Act0-0
大幅改稿しました。
神々が見捨てし我ら
されど地底にて謳歌する
【序】
黒暦53024年。
神々が天に隠れて久しいこの星は3つの種族が繁栄を築いていた。
アンヘルとサイボーグ、そしてアンドロイド。
【大戦】を経たこの星には、最早有機生命は存在せず。
この星は機械生命の楽園と化していた。
そんなこの星の片隅。
アンドロイドであるアラヤは天を見上げる。
そこに空はない。
あるのは岩盤でできた天井。
極寒の地表では機械ですらも活動が難しい。
だから地底に街を築いて早数万年が経った。
『奇跡の日』そして【大戦】
神は、我らの所業を嘆き、天へ隠れたらしい。
数年で世界は闇に覆われ、極寒の地は有機生命を根絶やしにした。
かつて、この星は緑の美しい、青い星だったそうだ。
最早見る影はないけれども。
そして、そんなことは関係ないとばかりにアンドロイドたちは地底で生を謳歌している。
アラヤもそんな一人。
長身とは言い難いが決して低いわけでもない体に纏うのは黒いスーツ。
癖のない黒い髪に、黒い瞳。
少々幼い顔立ちで、気だるげな表情をしている。
一応男性型のアンドロイドである。
周りのアンドロイドと見比べるとかなり貧相で軟弱な体格だが。
【工場】で生産される彼らアンドロイドは見た目も千差万別である。
製造されている以上、ある程度整った顔立ちにはなっているが……基本的には造形はランダムな為ごくまれに壊滅的な容姿もでないこともないのだが……老若男女問わず幅広い種類が製造される。
が、製造された時点で彼らは成人であり、それ以上見た目に成長も老化もない。
子供型は永遠に子供のまま。老人方は生まれた時から老人の見た目なのである。
アラヤ自身も100年以上稼働している。
アンドロイドの寿命はわりと長命で、100歳程度はまだまだひよっこの括りだが。
そんなアラヤはさっきからずっと掲示板を眺めていた。
街のほぼ中央に位置する役所の、すぐそばにある大きなディスプレイ。
【ルマトーントピックス】
と書かれたそれは、この町、ルマトーンにまつわるあらゆることが書かれている。
今日の天気(地底の町とはいえ環境システムも整ったこの町には雨も降るのだ)から配給時間。
それにアンドロイド達にとって最も重要な【本戦】と【リーグ】のスケジュール。
【本戦】も【リーグ】も、【戦争ごっこ】の種別である。
【本戦】は他種族と
【リーグ】はアンドロイド同士で争う。
【戦争ごっこ】は所謂ゲームのようなものだ。
専用フィールド内で専用装備を用いて戦争のようなものを行う。
4人で1チームを組み、4人vs4人で撃ちあう。
敵から一定のダメージを与えると倒れた扱いになりその場で動けなくなる。
全滅する前に見方から回復を受けれれば復活できるが、全滅すると試合終了。
制限時間内に全滅させるか、生き残った数が多い方が勝利というルールだ。
そんなルールだから戦争という意識はほとんどない。
ゲーム、という感覚だろう。
だが、この【戦争ごっこ】。ごっことついているがまさしく戦争。
アンドロイドとアンヘル間では政治利用さえされているのだ。
余談だがサイボーグは個体数も少なく【戦争ごっこ】には参戦しない。
が、【戦争ごっこ】で使われる兵装の多くはサイボーグが作っている。
さらに余談だが、【戦争ごっこ】は正式名称ではない。
正式名称ではないのだが、最早誰も知らないので【戦争ごっこ】で通されているのだ。
なかなか寂しい話である。
話を戻すと、アラヤは掲示板を見ていた。
【戦争ごっこ】の【本戦】、そのタイムスケジュールを見ていた。
アラヤは【本戦】しかしない。
【リーグ】も、それはそれで楽しいのだろうが、アラヤは戦うことよりアンヘルに対する興味があった。
そしてアンヘルに接触できるのは【本戦】以外にないのだ。
ルマトーンは、隔絶された街である。
それは、他の街も同じことなのだが。
その街で完結しており、別の街と交流はほぼない。
アンヘルは-13番街-と呼ばれる場所から出ることはなく。
アンドロイドも己の製造された【工場】、その周辺に築かれた街から離れることはない。
だから、交流できるとするなら【本戦】のみなのである。
「……あー……今日は負けが込みそう……」
心底憂鬱に、アラヤが呻く。
タイムスケジュールで知らされた開催フィールド。
すべて、スカ。
アラヤの苦手なフィールドだったのだ。
「どうする……? 今日はやめとくかぁ……?」
後頭部を掻きながら自答自問。
まぁ、口にしていてもやることは一つなのだが。
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2018/09/17 大幅変更しました。主に1人称視点→3人称視点へ変更
1人称視点のやつはカクヨムに投稿しなおしましたので、どうぞそちらへ。