魔眼少女第2章「生者の虚構-承」
いよいよ魔眼少女の掲載を始める時がやってきました!
本日の8:00〜18:00までの短いあいだですがどうぞご覧下さい
詳しい詳細は後書きにて
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生者の虚構-承
火曜日
私は澪さんの勧めもあってこの1週間は普通の女子高生として過ごすことにした、とは言っても私が今向かっているのは病院である
せっかく本来の私を晒け出せる人と出会ったのだから会いに行かない手はない
「おはよう山崎さん、体調は大丈夫?」
「大丈夫だよ、それよりもその山崎さんって呼び方他人行儀な感じだから呼び捨てでいいよ」
「じゃあおはよう咲、ところで林堂さんの両親は今日も朝から来てるみたいね」
「それに比べてうちのお兄ちゃんっていったら今朝来たと思ったら「次に来られるのがいつかわからないからもし着替えがなくなったらお嬢ちゃんに頼んどくぜ」なんて言っちゃってさ」
そんなことを言っていたのか、山さんは私の連絡先を知らないはずだけどどうするかな、だけどそんな後先考えないのは山さんらしい気はする
「そういえば咲って山さんと二人暮らししてるの?」
「そうだよ、父実家が田舎の山奥で少しでも都会に行きたかったんだ、でも父親が亡くなってから家に余裕が無くてねそれでお兄ちゃんが住んでるこの街にある高校に進学したの、神奈は元からここに住んでるの?」
「わたしは色々あって家族が亡くなって今は叔母さんの家に住んでるわ、昔はここから少しだけ離れた場所に住んでたの」
彼女はそれを聞くと表情を変える
「なんかごめんね、昔の事思い出させちゃったみたいで」
「構わないわよ、最近いろんな人に会って家族について考えて思ったのよ、忘れるんじゃなくて一緒に前に進めばいいって」
「そっかそういう考え方もあるんだね、ところでさ話が変わるけど神奈って剣道でもやってるの?」
「やってるわよ、けどなんで分かったの?」
「昨日助けてもらった時に投げてたのって鞘だったでしょ、だからそうなのかなって」
流石時期剣道部の部長は確実と言われているだけある、あの状況であれが鞘であるなんてそうそう気づく事ではない
「それだけで気づくなんて流石ね、まあやってるとは言っても事件があってからは誰とも手合わせしてないんだけどね」
「じゃあ私と手合わせしない?最近ずっと寝てるから体がなまっちゃってさ」
「ついこないだ刺されたばっかりなのにもう運動しても大丈夫なの?」
私の思い出せる限りでは彼女は相当深くナイフで刺されていたはずだ、いくら心臓を貫かれなかったとしてもまだ運動なんてできる体ではないだろう
「大丈夫だよ、傷の割に治るのが異常に早くてまるで刺されてからも体が正常に機能してたみたいだって医者に言われたから」
「それってあなたの治癒能力が高過ぎたんじゃない?」
私はからかうように話す
「医者もそう言ってたけど昔怪我した時は全然治らなかったんだよね、やっぱり剣道部で毎日修行してるからかな」
修行が治癒能力と結びつくあたり彼女はやはり山さんの妹だ
「とにかく運動しても大丈夫ってことね、なら明日にでも手合わせしない?」
「了解、医者の許可も貰わないといけないし明日でちょうどいいや」
2人はしばらく談笑を続けた、神奈と咲は似た者同士だったので随分と長いこと話してしまった
「それじゃあ私はそろそろ帰るとするわ、流石に長居しすぎたかしら」
「そんな事ないよ、また明日も楽しみにしてるよ」
神奈は病室を出て廊下を歩き出す、隣の病室からはまだ影が見えた
「林堂さんの両親もずっといたのかな」
一言呟いて彼女は病室の前を通り過ぎる
その時看護師が妙な会話をしているのが耳に入る
「昨日の夜に地下の霊安室にご遺体を置きに行った人が言ってたんだけどね、何故か棺桶の数が合わなかったらしいのよ」
「そんな怪談話してないで早く仕事しなさいよ、大体霊安室にあるご遺体の数なんていちいち数えられるはずがないじゃない」
「確かにそれもそうよね、さては並木さん私が怪談話が苦手なの知ってて騙したなー」
霊安室の遺体の数が合わない、少しだけ気になったので聞いてみることにした
「あのー、今話してた並木さんってどちらにいらっしゃいますか?」
「今の話聞いてたのね、彼女なら受付にいると思うけどあんなの唯の怪談話よ、それか並木さんおっちょこちょいだから数え間違えたのかも」
「教えてくださりありがとうございます」
私は早速受付へと向かうと並木さんであろう女性を視つける
「すみません、霊安室について他の看護師さんから話を聞いたんですけど詳しく教えてもらえませんか?」
「昨日の夜に運悪くジャンケンで負けてしまった私は病院の見回りをしてたの、それで最後に別館にある霊安室を見に行ったら使われてないはずの棺桶が閉まってたのよ!?」
彼女の話に歪みは一切なく確かな事実を伝えていた、だったら私がすべき事は彼女を信頼し為すべきことを探すまでだ
自らの話を聞いて驚いている並木さんを私は詳しい話を聞くために落ち着かせる
「一回深呼吸して落ち着きましょう、もう大丈夫ですか?」
「はい取り乱してしまって申し訳ございません!」
「いえいえ、それで私が聞きたい事なんですけど何故遺体の数が合わないと気づいたんですか?」
「昨日の昼にご遺体を運び込んだ時にはまだ空きが10はあったはずなのに夜中に見た時はそれが6に減ってたのよ、それなのに何回言っても信じてもらえなくて」
今の話をしなかったら信じてもらえなくても仕方がないだろう
「私は信じますよ、でも霊安室ってそんなに狭い場所なんですか、それとも空きが数えられる状況になることなんて最近ありましたっけ?」
「2週間前にビル爆破事件があったでしょ、それで身元不明者のご遺体が大量に出たせいでうちの病院にも協力の要請が来たのよ」
隣町で起きた爆破事件、確か死傷者は確認できるだけでも千人以上だったはずだ
それだけの大規模な事件だったのにもう世間の目からは遠ざかってしまっている、時間の流れというのは残酷なものだ
「しかもうちに送られて来たのは損傷が酷かったご遺体ばっかりでね、お陰でこっちも夢に出そうよ!」
「お話を伺わせていただきありがとうございました!」
またヒートアップし始めたのでそろそろ退場とさせていただく
私が早足で病院を出ようとすると視線を感じる
「あれっ林堂さん?」
どうやら壁の陰からこちらを見ていたようだが私が話しかけようとすると走り去ってしまった
「何か言いたいことでもあったのかな?」
もしかしたら昨日の話の続きかもしれない、それなら本人から切り出してもらうまで待った方がいいだろう
そう思い私は病院を出ていく
同時刻、神奈坂ショッピングモールにて
「アイスコーヒーを一杯よろしく」
澪は店員が去っていくと防犯カメラを眺める
「何か残ってるといいんだけど....」
彼女の眼に映っているのは神奈と南波紫苑がカフェで話している様子だ
情報の魔眼はその情報を記録しているものを媒介する事でも効果を発揮することができる
「あれっあの人...」
神奈の叔母である未南雲和葉が遠くのテーブルから神奈達の様子を伺っていた
しばらくすると南波紫苑は意識を失い神奈が立ち去っていく
和葉はそれを確認すると同時に席を立つ
「あの人が一枚噛んでないなんて言うには状況が悪すぎるわね」
だが彼女は一度だけ彼らの方をちらりと視ただけで他に怪しいそぶりは一切見せていない
単に神奈を見守っていただけなのかそれとも南波紫苑をけしかけたのは彼女なのか、現状では判断しかねるが澪が疑っていたのは後者だった
その後南波紫苑が意識を取り戻すとしばらく何もせずに席に座っていた
「何も視えないのは何も無いからかそれとも隠されているか....」
隠されているとしたら可能性として思い当たるのは未南雲家の周囲の状況を作っているであろう人物、つまり和葉だ
だが肝心の和葉自身は見えているのだ
「ダメね、何かわかると思ったけど余計に混乱するだけだわ」
彼女はコーヒーを飲みため息をつく、
その日の夜中
トントン、廊下を響く足音のような音で彼女は寝覚めた、寝返りを打つと外し忘れていた髪留めが頭に当たる
「まだ2時じゃん....誰が歩いてるだろ...」
咲は眠たい目をこすり廊下を見る、すると異様な光景が目に入る
「えっ....」
咲を思わず絶句させたそれは人影だった、だがそれは唯の人影ではなく上半身だけ浮いていた
人の形をした幽霊ならまだわかるがなんとも言えない形状をした影は異質なものを感じる
それも一つや二つではなく次々に廊下を通り過ぎていく
咲はきっと夢だと願い勢いよく布団を被って目を瞑る
彼女は昔からお化けだけは苦手だった、どんなに剣道に長けていてもこの世のものではないものは倒せないと彼女は思っていた
(いくら病院だからってお化けなんて出るわけない!きっと夢に決まってる!)
心の中で何度も繰り返すが無意識ははっきりと真実を見出している
これは現実である、だからどれだけあり得ないものでも受け入れなければならない
彼女は勇気を振り絞りドアを開ける、そしてソレを見て血の気が引いた気分がした
かつて人だったもの、その虚構がそこにはあった、そして彼女の意識はソレを受け入れられずにショートする
しばらくして廊下で倒れた彼女を誰かが病室内に運び込む
「怖い思いをさせてごめんね....」
そうして夜は更けていく
水曜日
朝起きて目が覚めたとき天上が見えてホッとした
「よかった、やっぱり夢だったんだ...」
あんな恐ろしい夢を見るなんて私は狂ってしまったのだろうか
まだいまいち整理しきれていない意識を呼び起こすために顔を洗いに廊下に出ようと扉を開ける
「えっ...」
髪留めが落ちていた、そういえば昨日の夜に外し忘れてたっけと思おうとする
だがそれは夢であったはずだ、悪夢は確かそこにあったのだそしてそれが意味するのは人の世にあってはならないものがこの病院に存在するということだ
それを探そうとする気力どころかまだ認めたくない気持ちの方が込み上げてくる
手に力が入らなくなり髪留めをまた落としてしまう
「もう一回寝ようかな」
一度寝て起きたら別の流れに進むかもしれない、そんな儚い夢を抱いてもう一度眠りにつく
トントン、私はドアをノックしてから中に入る
「あれ、もしかして寝てた?」
咲は目を擦りながら神奈に話しかける
「疲れてたからかな、二度寝しちゃった」
「これ廊下に落ちてたけど咲のだよね?」
咲はぼーっとしている、変わってなんかいなかった、時間は一本の流れで確かに繋がっていた
「あれ、違ったっけ?」
「いや私のだよ、ごめんねぼーっとしちゃって」
咲はそれを受け取り笑顔を作る
「昨日医者の許可をもらったよ、早速手合わせする?」
「いいわよ、病み上がりだろうが手加減はしないわ」
2人は庭に出る、あらかじめ手合わせをする事は病院に話しておいたのでその為のスペースを取っていてくれていた
審判員には並木さんが付いてくれている、どうやら彼女も剣道経験者のようだ
「どうやら観客もいるみたいだね、これは負けるわけにはいかない」
数人の見物人の中には林堂さんの姿もあった
「同意見よ、遠慮は一切いらないわ全力できなさい!」
礼をして三歩蹲踞する
「始め!」
咲が先に動く、だが後の神奈の方が早い
「面!」
旗が上がる、神奈の勝利だ
「強いね神奈は、思ってたよりもずっとね」
「そうじゃない、自分でも気づいてるでしょ、何かあったの?」
「剣からかそれとも視えたのか、それは聞かないけどよくわかったね」
「これでもあなたの試合は何度か見たことがあるのよ、今のあなたは病み上がりの影響もあるのだろうけどそもそもの太刀筋に迷いが見えるわ」
「ごめんね実は剣道どころじゃないんだよね、手合わせはまた後日でもいいかな?」
「もちろんいいわよ、並木さんもまたお願いしていいですか?」
「もちろんよ、最近は疲れる事ばっかりだからこういうのもたまにはいいわね」
彼女は昨日よりもぐったりした様子で答える
「また何かあったんですか?」
「そうなのよ、昨日の話の続きみたいになるんだけどね、今日の朝に念のため看護師で確認しておこうって話になったの、それで霊安室を見に行ったら空きが明らかに増えてたの、でも空きなんて覚えてたのは私だけだったからまた私の勘違いだって言われたのよ」
それを聞くと咲の顔が明るくなる
「私見たんです...夜中に廊下を通るいくつもの怪しい影を」
「ちょっと場所変えようか、患者さん達が聞いたら怖がるわ」
場所を咲の病室に移し並木さんにも来てもらう
「それでその影の正体は見たの?」
「見たよ、てっきり幽霊かと思ってたけど死体だったんだね安心したよ」
私は自身の思考回路が停止したのを自覚するまで数秒ほどかかった
「安心ってどういう事?」
「幽霊なら剣道で倒せないけど死体が動いてるなら止められるじゃん」
「呆れたわ、あなたゾンビとやり合うつもりなの?」
「当然だよ、今晩は忙しくなりそうだね」
それを聞いて並木さんも賛同する
「いいわね、それなら私が院長から許可をもらって霊安室の鍵を開けといてもらうわ」
「あれっ霊安室の扉って普段は閉まってるんですか?」
「そうよ、外側からだと鍵がないと開けられないようになってるわよ」
「だとしたら誰が鍵を開けたの...」
「死体でしょ」
「死体に決まってるじゃない」
2人は同時に答える、この人達はゾンビが現実にいるとでも思っているのだろうか
「誰かが死体をゾンビに見せかけて遊んでいただけでしょう?2人とも熱くなりすぎよ」
「じゃあ今夜12時に病院の前に集合ね、私は仕事があるからもう戻るわ」
手帳を広げてメモをとると並木さんは早足で去っていく
「じゃあ昨日見た死体について詳しく教えてもらえる?」
「ここまで気合い入れといてなんなんだけど気絶したショックでかドアを開けた後のことは殆ど覚えてないんだよね」
「えー、でも窓から見た景色は覚えてるんでしょ?」
「確か最初に通った影は普通の人の形をしててその次が...」
彼女の口が止まり顔が青ざめる
「浮いてた...ゾンビのはずなのに」
「やっぱり誰かが死体を動かしてるんでしょう?」
「そうなのかな、まあ幽霊じゃないならどっちでもいいや、その次は足はあったけど上半身が少し妙だったかな、その後に続いた影も人にしては少し変なところが多かったかな」
顔を青ざめさせたと思ったらすぐに調子を取り戻す
「それなら霊安室にある遺体で間違いなさそうね、爆破事件に巻き込まれた遺体は損傷が激しいって並木さんが言ってたから」
「問題は誰がどうやって死体を動かしたかだけどそればっかりは直接見ないとわからないわね」
「それじゃあまた今夜、私はそろそろ帰るわね」
ドアを開けると林堂さんが前に立っていた
「ごめんね立ち聞きしてたわけじゃ無いんだけど、山崎さんに謝りたくて」
「そう、私はもう帰るから2人で話すといいわ」
神奈は廊下を歩き去っていく
部屋で残された2人は静かに口を開く
「ごめんね、謝っても許される事じゃないのはわかってるけどそれだけ伝えたくて」
彼女はそれを伝えると部屋を出ようとする
「ちょっと待って、許されないとダメなのかな?」
「えっ...」
「誰だって生きてれば罪を背負ってる、私だって同じ事だよ」
「何言ってるの...?」
「私の父親は過労死で死んじゃったんだ、私家の事になんて一切興味が無くてずっと都会に住んで成功するんだって一人で張り切っててさ」
「それは関係ないんじゃ」
「最初は私もそう思ってたよ、でも葬式で父親の同僚が話してるのを聞いちゃったんだよ」
-回想-
同僚達が酒を交わしながら話している
「山さんも気の毒だよな、娘さんをちゃんと独り立ちさせたいっていつも言ってたのによ」
「せめて娘さんが独り立ちするのを見てから旅立って欲しかったよな」
「社長も可哀想だよ、山さんが無理言って仕事増やしてもらってたのに世間じゃ働かさせ過ぎた社長の罪なんて取り上げられてさ」
-回想終了-
「私のせいなんだよ、だけど今更謝っても許してくれる人はもういない、だから私は罪を背負う事にしたんだそれが今の私が生きる意味だって自分に言い聞かせてね」
「それは山崎さんのせいじゃないよ!」
彼女は珍しく声を上げる
「人生は始まりと終わりが決まっててどれだけ間で足掻いても終着点は変わらない、だから山崎さんは悪くなんかない!」
咲は突然の態度の変化に戸惑う
「ごめん、訳わからないよね...」
「たしかにわからないね、でも愛生衣の気持ちは伝わったよ、だからこそそっくりそのまま返させてもらうね愛生衣は悪くなんかないよ」
彼女はその一言を聞くと黙って病室を去る
「愛生衣どうしちゃったのかな....」
以前からよく一緒にいたがあそこまで感情的になったことは一度もなかった
咲は不安を抱きながら夜に備えて眠りにつく
どうも新作を思いついてから旧作が踏み止まっていたダメ作者のつばさです
それでも何とか「魔眼少女」を書き終えることが出来ました
そして少しでもこの小説を色んな人に見てもらうためにある企画を思いつきました
それこそがアニメの一挙放送ならぬ、小説の一挙掲載です!
というわけで本日の8:00〜18:00にアニメよろしく30分に一話投稿致します
またTwitterで#魔眼少女で感想を呟いてもらえれば作者が突撃しに行きます!
是非色んな方と感想を言い合ってもらえればと思います
作者Twitter https://mobile.twitter.com/atorietsubasa
時間ピッタリに上げられそうなものは予約掲載でする都合上後書きはテンプレのみになります




