読む」
いいのか受験生。そんな余裕ないだろ。
「俺本取りに行くわ。瞬はどうする?」
「僕はまだ勉強するよ」
「おっけー」
そう言うと俺は席を立った———
「何読むかな…やっぱ漫画かな」
本を取りに行こうと本棚の近くをうろうろしている時だった。
(……こっち…)
「ん?なんか声がするような…?」
何か声が聞こえてくる。
「おいおい、やめてくれよ。俺は心霊系は得意じゃないんだ」
(……こっちに来て…)
やはり聞こえてくる。あっやばい変な汗出てきた。
「あのー…大丈夫ですか?」
「うぉう!びっくりしたぁ!」
いきなり話しかけてきたのは図書館の司書さんだった。俺は思い切って聞いてみる。
「あ、あのーなんか声聞こえませんか?」
「え?何も聞こえませんよ?」
あれ?この人には聞こえてないのか?…というか司書さんが「こいつ大丈夫か?」とでも言いたげな瞳でこちらを見ている。
「あ、大丈夫です。心配をおかけしてすいませんでした」
「いえいえ、最近熱中症が流行っているので気をつけて下さいね」
そう言い残して司書さんは去っていった。
「…やっぱり気のせいだったのかな」
そうだ。きっと勉強のし過ぎでおかしくなってたんだ。気のせいで違いn…
(こっちへ来て…早く…)
なんだろう、さっきよりもはっきりと声が聞こえてくる。
(早く…来て…こちらへ…)
「だあー!わかった行きゃいいんだろ!」
声に導かれるまま、本棚を移動すると突然声が聞こえてきた。
(ここ…あなたなら…きっと…)
そう言い残して声は聞こえなくなった。
「ここ?ここってただの歴史書の棚じゃん」
歴史書の棚を物色すると一冊の本に目を奪われた。
「なんだこれ…?」
それは真っ青な本だった。タイトルも作者も書かれていない、青い本。
「中は…魔法陣?それになんだこの文字。全く読めねぇ…ってうお!?」
なんと本が急に光り出した。
「エエエ!?なんだこの展開!てかやばい吸いk…」
そこまで言いかけて俺はこのわけの分からない青い本に吸い込まれた。消えかけていく意識の中で声が聞こえる———
(あなたなら…きっと世界を救える…)
そして俺の意識は完全に闇の中へ消えた。
〈第1話「青い本」END〉