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魔眼少女  作者: つばさ
25/25

魔眼少女「運命の岐路-結」

物語はついに終わりを迎えます、彼女達の戦いの結末をその眼で確かに見てもらえればと思います


運命の岐路-結

「あいたたた、ちょっと何よこれ」

私は気がつくと地下牢のような場所で両手を鎖に繋がれて拘束されていた

どうにか脱出を試みようとするが鎖がガチャガチャと音を立てるだけで何も変わらない

「無駄じゃよ、その鎖は私の魔眼の力で出来ておる、か弱い少女が破れるほど柔くはない」

その声、その姿、初めてあった時となんら変わらないが今は見えるものがある

「ロブルス、いえ魔眼奪い、あなたは何の為にこんな事をするの!」

「世界の在り方を変え全ての人々を救済する為じゃよ、そしてそれには絶対的な力が必要じゃ、誰もが歯向かうことすら諦めるほどのものがのお」

「家族を殺され大切な人達を傷つけられてここまでやって来た、その結末が救済ですって?馬鹿を言うのもほどほどにしなさいよ」

「私が何を信じているかなどお前さんならお見通しじゃろう、その為に隠匿の魔眼の効果を無くしておるんじゃなからな」

「隠匿の魔眼...まさかあんた人の魔眼を奪って自分のものにしてたわけ?」

「奪うと言うのは元来そう言う意味じゃろう」

完全に盲点であった、眼が2つしかないからって魔眼の力を2つしか持てないなんて誰も言っていない

「それで私を誘拐したのに魔眼も奪わずに捕まえてるのはどういうわけかしら?」

「何も私だって人殺しがしたいわけではない、救済を認めて私の元で新世界に尽くすのならその眼を奪うだけで解放しよう」

「そんなのは絶対に認めないわ」

「もし私の元につけば家族を蘇らせるとしたら?」

「えっ...」

「魔眼の力ならそれも可能であろう、良い条件だと思わんかね?」

彼は私に仲間を裏切れば過去を取り戻させてやると言っているのだ

「確かに最初は過去を清算する為に魔眼奪いを追ってきたわ、でもそれは仲間を裏切ってまですることじゃない、今は信じてくれてる人達の為戦う、それにあなたは間違ってるわよ」

「間違いなどあるはずがない、私が数百年かけて辿り着いた結論をお前さんが理解出来るはずがなかろう」

ロブルスは天を仰ぐ

「世界は変わり続けやがて人々は神にすら到達するかもしれん、だが根底は何も変わらんのじゃよ、今も昔も輝く功績の裏にはその為に誰もが仕方がないと思い切り捨てた物があるんじゃ、そして捨てられた物達はやがて自らの運命を嘆き叛逆する、結局やっていることはいつの時代も不幸のなすりつけあいじゃ」

幸福の条件は人によって違うが誰もが絶対条件とするのは不幸で無いことだ、そんな屁理屈のような結末が現実なのだ

どんな人であれ人として生きるうちには不幸の中に幸福は見出せない、それを彼は嫌ったのだ

「だからこそ私は全ての魔眼の力でこの世界を救済する、魔眼など、争いなど無い真の救済がある世界を私はこの手で創り出すのだ!」

「魔眼があるよりかは無い方がマシなのはもっともな意見よ、だけれど自分の事も救えない奴が世界なんて救えないのよ、だから私は世界(みらい)よりも(いま)を選ぶわ」

誰もが受け入れるどうしようもない理不尽を

無くす為に彼は誰もに受け入れない悪となったのだ

そんなのはおかしい、そんな道理が曲がり通るような世界を彼は創ると言うのならそれは私が止める

「死とは誰もに訪れる共通の終着点(けつまつ)じゃ、何度も他人の幸せを願いそうなるようにと最善を尽くしてきた、だが救えた者たちはほんの一握りだけだった、どれだけの善行を重ねようと、どれだけの努力をしようと世の中には救えぬ者がいるのじゃよ」

幸福は誰もに平等には訪れない、だからこそ彼は誰もに平等に訪れる「死」、それこそが人の生きる意味だと悟った

それは死を憎み、恐怖した故の所存か

或いはロブルスの長すぎる生がそれを悟らせたのかもしれない

「それが何だって言うのよ、今のあんたがやってるのは救えない奴も救えたはずの奴も全部諦めてるだけじゃない!」

神奈の叫びもロブルスには全く届かない

「絶望を知らぬ者は皆そう言う、そして知った後に思うのじゃよ、何が善だ人はもとより生まれた時から悪だった、とな」

「そんなのはあなたの勝手よ、この世界が絶望したとしても希望を持って生きてる人はいるわ、たとえ自分が潰えたとしてもその希望は誰かに繋がるって信じてる人がいるのよ!」

「ならば自分の目で確かめたらどうじゃね、その希望すらも誰にも繋がらなくなる瞬間をのお」

その眼が輝く、すると私の眼の前にどこかの景色が映される


優香は1人パンドラに向かって走っていた、あの時は確定した未来からパンドラへの正確なルートを知った

しかし今回はそうもいかない、どうするべきかと悩んでいる彼女の元にそれはやってきた

宙に浮くそれは幽霊と言うのは簡単だがとてもじゃないがそう呼んでは幽霊が可哀想なほどそれは変質していた

「勿論私に非があるのは認めるわ、そもそもあなたを殺したのは私のようなものだもの、でもねその在り方はやり過ぎじゃないかしら神倉隼人さん?」

通常の幽霊は現世に長く留まりすぎることで悪霊となる、だが彼は違った恐らくロブルスが生きたまま殺された彼の魂を弄ったのだろう、黒い憎しみだけが彼を支配している

「神宮...優香!」

本来幽体の者が生者に触れることなどあり得ない

だから優香は一歩も動かずにただ哀れな男の末路を見ていた、その男の瞳に映る脳裏にありえない光景が浮かび上がる

その身を闇に包み込まれる、次の瞬間私の身体は黄泉の国へと誘われる

瞬間私はその身を一歩引く、すんでのところでのところで最悪の結末は避けることができた

「あなた悪魔に魂を売ったりでもしたのかしら?」

彼は何か異質な眼を宿している、恐らくはロブルスの入れ知恵だろう

「お前が俺を...!」

彼は懐に飛び込んでくる

「悪かったとは思ってるわよ、でもあなたもやり過ぎよ、自らの意思であんな事をしたらダメだわ」

眼が輝き時計の針が彼を襲う、だがそれは彼の身体を通り抜け地面へと刺さって消えた

「嘘でしょ、そっちは効くのにこっちはダメだって言うの?」

「お前は...俺が...殺す!」

男の眼は歪な輝きを放ち辺りの地形は崩壊する

「あなたの力は地獄の再現ってとこかしら」

地獄の中心で彼女は呟く

「黄泉の眼は全てを消し去る...、お前の存在も魔眼も何もかも無かったことになる!」

神宮優香(わたし)はまだ負けられない、親友の、私の名前を失うわけにはいかない!」

その時向かいの一軒家の屋上から声がする

「よく言った優香、ここから先は俺に任せろ!」

「紫苑!」

彼は屋上から跳躍する

「悪霊無勢が、優香に手を出すな!」

「黄泉へと落ちろ!」

奴の目が光る、だが同時に紫苑の目も輝く

翡翠色のそれはついこの間まで紫苑自身も気づいていなかった幻眼の力

紫苑の拳が亡霊を吹き飛ばす

「何故だ、お前の眼は...!」

「生憎こちらの力は別物でね、現実(こっち)(あっち)の境界を揺らがせてもらった」

黄昏時、それはこの世とあの世を繋ぐ不思議な時間、紫苑の黄昏の魔眼は持ち主の周囲の空間でそれを意図的に引き起こす

「お前もこちら側だろう...!」

ただ怒りだけを以て紫苑へと向かって来る亡霊に彼は告げる

「その過去は捨てた、今の俺が出来ることは精々大切な人を1人守るくらいだ!」

蹴りを食らって盛大に吹き飛ぶ奴を視た優香は気付く

「そっかあなたずっと止まってたのね」

現世に無理矢理引き戻された亡霊はこの存在を世界に否定されて消滅する、だが彼の魂はあの時からずっと止まっていたのだ

「あなたはきっと何処かで決めなくちゃいけなかったのよ、最初から運命の女神様が自分に微笑んでくれるなんて都合のいい事は無いわよ」

優香は眼を向ける、今なら視える、彼の身体をあの時に放たれた時計の針が貫いている

「俺は...!」

「もう休みなさい、縁があるのならまたいつかの黄昏で会いましょう」

針が砕ける、彼の身体は世界に蝕まれ徐々に光となる

「そうか...間違っていたのか...」

最後の最後に男は自らの過去を見た、ずさんで利己的でどうしようもないそれを見た彼は己が過ちを認め光となり消えた

「ふう、助かったわ、危うく二度と会えなくなっちゃうところだったわね」

黄泉に触れた彼女の身体はボロボロである

「そんな事には俺がさせない、立てるか?」

「見ればわかるでしょ、もう全身ボロボロよ」

「仕方がないな、よいしょっ」

紫苑が優香をお姫様抱っこする

「ちょっといきなり何するのよ」

「俺の眼の使用はどうやら身体に相当な負荷がかかるらしい、それに君の身体もボロボロもボロボロだ、今襲われたらたまったもんじゃないからな、一度退散するとしよう」

「それはいい考えね、ちゃんと運んでちょうだいね王子様」

「了解しましたよ王女様」

2人は黄昏の終わりを抜け出す、彼らの戦いは終わった、だがまだ夢の終わりは遠い



暗闇が世界を包み込み街の灯かりが消える中街灯のみを頼りに晴人達一行が橋の上を走っている

「もう少しで着くぞ、2人とも大丈夫か?」

「私は全然大丈夫だよ、愛生衣は大丈夫?」

「うん、修行したから」

ようやく橋を渡り終わると思ったその時、黒い影が鎌を持って飛び出して来た

「危ねえ!」

晴人が愛生衣を突き飛ばす、間一髪のところで刃は愛生衣を掠る

「どうやらケジメをつける時が来たみてえだな」

「私から行くよ!」

先手を取ったのは咲である、魔眼奪いを確実に仕留める為にもまずは様子見の一閃

「当然の如く避けるんだね、今の結構良い線いってたと思うんだけどな」

魔眼奪いが飛んだ先に待っているのは愛生衣

「私だってやれる!」

慣れない手つきだがこの短期間で素人からは随分成長したようだ

だが魔眼奪いはくるりと翻しその斬撃を避ける

「どうやらてめえはこっち側みたいだからな、遠慮なくぶちのめしてやるよ!」

晴人が蹴りを打ち込む、その一撃は鎌の鞘で

いなされるがようやくダメージを与えることが出来た

「これなら行ける!」

瞬間、地面に落ちた魔眼奪いは跳躍して晴人を吹き飛ばす

「何っ!」

そして加速して咲に鎌を向ける

「まだ終われないっての!」

剣先でそれを弾くと反撃に出る、だが魔眼奪いは急にスピードを上げて咲も吹き飛ばしてしまう

「絶望を、救済の為の絶望を!」

「絶望なんかで救われる人なんていない、魔眼の力解放するね」

数本の糸が魔眼奪いに向かう、これは彼を正しい道へと戻す道しるべである

「絶望の無い救済など上辺だけだ!」

低い声で唸ると更にスピードを上げて糸の間を縫うように避ける

「あれでまだ本気じゃ無いってか、一体どこまで強えんだ」

「3人で抑えればなんとか...少なくとも愛生衣の糸が当たれば勝機はある、愛生衣は後ろに下がって出来るだけ回避に専念して!」

それでも魔眼奪いの猛撃に耐えることが出来る時間も限られている、2人が動きを止めて愛生衣が攻める、そして魔眼奪いがそれを華麗に避ける

キリがなかった、だけどこちらは引けばやられる、あと1人だけ戦力がいたら...

「あっ」

そんなことを考えながら戦っているようでは当然集中力が切れるわけだ、正直これ以上打ち合いを続けるのも無理があった

眼の前に鎌が迫る、さっきから鎌で執拗に狙ってくるのは私に対してだけであった、きっと神奈と1番親交のある私を殺すことで彼女を絶望させようとしているのだろう

文字通り絶望的な状況で私の居なくなった後の世界のことを考えていた

神奈は魔眼奪いに勝てるだろうか、もし私の敗退のせいで負けたりなんかしたら仮に天国に上がれたとしても天国から地獄に自主移動しよう

愛生衣は私が居なくなっても大丈夫かな、お兄ちゃんが付いてくれれば問題はないか

その時背後がから声が響く

「何諦めてるのよ、修行の成果を忘れたわけ?」

沙彩の真剣が鮮血を吹く、魔眼奪いは腕を抑えながら後退する

「沙彩さん!」

「咲、戦い方がなってないわよ、相手がなんであろうとどんなに絶望的な状況でも常に集中して、死んでも相手ごと道連れにするつもりで戦いなさい!」

沙彩は剣鬼の如く斬りかかる、これが本気の沙彩さんなんだ

彼女は恐ろしいほどに強い、でも魔眼奪いも負けてない

鎌と剣が当たる、どちらが優勢かそれは素人でもわかるだろう、少しずつだけれど沙彩さんが押されている

助けたい、でも私達が入れるほどこの戦いのレベルは低く無い、実力の桁が違いすぎる

「どんな絶望の中でも集中する、きっと出来るよ咲ちゃん、晴人さん!」

「そうだったな、冷静になって集中する、それさえすれば見えるものもある!」

晴人も眼の力を解放する

止める、ただその一点のみに集中して力を放つ

歯車が現れる、それこそが彼の具現

魔眼奪いの周囲に現れた歯車は徐々に回転を弱めていく、そしてそれと呼応するように魔眼奪いの身体の動きが鈍くなる

「まだ救済は終わらぬ!」

歯車が軋む、晴人の力だけでは完全に止めることはできない

「それだけでも十分よ!」

沙彩が跳躍して一気に距離を詰める、必殺の一撃は魔眼奪いの鎌と片腕を吹き飛ばすがそれと同時に沙彩の真剣を吹き飛ばす

「ぐっ!」

それでも魔眼奪いは諦めない、残された片腕に力を込めて沙彩へと向ける

「絶好のタイミングよ、やればいい出来るじゃない」

咲が吹き飛んだ真剣を手に舞う、その一撃を魔眼奪いは避けられずに沙彩に向けていた腕も奪われる

「何故だ、何故救済を認めない!」

「救済は大切な人の為にやるもの、悪い人も知らない人も全員の事を1人で助けようなんて事は出来ない!」

糸が守りの術を失った魔眼奪いを容赦なく貫く、長く生き過ぎた生命を本来の形に戻す

闇色の人形は淡い光を放ちながら消えていく

「終わったな」

「私達の戦いはね、でも神奈ちゃん達はまだ戦ってるはずよ、残念ながら私達はもうリタイアね」

「もうこれ以上動けないですよ、ていうか本気の沙彩さん怖すぎ」

「うん、鬼みたいだった、きっと世界が終わっても生きてるタイプ」

「2人して酷いわよー、ちょっと晴人さんからもなんか言ってよ」

「全く兄弟揃っておっかねえ姉妹だぜ」

橋の上で4人が笑い合う



「街を包むほどの魔眼の世界、神奈ちゃんはそれほどの相手と戦っているのね」

和葉は誰もいなくなった拘置所から澪に連れ出される

「彼女に聞いたわ、あなたはロブルスに魔眼を暴走させられて屋敷全体を包み込む魔眼の世界を作ったとか、そんなあなたから見てこの世界はどうなのかしら?」

「魔眼の具現化が自由に出来る、そして一般人がことごとく居なくなっている、その点では私達にも有利な世界ね、でも彼がそれだけの為にこの世界を創ったとは思えないわ、きっとこの世界でなら歪んだ彼も存在出来るんじゃないかしら」

「なるほどね、まさか私達の辿り着いた結論にあなたも達してたとはね」

ドッカーン、轟音と共に拘置所内の建物が崩れ落ちる

「こんな時に敵襲だなんて、和葉さん魔眼の力を借りてもいいかしら?」

「もちろんです、あの影は...」

砂煙の中から出てきた影を和葉は忘れるはずがなかった、あの時に自らの魔眼に取り込まれながらも見ていた景色の中にそれはいた

「未南雲明屋の亡霊、まさか私が会う事になるなんてね」

「世界にキュウサイを!」

災厄が澪へと飛ぶ、彼女はそれをすんでのところで避ける

「私の眼を舐めるなっての!」

厄災が持っている情報を瞬時のうちに全て解析して次の攻撃を読む、それだけが澪に出来る事だった

「あの時よりは能力が下がってるみたいね、この眼であなたに引導を渡す!」

大蛇が地面から現れ厄災を吹き飛ばす

「聞いてはいたけど凄い具現化ね、これなら勝てるかも」

空を舞う厄災は大蛇を操る和葉を狙う

「させないわ!」

衝突寸前の彼らの間に割り込んで蹴りを入れる

厄災は何故自分の攻撃が入らなかったのかを不思議に思うように一歩下がる

「情報の解析、スピード、狙い、力の入れ方、あなたの行動の全てを視て最善の攻撃を仕掛ける、あなたは特にそれがやりやすいわ」

「この世界に真なるキュウサイを!」

厄災の姿が叫びと共に虚ろになる、そしてその姿は災害へと変化する

燃え盛る業火に荒れ狂う津波、そしてそれらを乗せて迫り来る暴走する竜巻、まるで世界の終焉だ

「ロブルスが生み出した影はお父様自身じゃない、魔眼の方だったのよ」

今にも身体ごと吹き飛ばされてしまいそうな中和葉は考察する

「そっか、だからあの姿は厄災の魔眼の力そのものなのね」

「このまま災厄を野放しにしたらこの世界が崩壊するだけじゃ済まないわ、私の眼で最善の方法タイミングを見つけるからその時に大蛇をあれに突っ込ませてもらえるかしら」

「面白い賭けね、その案乗ったわ」

彼女達を守るように側にいる大蛇は厄災の方を向く

人類は幾度の経験を経て災害に対応できる最善の術を探してきた、どんなに絶望的な厄災でもきっと隙がある、ならばあとはその隙を見るけるだけだ

「あなたが人類を滅ぼす絶望なら私達は今を守る希望になるわ、今よ和葉さん!」

「絶対に守ってみせる!」

神奈ちゃんを守れるのならここで全てを出し切って散ってもいい、その覚悟と想いを乗せた一撃が厄災と衝突する

無限とも思えるような一瞬の中で全ては終わった

どれだけの試行を、どれだけの偶然を重ねても辿り着かないであろうその結末は澪の眼によって招かれた

大蛇は厄災と共に消滅した、互角など程遠い戦力差を覆し未来は紡がれた

「どうにかなったわね、死ぬかと思ったわ」

「それはこっちのセリフよ、それにしてもあの厄災相手に魔眼無しで攻撃を防ぐなんてどんな武術を使ってるのか知りたいわ」

「あんなのノリと感覚よ、そうじゃなきゃ視ながら動けないわ」

「素晴らしい才能ね、今度是非未南雲の稽古を受けてほしいわ」

「うーん、これが終わったら師範代になるのも悪くはないかしらね」

澪は冗談めかして笑う、和葉はそんな時が来たらいいなと心の底から願い空を見上げる



暗い意識の底で緋夏斗はゆっくりと目を開ける、自分が今どんな状況にいるかは分からなかったが少なくとも良い状況でないことは確かなようだ

あの時見た記憶、それが現実のものだとしたら僕はもう誰に付けばいいのか分からない

「やあ久しぶりだね緋夏斗」

その声を忘れるはずがない、かつて自分がいたチームのリーダー格でありムードメーカーでもあった男は既にロブルスの手へと渡っていた

「僕を恨んでいるかい?」

「ああ当然だ、君は僕達と同じはずなのに今も生きている裏切り者だ」

彼が手を振り上げると何もない場所から影が這い出てくる

「お前達は...」

その姿は影へと成り果てていたがよく知っていた

「彼らは俺に力を託して散った、緋夏斗も今ならまだ間に合う、ロブルスさんに忠誠を誓って罪無き世界を創り出すんだよ!」

「その世界なら僕達はまたやり直せるのか?」

「ああ、皆で過ごしたあの頃に戻れるんだよ」

「なら...」

緋夏斗は腰につけた拳銃に手を掛ける

残弾数は五発、一発も外さなければ仕留め切れる

「それならどんなに良かっただろうな」

そんな現実は起きっこない、仮にあったとしてもその時にいる仲間はもうかつてのものでは無くなっている

儚い一言とともに銃弾が4発放たれる、それなら確実に影の核を仕留める

「何でだよ、俺達は仲間じゃ無かったのかよ!」

「彼らはもう過去の残像だ、そしてお前はもう堕ちている」

銃口を向ける、男は動揺もせずに呟く

「それでも君に俺は殺せない」

男の眼が光る、瞬間緋夏斗は背中を蹴られ吹き飛ぶ

「覚えてるだろ、俺の眼の事くらいは」

それは転移の魔眼、使用者のみが転移することが出来る視ることの無い眼

「知ってるよ、それを持ってるのにあの時に1人だけで逃げ出さなかったこともな」

緋夏斗は立ち上がる

「ロブルスさんが視せたのか、あの人も悪い人だ、そんなのを今更君が知ってどうなる?」

「お前は彼に殺された、だから今は夢のような存在なんだろう、それでもお前が変わってないのならきっと...」

男は緋夏斗の背後に転移して彼を殴る

「だったら何だ、仲間を、俺を取り戻す方法は1つしかない、君だってわかってるだろう?」

「理解はしている、それでも僕の正義はそれを許さない!」

緋夏斗のこぶしが向かうが男はその攻撃を転移して避ける、だが緋夏斗の方が一歩上手であった

「何っ!」

転移先に回し蹴りが炸裂する、そして体勢を崩した男を緋夏斗の連撃が襲う

そして緋夏斗が男を羽交い締めにしてその銃口を心臓に向ける

「終わりにしよう」

「無駄だ、その引き金を引いた時に俺が転移すればいいだけの話だ」

余裕の笑みで微笑む男に緋夏斗は告げる

「そうだな、でもそれは出来ないだろう?」

引き金を引く指は少しも震えてすら無かった、絶対の自信、それは彼らが過ごした日々から生まれた’確信’

「がはっ...」

血の吐息を吹いたのは男であった、銃弾は男の身体の内に留まり緋夏斗へは辿り着かなかった

血が緋夏斗のスーツに滲む

「今も昔も変わらぬ友よ、僕達はいつだって一緒だ、それはあの時からずっと変わらない」

「そうだったな...天国でも地獄でもいい...また仲間で同じ方を向けるか...?」

「ああ、勿論だ」

世界が崩れ始める、きっとこの世界は彼の魔眼であったのだろう

緋夏斗は崩壊する世界で彼の最期を看取る



全ての絶望は終局の果てまで辿り着いた、その光景を映し出した瞳は驚愕の色を見せている

「みんな...勝ったんだね!」

「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!絶望は深く希望は浅い、その体系が崩れる事など許されぬ、そうでなくては新たな世界は成り立たぬ!」

「だからそんな世界が間違ってるのよ!」

魔眼の力で紡がれていた鎖がちぎれる、ロブルスは後ろに下がる

「表が散った影響か、やはり偽善などそんなものか」

彼の眼が光る

「私は悪で世界を救おう、故にお前さん達はここで潰さねばならん」

その輝きは銀髪の少年と同じものだった、いづれ彼と戦う時が来る、そしてそれに対する為の策はもう既に考えてあった

奴の力が迫る、あの時と同じ七色に輝く虹の光弾

「私は世界の裏を視る、私は真実だけを視る、ボクは表裏の魔眼(このめ)であなたに勝つ!」

裏刻刀は光を斬り七色に輝く

「どうなっているんじゃ」

ロブルスは久しい恐怖を感じる、突然の出来事に彼女から距離を取ろうとパンドラを出る

「待ちなよ!」

神奈もロブルスの後を追いかけ駆ける、もう少し、もう少しで手が届く

初めて魔眼奪いに出会った路地裏、思えばここから全てが始まったのであった

「因果とは恐ろしいものじゃ、あの時お前さんの眼を奪えたのならここまで追い詰められることも無かったのかのお」

「変わらないよ、変わった運命も変わらない運命も全部ひっくるめてボクの人生だったとしたらきっとこの先の結末も変わらない」

「ほう、運命を変えようとは思わんのかね?」

「変わるべくして変わるんだよ、少なくとも運命の女神様はそれを望む人にしか微笑まない、だからボクはただその先を見る為に戦う!」

神奈は駆ける、その手に持つ裏刻刀は白銀の輝きを見せる

「どれだけ足掻こうとお主の未来は真っ暗じゃよ!」

あらゆる魔眼の力を内包した虹色の光が神奈を包み込み光の球となって閉じ込める

「終わりじゃ、後はその眼を奪うのみ...何っ!」

光が弾ける、誰であろうと破れるはずの無い力は内側から切断された

「その眼はあなたが今まで奪ってきた本来の力では無い、だったらボクの眼には視えない!」

神奈の眼は真実を視る、その性質を利用してロブルスの魔眼の力そのものを彼女の魔眼の世界に内包することによって一時的に能力を無効化していたのだ

「終わりだよ!」

神奈は加速する、虹を斬った裏刻刀はロブルスを捉える

「数百年の妄執を舐めるでない!」

地より出でる数百年間男を呪い続けた力、それが神奈を襲う

わかっていた、この力にだけは私の魔眼であっても敵わない、でも信じてもいた

「そこに居るんだね、ずっと」

ペンダントが輝く、これこそが天海千夏が最後に残した未来を繋ぐ為の力

光が呪いを弾く、また守ってもらってしまった

「この力は...馬鹿な私以外に目の力を物体に封じる技術を持つ者が居たというのか!」

神奈は一気にロブルスに迫る

「技術とかさそういうのじゃ無いと思うよ、ただ友達を守りたかった、その想いが込められてただけさ!」

斬、空気が振動する、その一刀はロブルスの存在を裂く

「何故っ!たったそれだけの眼で、それだけの力で何故私に誇る!家族を失った恨みかっ!」

消えそうな身体でロブルスは問う

「恨みか、確かにそれもある、でも根底はお前と同じだよ救いたい、ただそれだけさ」

ロブルスがかっと眼を見開く、消えそうな身体で彼は最後の力を振り絞り神奈へと向かう

「救うのなら全てを救って見せよ、それ以外の救いなど認めぬ!」

「まずいっ!」

だがその一撃は届かなかった、ロブルスの身体を私のものでは無い裏刻刀が裂く

「なっ、貴様...!」

ロブルスの身体を貫いたそれを持つのは銀髪の少年である

「僕は世界の味方だ、断じてあなたを救うだけの存在では無い、それに裏切りは常套手段だろう?」

少年は裏刻刀を引き抜く、ロブルスは支えを失い倒れる

「たかが魔眼如きが、これで終わると思うな...」

それが老人の最期であった、不穏な一言を放ち老人は光となって消える

神奈は少年に裏刻刀を向ける

「あなたは悠人じゃない、でもその姿は...」

「刀を下げなよ、僕はもう君達と争うつもりはない、それとこの身体の事だけどね、僕が君の弟の魂の大半を所有しているのは確かだよ、だから君の眼には僕の姿は未南雲悠人として映る事もあるだろう、でも僕は断じて彼ではない、僕はロブルスの殺害衝動を抑えていた彼の魔眼の意思だからね」

神奈は裏刻刀を彼に向けたまま話す

「あいつの魔眼の意思...つまりあの時別れたのはロブルスの善悪じゃない、あなたという存在とロブルスだったのね」

「殆ど正解だが少しだけ間違っているね、あの時表裏の魔眼で分離したのはロブルスの感情と僕の3つだ、そしてロブルス自身が別れたのは善悪ではなく偽善と悪だよ」

「偽善と悪...、あいつってそこまで腐ってたのね」

「彼は人の死こそが救済だと信じた、そしてそんな彼の願いは悪にならなければ叶わなかったんだよ、だってそうだろう?世界中の誰もが死を恐れる、それを善だと言えるのは真性の悪くらいだ、だけれど彼の魔眼であった僕はそれを否定した、そして彼の殺害衝動を抑えていたんだよ」

「だけど魔眼の暴走によって彼は未南雲家を襲った、そして表裏の魔眼はストッパーであったあなたを彼と離してしまった」

「その時に僕は魔眼としての意思ではない人格を得たんですよ、悠人君の魂との融合を果たしてね」

「だからあなたも裏刻刀を具現化させているのね、魔眼使いの具現化はその力そのものと関係のある物か使用者自身と関係のある物のどちらかのみ、だからあなたが例え表裏の魔眼を持っていても裏刻刀の具現は出せるはずないものね」

「そうだね、その見解は間違ってない、だけれど魔眼の意思だけの存在であった僕が人格を持ったところで本来なら世界には要らない存在として消えるはずだったんだ、だがそんな僕をロブルスは唯一完璧に完成していたホムンクルスへと移し1人の人間として幽閉した」

「なんでロブルスはあなたの事を殺さなかったのかしらね、今の話だといつでも殺す機会なんてあったはずじゃない」

「僕が意思を持った魔眼として彼の奪った眼を全て束ねていた、だから僕を殺して魔眼が野に放たれ別の魔眼が自身の意識を持ち始めるリスクを考えればホムンクルスという人工の肉体に永遠に閉じ込めておく方が安全だったんだよ」

「けど今頃になって寝返った、いやそもそもあなた自身の目的はなんなの?あなたがロブルスを止めたいのなら不意打ちなんてしなくてもいつでも止めれたでしょう」

「全ての眼を集める、その点においては僕だって賛成していたのさ、その先の目的は違うにしてもね」

「眼が集まったら何が起きるのよ」

「ロブルスは単純に支配の為に絶対的な人智を超える力を得ようとした、だが僕はその逆だ、全てが集まった暁には表裏の魔眼で僕ごと世界から消える、それがこの世界を守る為の最善だと思っていたからね」

「だったからここであなたを討つわ」

神奈が少年を睨む

「まあまあ落ち着きなよ、’思っていた’と言ったじゃないか、君達の戦いを見て気持ちが変わった、絶望に負けずに魔眼を持つ者も持たない者も逆境を乗り越えて希望を紡いだ、なら人類にもう少しだけ期待してもいいかもしれないと思ったんだよ」

「それなら...」

「ああ、これからよろしく未南雲神奈、そうだ僕の名前を伝えてなかったな、もっとも名前らしい名前も無いが...ぐっ」

その時少年が眼を抑えて苦しむ、そして脳裏にある人物の声が響く

「裏切りは常套手段、そうじゃったよな?」

「ロブルス...!」

「私がお前さんを何の枷も付けずに野放しにするはずがあるまい、精神憑依の力を組み込ませてもらった、その身は使わせてもらおう!」

この世界から消えたはずの老人の魂は少年の身に宿る、いや元からそこにあったのだ、裏刻刀が彼の身体を終わらせたその瞬間から彼は少年の身体に憑依していた

「させない!」

完全に身体が乗っ取られる前にロブルスの魂のみを斬る、そうすれば全てが一瞬で終わる

そもそも最初からそうすれば良かった、ただ私はこの手で人を殺すのが怖かっただけなのだ

それがたとえ世界にすらも拒絶される老人の魂であったとしても私は終わらせられない

だから彼をこの世界から葬り表に弾きだす事で消そうとした

その甘さが全てを台無しにしかねないと知りながらもそうしてしまった、その事を私は強く後悔することになった

私の必死の思いも虚しくその一撃は華麗に避けられる

「残念だったね、お姉ちゃん」

口調は同じだ、だがその(なかみ)は明らかに別人になっている

「ロブルス!」

一切の迷いを捨てる、ここで負ければ全てが水の泡だ

「遅いね、表裏!」

その力を1番よく知っているのは彼の魂だったのだろう、私の刀は容易に砕け散る

「ここまで来て負けられない、私だけじゃない、みんなの想いがあってここまで来れた、それを踏みにじるわけにはいかない!」

更なる生成、この力をこの性質を理解しろ、彼が持つ魂から受け継いだ力と私が彼自身から受け継いだ力、その比率はまだ負けている、だが必ず逆転する

「無駄だよ、それじゃあ届かない」

ガンッ、鈍い音を立てて両者の裏刻刀が砕ける

「二本同時生成か、成る程ね」

少年も両手に刀を構える

2対1でようやく互角、まだ足りない

「はあっ!」

2対2、それならまだこちらが負ける、だが確実に追いついて来ている

連続生成で一気に詰め寄る

「こっちは年期が違うのよ!」

「ちっ、何でそこまでして救済を認めない、何故理解できない!」

「逆に聞くわ、あなたの理想の原点は何なのよ、何があったらそこまで死を求められるの!」

「昔1人の少女がいた、彼女は自らに課された運命に悲観して死を求めた、僕はもちろん断ったよ、死んだら何も変えられないなんて誰だって知ってるからね」

「だったら何で!」

「その少女は死んだんだよ、僕に殺して欲しいと願った後にたった独りで崖から身を投げてね、僕は彼女を助けられなかった、だからその時に少女に誓ったんだ、誰もが救われる世界を必ず創ってみせるとね!」

激しい剣戟の中での押し問答、その間にも神奈は理解を深めていく、だがそれはロブルスも同じ事だ、彼の生成速度も初めとは桁違いに上がっている

知識か実戦か、そのどちらが誇るのか、この戦いは最早その域を脱した、お互いの実力はとうに並んでいる、だとしたら勝負を決めるのは勝利への執着のみである

「その結果が死だっていうわけ、くだらないにも程があるわよ、あなたは結局過去の後悔すらも忘れてるじゃない!」

「死した人間を救えるのは「死」だ、だから私は死をもって全てを救う!」

そうか彼は忘れてしまったのだ、少女を救おうとした想いも、助けられなかった後悔も

長い夢が彼にそれを忘れさせた、少女が救われる世界を求めていたのに知らないうちに死した少女ですらも救うであろう誰もが救われる世界を求めてしまった、いつも間にか目的と手段が入れ替わっていたのだ

「私があなたを救ってあげる」

憎しみも怒りも慈悲も要らない、私は彼を長すぎる夢から覚まさねばならない、そうしたい一心で裏刻刀を振るう

「僕は世界を救う!」

互いの想いを、理想を乗せた裏刻刀がぶつかる、お互いの刀は激しい音を立てて砕け散る両者の実力は完全に互角である

「僕は負けられない!」

ロブルスが裏刻刀を生成する、だがそこで場数の違いが勝負を決めた

「終わりよ」

生成した刀を投げつけロブルスが作ったばかりの刀を弾く、そして瞬時にもう一本の裏刻刀を生成し振るう

「なっ!」

裏刻刀は鮮やかに舞い彼の魂を両断した

魂が朽ちゆく中老人は夢を見た、あの時の少女が自身の前に立っている

「あなたはもう眠ってもいいのよ、救済を求め続けたその魂に安らぎがあらん事を」

「君はそこに居たんだね...」

少年に宿った老人の魂は儚く消える、神奈は膝をついて呟く

「最初からそう気づいていれば別の道もあったのにね」

「ううん...終わったのかな?」

少年が意識を取り戻す、その瞳にロブルスの影はない

「ええ終わったわよ、そういえばあなたの名前聞きそびれちゃったわね」

「僕の名前は(あい)、彼がくれた名さ」

「成る程ね、魔眼の意思だから瞳、単純だけどいい名前じゃない」

「これで見た目が男でなかったら良かったんだけどね、残念ながら今更交換出来る身体も無いのだけどね」

「そうだ、あなたはこれからどうするの?」

「僕はあなた達を見守りたいと思う、でも行くあてがあるわけではないよ」

「なら家に来ない?無駄に広い家だし私達を監視するなら近くにいた方がいいでしょう?」

私の監視下に起きやすいという利点もあるが悠人の魂を持っている彼と暮らして見たいという気持ちが強かった

「それは名案だ、他の君の仲間が嫌がらないのならそれで構わないよ」

「早速提案してみるわ、それじゃあ一先ずここを出ましょう」

「わかったよ、お姉ちゃん」

偽りの兄弟でもいい、それでも隣で彼が歩いている、それだけで勝利の報酬には十分だった


1週間後、全てを終えた私達は至って平凡な生活を送っていた、あの時と変わったことと言えば瞳が我が家に来たくらいだ

ロブルスの魂が朽ちた後世界は在るべき姿を取り戻した、彼が事前に仕掛けていたのか街の人々は空白の1日の事を全く気にせずに生活へと戻った

そして瞳の事は誰かしら反対意見がでると思ったがそんな事はなかった

誰からも文句は出ずに彼は私達の日常へと加わった

「神奈ちゃん、そろそろ出ないと間に合わないわよー」

そして叔母さまは街の危機を救ったという事で南波紫苑と同じく今回だけ目を瞑ってもらうことになった、彼女もどうやらそれで納得したようだ

「はーい、それじゃあ行ってきます!」

「じゃあね神奈気をつけるのよ」

「お姉ちゃん行ってらっしゃい」

私は瞳と優香に見送られて家を出る、少し前まで二人暮らしだったのに今では倍である

「神奈ちゃんおはよう、もう学校?」

「はい、行ってきます!」

「行ってらっしゃい〜」

澪さんは叔母さまの見込みで未南雲流を教え込まれている、やがて道場を持ちたいだか言っていたが本当に突拍子も無い話である

だけど一連の事件が終わっても彼女が側にいるのは嬉しい限りだ


学校の昼休み、屋上でお昼ご飯を食べるのはもう習慣になっている

「お待たせ、ごめんね購買凄い混んでて」

「今日はお弁当じゃ無いのね」

「寝坊しちゃってね、お兄ちゃんには悪いけど今日は買い弁にしたよ」

「言ってくれたら咲ちゃんと晴人さんの分も作ったのに」

「久々の寝坊で焦っちゃってさ、今度そうなったら連絡するよ」

陽の光がよく当たる屋上でお弁当を食べながらお喋りする、それが学校の中で私が1番好きな時間

「そういえば山さんは最近どう?」

彼はロブルスが居なくなり路地裏に出現してしまったパンドラをロブルスの代わりに沙彩さんと一緒に管理している

「どうにかやってるみたいだよ、元々魔眼奪いを追ってて仕事の大部分は部下に一任してたみたいだし、それに沙彩さんも手伝ってくれてるみたいだし」

「そっか、帰りに寄ってみようかな、2人は放課後は部活?」

「うん、折角少しは出来るようになったし頑張りたい」

「私も大会が近いし流石にサボれないかな、また今度一緒に遊びに行こう」

別に遊びに行く訳じゃ無いんだけどな、と心の中で思いながらまあそれも咲らしいかとも思う


放課後、私はパンドラへと向かう

「あれ、中々着かないわね」

さっきからずっと同じところをグルグル回っている気がする、幾ら何でも歩きすぎなんじゃないかと思っていると唐突にパンドラが現れる

「どうもー、お疲れ様です」

「おう、まだロブルスさんの残した技術に慣れてなくてな、無駄に歩かせちまってすまねえな」

「もう、晴人さんはそういうの苦手みたいだし座って解読作業でもしてくれればいいのに」

「山さんも沙彩さんもお疲れ様です、何か手伝える事はありますか?」

「片付けもだいぶ進んだし今日のところは大丈夫かな、それよりも今度手合わせしましょう」

「相変わらずですね、看護師を辞めて剣道で食べていく気は無いんですか?」

「今の生活を止める気はないわ、でも折角だし咲ちゃんと愛生衣ちゃんに教えるくらいは続けるつもりよ」

「2人の面倒を見てもらっちまってすまねえな、本当は俺も何か教えられることがあれば良いんだが」

「あなたにはまずパンドラの管理をマスターしてもらわないと、私もおちおち仕事も出来ないわよ」

「仕方ねえだろ、なんかこればっかりは性に合わねえんだよ」

その時扉が開く

「それなら僕がやろう、遅れてすまないね」

緋夏斗さんだ、いつも見るスーツ姿ではなくカジュアルな服装をしている

「あの路地裏を通って来たのか?」

「そうだよ、なんだ楽に辿り着けたと思ったらそういうことか」

緋夏斗は何かに気づいたようだ、そして私も何となくだが理解した

「山さんに私が行くって連絡したから路地裏を通る人を魔眼使いに限定してたんじゃないかしら?」

「そうなってたみたいだぜ、やっぱり俺向いてねえわ」

「これからはその管理は僕がやろう、魔眼使いがこれ以上増える事がないのなら僕がすべき事は今パンドラに保管してある情報を管理する事だ」

「警察の仕事は大丈夫なんですか?」

緋夏斗はニッコリ笑って答える

「辞表を出してきたからね、もう何の心配も要らないよ、僕は僕にしか出来ない正義を全うするさ」

「それなら私はそろそろ帰ろうかしら、今日は夜勤だし朝から疲れたわ〜」

沙彩は机の上でグッタリとする

「お疲れ様です、外に車を停めてきちゃったので近くの駐車場に停めるついでに病院まで送りましょうか?」

「本当!ありがたく乗せてもらうわ!」

沙彩さんはピョンピョン跳ねながら扉をくぐる

私もそろそろ帰るとしよう


家に戻ると門の前に怪しい人影があった

「何してるのかしら?」

私が話しかけるとビックリしたのか飛び上がる

「未南雲神奈か、いや、なんだ、その...」

紫苑は大きめな荷物を抱えて気まずそうに振る舞う

「あなただったのね、こんなところでどうしたのよ、優香に用があるの?」

「そうだ、紫陽花に残していた彼女の服やらを届けにきたんだがな、あの時は緊急事態だったから入れたが今更俺がこの家に顔を出すのは気が引けてな」

その時近くで2人ほどの足音が聞こえる

「ちょうどよかったじゃない、帰ってきたみたいよ」

その足音の主は優香と瞳であった、2人はランドセルを背負って元気に帰って来た

「あら紫苑じゃない、どうしたの?」

「いや、そのだな...」

中々話さない2人を置いて私は瞳に話しかける

「学校はどうだったかしら、小学一年生さん?」

「全く、何で僕が学校に通わないといけないんだが、それに何も一年生でなくたって」

「仕方ないじゃない、優香の誤魔化した戸籍がちゃんと7歳になってたんだから、それに知り合いが居た方が優香も楽でしょうし」

「むしろ彼女はもう少し僕の事を疑うべきだよ、席が隣だからって親しげになり過ぎだ」

「それが彼女の良いところなのよ、さあ2人は置いて家に入りましょう」


一方2人は

「私の荷物を持ってきてくれたのね嬉しいわ、それにしてもよく残してたわね」

「君がいつか帰ってくるのを信じてたからな」

「あら、それなのに私は神奈と暮らしててもいいの?」

「当然だろう、紫陽花は子供達がいつか幸せに暮らせるように作ったものだ、君が幸せに暮らしているのなら本望だよ、ただ...偶には紫陽花に遊びに来てもらえると嬉しいよ」

紫苑は少し恥ずかしそうに最後の一言を告げる

「勿論よ、その時は私のお友達も連れて行ってあげるわ」

「それは楽しみだな、それじゃあそろそろ帰るとするよ、元気でな優香」

「そっちこそ身体には気をつけるのよ紫苑」


ここまでが私の過去と仲間と救いの物語、これから先はみんながどんな人生を過ごすかは私の知る所存ではない

でも仲間との繋がりは決して無くならないと思うし彼らはきっと素晴らしい人生を歩むであろう

そして救いを求めて悪となった男もきっと救われたのだろう

だからこの物語はここら辺で終わりにするとしよう

だが悲観することは無い、私達の側に魔眼がある以上またふとした時に日常は非日常となるだろう


魔眼少女 完







魔眼少女ついに完結いたしました!

神奈達の決死の戦い、そしてロブルスが辿り着いた救いの結末、そのどれもが誰かを想い誰かに想われた故の結果であるのなら

それは決して無駄なものでは無かったのでしょう

最後にも書きましたが彼らの戦いは終わっても

その人生(ものがたり)が終わるわけではありません

またいつかこの世界で出会えたらと思います、ここまで読んでくれた方に最大の感謝を込めて

ありがとうございました!

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