第4章「天理人欲-転」
いよいよ魔眼少女の掲載を始める時がやってきました!
本日の8:00〜18:00までの短いあいだですがどうぞご覧下さい
詳しい詳細は後書きにて
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天理人欲-転
データをパソコンが読み込む様子を息をするのも忘れて見つめる
読み込みが終わり動画が流れる、これは何処かの家の中だろうか
「えーっと、2018年6月10日朝の四時です、これから神宮家を出てパンドラに向かいます」
どうやら今日、いや正確に言えば昨日の録画データのようだ
動画の合計時間は14時間超、流石に全部を見るわけにはいかないので最後の方まで飛ばしてみる、するとパンドラと書かれた綺麗な看板が映る
「ここら辺からでいいかしら」
再生ボタンを押すと過去が再生される
「あれ、自分から来いって言ったくせに留守かしら」
彼女がドアを開けるとパンドラの中は前回私が訪れた時と何かが違っていた、これといって決定的な物は無いが絶対的な違和感を感じる
「普段とは違う景色っていうのも何だか不気味ね」
どうやら彼女も似たようなことを思ったらしい、澪は部屋の奥へと進んで行く、その場所は私は訪れたことのない場所であった
一見して散らかっているという印象を受けるのは意味もなく散らかっている普段のパンドラと同じだがこの部屋はあらゆる資料が部屋主の使い易いように置いてあるようだった
それが意味するのは落ちている資料すらも何かの為に配置されているということだ
そう、机の上に何気なく散らばっている資料ですらも
「あら、これ何の資料かしら?」
澪は机の上に雑に置いてある資料を見つける、動画の時間的にもどうやら彼女が見た最後の景色はこれのようだ
「これって...」
澪は何気ない仕草で資料の内容を全て一瞬だけカメラに収めていく、その腕には脱帽だがそれよりも驚いたのは資料の表紙であった
未南雲和葉についての考察と調査結果、そこにはそう記されていた
「何でロブルスさんがこんなのを持ってるかは知らないけど一旦お借りしようかしら」
そして資料をファイルに仕舞って机の上に置いた瞬間、彼女は何かに気がついて振り向く
パンッ、彼女が振り向いてから銃声が鳴るまでの刹那の時間だけだがその顔を神奈は認識出来た
和葉が必死の形相で銃を構えていた、その瞳には驚きを隠せない澪の姿があった
そこで映像は終わっている、銃弾が撃ち込まれた小型カメラはその寿命を終える
「さっきの資料どうにかして確かめないと」
時間を戻す、一瞬だけ写り込んだ資料だが時間を止めればどうにか見ることが出来た
《調査結果》
やはり彼女は隠匿の魔眼を持っていた、つまり本当に未南雲家の血筋を引いている事は疑いようの無い事実であった
戸籍も消されてなどなく確かに存在していたのだ、隠匿の魔眼とは便利なものだ
どれだけ悲惨な過去であっても自らに対しての暗示すらもかけることが出来る、過去については言及はしないが魔眼についてはここに記すべきであろう
彼女の眼はいわゆる二重眼である、その内容に関しては本人に直接尋ねるのが良いだろう
未南雲神奈に対しては自らの素性を隠しており父親の眼についても一つも教えていないようだ
追伸
新崎澪よ、お前さんが無事にここまで読み終えたのなら一つ問おう
誰もが平等に報われる世界は訪れると思うかのお
資料の最後にあった質問、この意図は何なのだろう
誰もが平等に報われる世界、そんなものは絵空事だ、故にそのような問いに意味など存在し得ない
「ロブルスが澪さんと叔母さまを嵌めた、そう考えるのが妥当よね」
何か引っかかる事があった気がしたのだが、今するべき事がありすぎてどれから手をつければいいか、そんな事を考えていると疲れた頭がクラクラする
もう日付が変わってから一時間以上たった
「流石に寝ないと身が持たないわね」
朝起きたら全てが夢だったなんて好都合な結末は望まない、でもせめてそんな夢を見れたらいいと思って瞳を閉じる
夢を見た、暗い世界で私はただ1人彷徨っていると銀髪の少年が突然現れる
その少年の眼が輝くと世界は共鳴するようにに光を持つ
「あなたは誰!」
「世界を守る為に強力過ぎる力に警鐘を鳴らす者、取り敢えずそう名乗っておくよ、お姉ちゃん」
「それって魔眼の事よね、だったら話は早いわ、あなたはロブルスの差し金かしら?」
「別に彼の味方ではないよ、だけど忠告しておこう、君達がどれだけ足掻こうと彼には勝てない、大人しくその眼を渡すんだ」
「そんな事はあなたが決める事じゃない!」
神奈は眼に力を込める、裏刻刀をその手に握り彼へと一歩踏み出そうとする
しかしそれは叶わなかった、少年が手を少し動かした瞬間、手、足、胴、それぞれに合計5本の輝きを纏う杭が突き刺さる、痛みは無いが感覚が失われ身動き一つ取れない
「最後の忠告だよ、このままじゃ君達は殺される、じゃあねお姉ちゃん」
少年が告げると世界は暗闇へと戻される、彼は闇に溶けるように消えていった、そして私の意識も夢へと帰る
カチカチという音と窓から差す日差しで目が醒める
「あら昨日は随分作業していたようだけど身体の方は大丈夫なのかしら?」
優香はパソコンをいじっている、ソファーで寝ていたからか青い髪には酷い寝癖がついている
「あなた寝癖がつき過ぎよ、せっかく綺麗な髪なんだから大切にしなさいよ」
「仕方がないじゃない、いつも家じゃお手伝いさんがやってくれてたのよ、それよりもこの資料あなたも見たのでしょう」
私は頷いて答える
「今日する事は決まったわ、ひとまず家にいる緋夏斗さんと合流して澪さんに会いに行く、その先の話はそこでしましょう、それじゃあすぐに出るから洗面台に行きましょう」
優香は言っていることが分からずポカンとしている
「あなたの髪を私が面倒見るって言ってるのよ」
それを聞くと優香は嬉しそうに微笑む
「ありがとう、神奈」
澪さんの家の洗面台はリビングと同様最低限の物が必要な場所に置いてあるだけの大人の女性が使っているとは思えない雰囲気だった
「神奈って自分で髪を結んでるの?」
「そうね、昔は母にやってもらってたんだけどある時言われたのよ、それくらい一人で出来ないと私が居なくなった時どうするのよって、それから内緒で練習したのよ」
母は私が1人で暮らしてもいいようにと色々な事を教えてくれた、当時はこんなの後で覚えればいいじゃ無いかと思いながら覚えていたが実際母が居なくなっても不自由なく暮らせるのだから母には感謝している
それは料理を教えてくれた澪さんにも、そして家族が居なくなった後私を支えてくれた叔母さまでも同じ事だ
「よし、これでオッケーよ」
「凄いわ、ありがとう!」
綺麗に結われた髪を見て喜ぶ優香の姿を見られるだけで今は幸福だった
澪さんの家を出た私達は気がかりであった夢で出てきた少年に出会うわけでもなく無事に未南雲家に辿り着いた
彼のことは優香には話していないが敵である以上細心の注意を払わなくてはならない
私が彼に手も足も出なかったのは夢の中だったからだと願いたいが現実はそう甘く無いだろう
それでも絶対に負けるわけにはいかない、私の家族を、大切な人達の人生を狂わせようとするロブルスになんて負けられない
「怖い顔をしているわ、そんなんじゃ刑事さんが怖がるわよ」
どうやら知らないうちに思考が顔に出てしまっていたらしい、だけどそこまで言われるとは心外だ
「やあ神奈ちゃんに優香ちゃん、一晩家を借りてしまってすまないね」
緋夏斗さんは笑顔を作ってはいたが眼にクマが出来ている、きっと彼なりに捜査していたんだろう
「おはようございます緋夏斗さん、ひとまず家で着替えます、情報は手に入ったんですけど生憎すぐに話せる量じゃ無くて、話は車の中でいいですか?」
彼が頷くよりも先に優香の手が伸びる
「これに全部まとめておいたわ、パソコンくらいは持ってるわよね?」
優香が渡したのはUSBメモリだった、一体どこでそんな技術を学んだのだろう
「ありがとう優香ちゃん、それにしても君はやっぱりそうなんだね、優香さんと呼んだ方がいいかな?」
それを聞くと優香は少し頬を赤らめて呟く
「そのままでいいわ...」
「それじゃあそうさせてもらうよ、優香ちゃん」
そんな2人を放っておいて私は鍵を開ける
「ちょっと待ちなさいよ神奈!」
何か聞こえるが無視して構わないだろう、私はドアの鍵は掛けずに閉めると廊下を歩く
なんだか久々の感覚だ、1日家に居ないだけでこんなにも日常が新鮮に感じるものなのか
どうやら家に来ていた他の刑事達は緋夏斗さんの気遣いか出払っているようで普段と変わらぬ光景が広がっている
私は自分の部屋で私の服と千夏の為に買った服を取って優香に持って行く
一度しか使わないと思ったがまさか必要になるとは、世の中先がわからないものである
か
居間にいる優香はそのワンピースを見るなり近づいてくる
「これって千夏ちゃんが買ったのかしら?」
「そうよ、結構高かったしまた使う機会があって良かったわ」
「やっぱりそうなのね、嬉しいわ」
私と優香は部屋で着替えて軽い朝食をとってから玄関を出る
外で待っていた緋夏斗は誰かと電話をしているようだ
「ああ、彼女も魔眼使いである可能性が高い、発見次第こちらに連絡を入れてくれ」
電話を切った彼はこちらに手を振る
「今日から屋敷の中での警備は無しとなった、その代わりに外を刑事が彷徨くことになるけど問題ないかい?」
「はい、大丈夫です、それよりも私達が緋夏斗さんを連れ回しても大丈夫なんですか?」
彼は見た目は20代後半くらいだが先ほどの電話といいチームのリーダー的存在なのは間違いないだろう
「僕がいなくても彼らは十分動けるさ、それに彼らはもう魔眼を持っていないからね、魔眼奪いに襲われる心配も少ないだろう」
よくよく考えたらそうだった、今まで魔眼奪いが襲ってきたのは知っている限りだと魔眼を持っている者だけだ
何故かはわからない、だけれどロブルスの魔眼に対する執着は過去に持っていた者達に対しても向けられていてもおかしく無い気がする
「そうですか、なら良かったです」
疑問は尽きない、だが全てを憶測で話すわけにもいかない
パトカーが病院の傍に着く、私の不安とは対極に澪さんの回復はめざましかった
「もう全然大丈夫なのにお医者さんが数日は様子を見ましょうなんて言っててね、私が無事なのはあなたのおかげなのよね、ありがとう感謝してるわ」
「お互い様よ、どちらかというと私を助けてくれたあなた達に借りができちゃっているかしら」
優香はフフと笑う、彼女もすっかり私達の仲間入りだ
「それじゃあ本題に入りますけど、澪さんも資料を見たんですよね」
「ええ、その内容まで完全に把握してるわ、その上で問います、私を信じて和葉さんを疑ってくれる?」
「魔眼奪いの正体はロブルスだったんです、叔母さまはあいつに操られてるだけかも...」
「それでも今は’敵’でしょ、昔の彼女だと思って接したら絶望するかもしれない、だから覚悟を持って挑みなさい」
彼女は一度失った、だから私に同じ過ちを犯して欲しく無いのだ、だから私はその言葉を受け止める
「わかってます、それでも絶対にもう誰も失いません」
「決意表明も終わったことだし本題に入ろうか、澪さんあなたはこの街にいる他の魔眼使いについて何か知ってますか?」
「ロブルスさんが把握していた人達なら知っているわ、あの名簿作りには私も関わってたから、それがどうかしたのかしら?」
「この街にいる全ての魔眼使いにロブルスの正体を教えます、その上で彼を止めるために協力を申し出ます」
「幾ら魔眼奪いと言えども同時に何人もの魔眼を奪えるわけじゃない、戦略としては上々よね、あとは彼らが危険を承知で作戦に乗ってくれるかよね」
優香の言葉は的を得ている、実際魔眼奪いに対して脅威を感じている者は多いだろう、しかしその全てが協力的とは限らない
「随分と難しそうな話をしてるのね」
その声と共に扉が開く
「沙彩さん!」
緋夏斗さんと優香はお互いに違う理由でポカンと口を開けている
「岬さん...?」
「誰なのかしら?」
私は面倒なのでまとめて説明することにした
「彼女は並木岬さんの双子の妹の沙彩さんよ、少し前に魔眼絡みでお世話になって知り合った、こんな感じでいいですかね?」
「いいんじゃないかしら、一つ残念なのは美人のお姉さんが入ってたら完璧だったことかなあ」
相変わらずの性格だ、この人はきっと友達が多いだろう
「どうしたんですか?」
「私が澪さんの担当なのよ、それで来てみたら神奈ちゃん達が真剣に話してるのだから入るタイミングを失っちゃって」
「彼女にも聞いてもらいましょう、無関係な話で終わるとも限らないわ」
澪さんの一声で沙彩さんも会話の席に着く
「それで結論としてはなるべく沢山の魔眼使いに情報を渡したいのよね」
澪はスマホを取り出して次々に文字を打ち込む
そしてしばらくすると全員のスマホにメールが届く
「あれ私澪さんと連絡先交換しましたっけ?」
沙彩だけではない、優香のスマホにもメール
は送られている
「私の眼でそれを視たのよ、こういう時には便利よね」
便利どころの話ではない、その力は悪用すれば個人情報どころか国家機密をも視ることが可能かもしれない
そのような力を個人で持つことが出来る、やはり魔眼はどのようなものでも世界にとって危険因子なのだろうか
「彼らの住所は僕があたりましょう、魔眼使いの中でも僕はそこそこ有名らしいですからね」
彼はそう言って駆け足で病室を出て行く
「全く、やると決めたら正義を燃やす、真っ直ぐな人よね」
澪は呆れたように呟く
「そうだ、澪さんの事登録しておくわ」
優香がバッグからスマホを取り出そうとしてそれをベッドの上に落とす
「よかった割れてはないみたいね」
澪がそれを持って手渡す、その瞬間優香の顔色が変わる
「今日の夜9時57分未南雲和葉があなたを殺しに来るわ」
「視えたの!?」
「断片的な記憶よ、まだ完全に決まったわけじゃないけれど、私に視えるってことは殆ど確定してる未来だわ」
「視えた景色を正確に教えてちょうだい、まだ完全に決まってないのならその状況から少しでも現状を遠ざければ可能性はあるわ」
「まず最初に時計が視えたわ、次に視えたのは銃を構えてる未南雲和葉、それで何発かの銃声の後に花瓶やガラスが粉々に砕けて...」
「言っていいわよ、運命なんてはなから受け入れる気は無いわ」
「あなたは石像になったみたいに固まっているわ、それでその後にロブルスが来て魔眼を奪った後のあなたを花瓶と同じように...」
砕けた、そう言おうとしたのだろう、だとすれば石像は比喩ではなく澪さんは本当に石化してしまうということだ
「石化の魔眼、まさか神話レベルがまだ出て来るとはね」
「それが叔母さまの二つ目の眼」
「それってよくゲームとかに出てくるメデューサが持ってたっていう?」
「まあ解釈は間違ってないわ、視たものを石化させる眼は神話にも出て来てる、でも私が言った神話レベルっていうのは魔眼の価値の話よ」
キョトンとしている私達に対して澪さんは説明する
「これもロブルスさんからの受け入れなのだけど、魔眼の能力には格差があって力が低いほど同じ種類の魔眼が世界に沢山存在しているらしいの、それで魔眼の価値を示すために呼び名が付けられたのよ、下からデイリ、ストーリア、そしてミス」
「つまり叔母さまの魔眼は強力ってことですね、だったら澪さんじゃ歯が立たないですよ」
「だから未来を変えるのよ、沙彩さん空き部屋はあるかしら?」
「たしか隣の部屋の方が協力退院だったはずです、すぐに手配しますね」
部屋を出て行こうとする沙彩を止める
「後一つお願いがあるの、今夜ボディガードを頼まれてくれないかしら?」
「勿論構いませんよ、切った張ったは得意ですから!」
沙彩はエア剣道をした後に部屋を去る
「いいんですか、魔眼を持たない沙彩さんに任せちゃって」
「それだから頼んだのよ、私を打った時の彼女の顔は決して快楽から来るものではなかった、まだ善良な心が残ってるのなら何の関係もない看護師を襲わないわよ」
「それには私も賛成よ、今の彼女が神奈と会ったらどうなるかわかったもんじゃ無いわよ」
2人にそう言われるとそんな気がしてしまう
「でも私だって何もしないわけには..」
「ここに行ってみたらどうかしら、優香ちゃんと行けば何かしらの手がかりは掴めるかもしれないわ」
その場所は父の時代の未南雲家がかつてあった場所だった
「ありがとうございます、私が必ず叔母を救います、だから...」
「命を取るつもりも取られるつもりも無いわ、だから安心して行ってきなさい」
「はい!」
澪さんに教えてもらった住所はこの街から電車で三時間程かかる場所だった
着いた頃にはもう昼時である
「お腹空いたわね、どこからお昼にしましょうか」
都会の騒々しさとは打って変わって静かな街だ、父の育った街はまるでその頃とまるで変わらないような風景を映し出している
「懐かしいわね、私が昔見た景色に似てるわ」
千夏と一緒に歩いた街の風景は今でも脳裏に焼き付いている、あの頃と変わらぬ景色を見られただけで付いてきた甲斐があったものだ
「ここら辺の再開発を進めていたのは地主だったお爺様だったらしいわ、それで彼が亡くなったせいでその話が無くなって今はこんな状況よ」
昔はそのせいで父は生まれた場所を去って新たな暮らしを迎えたのだと思っていた、だけど真実は違うのだろう
「そこのお店で食べましょう」
優香が指差したのは昔からある老舗のようだった
「いらっしゃいませー」
暖簾をくぐると40代ほどの女将が声を張る
私たちは席につき注文をする
「それじゃあ八割蕎麦を一つ」
「私は温玉うどんにするわ」
「かしこまりました」
しばらくすると料理がやってくる
「お客さん見ない顔だけどこんな場所に観光かい?」
「未南雲家って言えばここら辺の人はわかりますよね、私達はそこを訪ねに来たんです」
それを聞くと彼女は顔をしかめる
「未南雲って言ったらあそこしかないがもう既に人は住んでないはずだよ、そんな場所に何の用だい」
やはりこの地域で未南雲家の印象は最悪のようだ、ここでは身分を名乗らないほうがいいだろう
「神奈は未南雲家の唯一の跡取りなのよ、それなら文句は無いわよね?」
このお子様叔母さんは一体何を考えているんだろう、さっきの私の話を聞いたら普通はこんなこと言わないだろう
「あら、泰君の娘さんだったのね、そうとは知らずに怪訝な顔をしちゃってごめんなさいね」
彼女は思いもよらない反応をする
「えっと、再開発を止めた未南雲家を恨んで無いんですか?」
「その逆よ、私達みたいに何代も前から続いてる店は再開発には反対してたの、それで泰君のお父さんが亡くなって再開発の人達も一度はここを去ったのよ」
そんな派閥があったとは知らなかった
「一度はってことはまた来たんですか?」
「つい最近からまるでドラマのマフィアみたいな奴らがうろついてるのよ、私は再開発絡みだって思ってるわ」
彼女の言葉を整理すると怪しげな者達が彷徨いてるだけで再開発の関係者とは決まったわけじゃ無いようだ、しかしそんな状況で未南雲の人間が来たら怪訝な顔をされても仕方がないか
その時客が来店する
「いらっしゃいませー」
女将は駆け足で去っていく
「ご馳走様でした!」
「美味しかったわ、また帰りにも是非食べに来ましょう」
「そうね、覚えておくわ」
私が会計を済ませて店を出ようとした時に女将が一言声をかけてくる
「地元じゃ未南雲家を恨んでる人も沢山居るから気をつけてね」
「ありがとうございます、それじゃあ」
店を出て未南雲家へと向かう、駅から少し離れただけでまだ整備されていない砂利道に見渡す限りの田んぼと畑が見える
これでは今のご時世再開発を望む声が多いのも頷ける
「やっと着いたわね、どこを向いても虫だらけで嫌になっちゃうわよ」
「私はこの景色は嫌いじゃないわよ、人間の記憶力じゃ何もかも新しくなったら昔の事なんてすぐに忘れちゃうじゃない」
昔の景色を失っても今の生活は向上させたい、そのくせ過去を保存したがる、私の言えた事では無いが人間なんてそんなもんだ
結局大抵の人は今を見るので精一杯なのだ、だから誰かが余裕が出来た時に過去を見れるように保存する、そうして世界は新しい景色を紡いでいく
私が門を開けようとした時に横から農夫の男に話しかけられる
「あんたらここら辺じゃ見かけないな、未南雲家に用があるのか?」
私が何と言い訳をしようか悩んでいると優香が口を開く
「この家の所有者が入るのに理由がいるかしら?」
やってしまった、何故彼女に口止めしなかったのかと過去の自分を叱咤する
「それじゃあ嬢ちゃんがあいつらの言ってた跡取りか、俺達はな明屋さんを信じて着いていった、あの人ならこの村を変えてくれるってな、だけど裏切られた、母親は泰君を連れてここから逃げたんだよ!」
祖父を応援していた者達から罵られるのと、その死利益を得た者達に笑顔で迎えられる事
勿論笑顔で迎えられる方が嬉しいに決まってる、でも彼らも立場が違えば真逆に立っていたはずの人々である、人間とはこの私も含めてなんと身勝手なのだろう
「そんなの神奈には関係ないじゃ無い、あなたは間違ってるわよ!」
何も言えない私の代わりに優香は啖呵を切る
どうやらその声は彼に届いたようで落ち着きを取り戻す
「すまねえな、嬢ちゃんの言う通りだ...」
それだけ残して彼は去って行く
「ありがとう優香、私何にも言えなくて...」
「困った時はお互い様よ」
彼女はピョンと跳ねて私の肩を叩く、また助けられてしまった
「そうね、だからもう少し力を貸してもらえるかしら」
「勿論よ」
村の中心に今でも残っている屋敷、その門が開く様子を暗がりから見る目が光る
どうも新作を思いついてから旧作が踏み止まっていたダメ作者のつばさです
それでも何とか「魔眼少女」を書き終えることが出来ました
そして少しでもこの小説を色んな人に見てもらうためにある企画を思いつきました
それこそがアニメの一挙放送ならぬ、小説の一挙掲載です!
というわけで本日の8:00〜18:00にアニメよろしく30分に一話投稿致します
またTwitterで#魔眼少女で感想を呟いてもらえれば作者が突撃しに行きます!
是非色んな方と感想を言い合ってもらえればと思います
作者Twitter https://mobile.twitter.com/atorietsubasa




