第4章「天理人欲-起」
いよいよ魔眼少女の掲載を始める時がやってきました!
本日の8:00〜18:00までの短いあいだですがどうぞご覧下さい
詳しい詳細は後書きにて
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天理人欲-起
その日はいつもの変わらず何の変哲も無い日常であった
陽の光が障子に当たり部屋が徐々に暖かくなる、まさにお昼寝に最適な時間だ
畳の上に直立している少女は静かに目を開けて現実を見る
まるで小さな竜巻が通り抜けたかのように散らかった部屋、破れた障子、陽の光を浴びて輝く石像、全てが非日常であった
「はあはあ」
優香は息を切らせながらも必死に走る、何の為に走るのか、そんな事も忘れてしまいそうなほど無我夢中であった
10分ほど前観覧車の中で神奈に触れた優香は彼女の身の回りでこれから起きる運命を視てしまった
通常、時の魔眼でも未来が視えることはない、何故なら未来は無数の選択肢があるのだ、その何処に時の流れが通るか分からない限り未来は視えない
だが未来が確定されている場合は別だ、その未来はあくまでも過去から今に至る流れの延長線上として処理される
今から5分後、神奈の大切な人は神奈の大切な人によって殺される、何も自殺するわけではない、凄まじい銃声と共に銃弾で心臓を貫かれて死亡する、れっきとした殺人である
「えっと、こっちだったはず...」
未来の神奈が通った道を思い出して進んで行く、間に合って欲しい、ただその一心で走る
路地を何本か曲がった先、パンドラと書かれた綺麗な看板が見えた
悲劇まであと10秒ほど、彼女はドアを開けて奥へと走る
パン!拳銃が鳴り響き澪の心臓は貫かれる
「あなた、何で...!」
そこには両手で拳銃を持つ和葉の姿があった
五分前
昨晩ロブルスに大事な話があると呼び出された澪は警戒しながらパンドラの扉を叩いた
「あれ、自分から来いって言ったくせに留守かしら」
とはいえ外で待つのも退屈なので勝手にお邪魔させてもらうことにした
中は相変わらず資料散らかっており汚かったが今日は酒の匂いがしなかった、いつもテーブルで屯している魔眼使い達も留守しているようだ
「普段とは違う景色っていうのも何だか不気味ね」
澪は部屋の奥へと進んで行く、普段はロブルスが入れてくれない場所だが今日は特別だ、遅刻の埋め合わせだと思ってもらおう
「あら、これ何の資料かしら?」
大抵のものは眼を通すだけで理解出来るのだがそれは視えなかった
魔眼を解除して肉眼でその文を読む、そして驚く
「これって...」
その資料は今まで澪がどれだけ調べても知り得なかった情報が事細かに記載されていた
「何でロブルスさんがこんなのを持ってるかは知らないけど一旦お借りしようかしら」
澪は鞄を開けて資料をファイルに仕舞おうとする
だがそれは罠であった、資料に夢中になっていた澪は背後から迫る影に気づかなかった
何かの気配を感じて振り返った時にはもう遅い、パン!銃声が鳴り響き澪の心臓は貫かれる
「あなた、何で...!」
澪は拳銃を持つ人物の顔を見て驚く、たった今脅威では無くなった筈の人間が自身の心臓を貫いている、驚くのは当然のことだ
それは運命であった、昨晩あの電話に出た時点で澪の死亡は確定していた、ならばこの結末も当然である
だが運命は少女のある一言で変わる
「止まって!」
「神宮..優香..!」
彼女は驚きと共に声を上げる、だがすぐにその身体は動かなくなる
神宮優香がこの場に居ることを最も驚いたのは澪であろう、だが和葉も予期せぬ登場人物に驚きを隠せない
「あなたは誰...?」
その時ドタドタと派手に音を立てながら部屋に入ってくる者がいた
「叔母さま?」
神奈は倒れている澪と拳銃を持った叔母を見て間違っていたらいいのにと願いながら尋ねる
だがその返事は来なかった、和葉は身を翻しパンドラの奥へと消えて行く
「叔母さま、待ってください!」
追いかけようとする神奈を優香が止める
「救急車を呼びなさい、私の眼も長くは持たない、今は彼女の対処が先だわ」
事態を全て把握するのに頭が全く付いて行っていないが身体は咄嗟にスマホを出していた
しばらくして救急車は到着し澪さんは病院へと運ばれていった
手術室の外に残された私達はしばらく何も出来ずに茫然としていた
「一つ聞いてもいいかしら?」
先に口を開いたのは優香だった、神奈は何も言わずに頷く
「あの方達はどちらもあなたの大切な人なのよね?」
「ええ、そうよ」
気力のない声が静かな待合室に響く
「あなたの叔母さまが彼女を刺したのは明白な事実だわ、あなたは叔母さまを許せるの?」
その質問は心に突き刺さった、彼女はこう言っているのだ、いつか決めなくてはならないのなら今決めてしまえ、と
だがそれが正しくても今の私には出来なかった
「わからない、だってまだ何も見えてないのよ」
何故叔母があの様な事をしたのか、魔眼奪いに唆されたのならまだ救いがある
でも私を魔眼の世界に入れない為だとしたら、澪さんを私に近づけさせない為だとしたら、私はどうしようもないくらいの愚か者だ
過去との決別を果たし未来へと歩もうとしているのにその実何一つ見えてなく寧ろ今まで隣に居てくれた大切な人達を巻き込んだわけだ
「悩む必要はないわよ、あなたは今まで私達を色んな人を救ってきたわ、それを繰り返すだけじゃない、あなたは自分の事になると悲観的になる傾向があるわ」
ほぼ初対面に近い人間にここまで言われるとは、さては私の過去でも視えたのか
「私の事を視たのならわかるでしょう、私は色んな人に助けられながら生きてきたの、だから今はどうしようもないのよ!」
神奈の叫びが響く、だがそれでも優香は優しい顔をして問う
「あなたの眼は節穴かしら、ここに居るじゃない?」
彼女は私に協力すると言っているのだ、今まで私を助けてくれた者達の代わりになると
「それとも私じゃ不服かしら?」
その言葉だけでも十分だと言ってやりたかった、そんな言葉を掛けてくれるだけでも、と
「そんな事ないわ、十分過ぎるくらい優秀なサポーターよ」
神奈は涙を堪えて答える、その時手術室のランプが消える
担架に乗せられた澪さんが手術室から出てくる
「容態は!」
「大事には至っていないですよ、幸いにもこれがありましたからね」
医師が見せたのは銃弾により砕けた小型カメラだった
「まあ、それにしても出血が少なかったというのもありますね、あれだけの時間がかかったのにまるで止血されている様でしたから」
「神奈ちゃん...」
「澪さん!」
「緋夏斗から私の鞄を受け取って部屋に置いといてもらえるかしら...」
澪さんは掠れ声でそれだけ告げると運ばれていく
澪さんはわざわざ鞄を置いておけなど頼み人間ではない、だとしたら澪さんの家に何かあると疑うべきだろう
私がそう考えていると高宮さんらしき人が廊下の奥からやって来る、そして神宮優香を見て少し驚いたそぶりを見せる
「高宮緋夏斗さんですよね、澪さんから聞いてます」
「じゃあ君が未南雲神奈ちゃんか、それで隣の子は...」
「この間はごめんなさい!」
それだけ聞くと緋夏斗はニッコリと笑った
「そこまで心配しなくても大丈夫だよ、本来なら君からも事情を聞くべきだろうけど、止められた僕以外の全員が止まっていた間別の記憶を何故か持っていてね、何事も無かったかのようにそれぞれの生活に戻れたんだ、それなら私もその件については忘れようかと思ってね」
彼は慣れていないそぶりでウィンクをする
不思議な話だ、彼らの記憶を弄り神宮優香のした事を無かったことにする、その行為に何の意味があるのだろうか
遊園地での出来事もそうだが魔眼奪いがしたにしては動機が全く謎である、まるで善と悪の二つの人格が存在するようにすら思える
そんな事を私が考えていると高宮さんは真剣な顔をして私に尋ねる
「それよりも今の問題は未南雲和葉、つまり君の叔母にあたる者だ、いや正確には我々は一切彼女の素性を掴めていないんだ、君の叔母だということも周辺での聞き込みでわかったことだ、一体彼女は何者なんだい?」
「私も叔母の事はよく知らないんです、戸籍に名前が無いのも少し前に澪さんから聞かされました」
私が一番彼女の側にいたのに何も知らない、その事が少し悔しかった
「そうかい、まあ素性を掴む事は我々には重要じゃない、それで相談なんだが警察が君の家に常駐していても構わないかい?」
「それじゃあ私達は今夜は澪さんの家に居ます、ちょうど鞄を届けてくれって言われてたんです」
「それなら良かった、それと後一つ優香ちゃんに質問だ、魔眼奪いは誰なんだい?」
そうだ、色んなことが起こり過ぎてすっかり当初の目的を忘れていた、私は彼女に魔眼奪いについて聞きたかったのだ
「それが何も覚えて無いのよ、誰かが隣にいた気はするのだけどそれが誰だかわからないの」
「そうか、南波紫苑の件でまさかとは思っていたがやはりか...」
「まだ可能性は残ってます、優香、あなたの魔眼で私の過去を視せてもらえる?」
過去を知りたければ神宮優香に会え、彼はそう言った、だったらきっとこれで正解に辿り着く
優香が私の手に触れる、その瞬間私はあの場所にいた
私の運命が変わった日、選択の魔眼では視れなかったその先を見るために私はまた悲劇を見る
「ここが未南雲家か、偶然とは言えようやく見つける事ができた!」
目の前には魔眼奪いの姿がある、前と同じ光景だ
「悠人...お前だけでも逃げろ!」
眼を抑えて苦しんでいる父が私に向かって叫ぶ
「あなた一体何が...」
台所から母が出て来る、そして私の身体は勝手に動き出す
「僕の家族に何するんだ!」
「貴様も魔眼使いか、その目は頂く!」
魔眼奪いが迫って来る、ここまでは知っている、私が知らないこの先で何が起こるのか、ずっと知りたかった事なのに私は真実を知るのが少し怖かった
手が魔眼奪いに触れる、その瞬間私は知ってしまう、あの人が魔眼奪いであったと
「ゔぁあ!その力は...!」
魔眼奪いは2人に別れた、何も半分になったわけではない、2つの生命体になったのだ
1人は抜け殻のように倒れこんだ正体不明の魔眼奪いの姿、そしてもう1人は...
「ロブルス!」
疑ってはいた、だが惨虐な魔眼奪いの姿と普段の彼の姿はどうしても重ならなかった
彼は境界のはっきりしていない身体で告げる
「ありがとう、君のお陰で私は真に人を救える!」
「がはっ」
ロブルスはその眼で悠人を視ながらその拳を心臓へと突き出した、そして家族を次々と殺していく
最後にロブルスは台所の端でで震えている私を見つけて手を下そうとする
その時ドアが勢いよく開いて玄関から誰かの声がする
「警察には通報したから観念なさい!」
それを聞くとロブルスはもう1つの体を抱き抱えて破れた窓から去っていく
「酷い、誰がこんなことを...」
先程叫びを上げた人物は一瞬くらりとなり倒れそうになるがどうにか意識を保って生きている子供に話しかける
「大丈夫よ神奈ちゃん、大丈夫だから」
その声は震えていた、大切な誰かを失った時の声、それを私は知っていた
「澪さん、何で...」
その姿は新崎澪に間違いなかった、だけど彼女が私を知っているなんて一言も...
澪は携帯を取り出すと警察に連絡を入れる、そして何かを感じたかのようにリビングへと去って行く
残された未南雲神奈は何一つ考えることが出来ずにただ震えていた
今の私はあの頃とちっとも変わってなどいなかった、いつも何かに絶望を与えられ1人で震えている私を誰かが助けてくれる
そうだ、私は決して救う側では無かった、ただ世界に証明したいだけだったのだ、人は誰もが救われるべきであると
痛い、燃えるような痛みが全身を駆け巡る、肉体的に感じるのではない、私の心が激情で貫かれる
「だったら次はあなたの証明をすればいいじゃない」
それは私の幻想か、それとも魔眼の力で時間に干渉してきた彼女の言葉か
どちらか限定する必要はない、だって私の心もそうしろと燃え盛っているから、ロブルスに対する怒りでも憎しみでもない、これは未来に対する希望の感情だ
決意を新たにした時私の心は現実に引き戻される
「魔眼奪いの正体はわかったわ、魔眼の研究者にしてパンドラの所有者、ロブルスこそが魔眼奪いよ」
それを聞いた彼らはふーんとまるで予想していたことの種明かしをされたようだった
「ちょっと、何でそんなに冷静でいられるわけ?」
「ロブルスさんも素性が掴めない人の1人だからね、前から不思議だとは思っていたけど何故か疑おうとは思わなかったんだ」
「私は今の神奈の一言で記憶にかかってた靄が晴れたように思い出したわ、でも彼は私を紫陽花から引き取って育ててくれた人、例えそれが魔眼を利用する為だとしても恩義が無いわけじゃ無いわ、全面的に殺し合うのならそれには参加しかねるわね」
冷静に落ち着いている2人とは違って私は戸惑っていた、ロブルスの事は私も怪しいとは思っていた
だが澪さんは別だ、澪さんが何故あの場に居たのか、そしてそれを私に伝えなかったのは何故なのか
「ひとまず澪さんの家に行くしかないわね」
もし澪さんが私に出会った過去を覚えていたとしたら、それならば時の魔眼でその光景まで視る可能性くらいは想定していたはずだ
だったら先程の発言はきっと私へのメッセージだ、彼女の家にはきっと何かがある
「それじゃあ僕が車で送ろう、その間に2人ばかり部下を君の家に送る、それで構わないかい?」
「その人達は魔眼の事は?」
「知っている、知識だけだがね、彼らは僕とは違って魔眼を持った経験は無い、だけど魔眼絡みの事件に何回も関わっている刑事達だ、そこは信頼してもらって構わないよ」
それなら良かった、私達は何の気兼ねもなく彼のパトカーで澪さんの家まで送ってもらった
時刻は夜の12時を回っている、昔母と訪れた懐かしい景色も暗い夜に呑み込まれ見慣れぬ景色と化す
「随分と静かね、なんだか落ち着かないわ」
歩行者の姿はなく音もない夜の闇は何か神秘的なものを感じる反面、自分の存在が無の中に溶け込んで消えてしまうのではないかという恐怖を感じる
「事件が起こっただって?魔眼担当は今忙しいんだ、後にしてもらえると助かるんだが」
どうやら近場で何かあったらしい、当然ではあるが緋夏斗さんも普通の刑事として働いているのかと思った
「そうかならしょうがないな、こっちで手の空いてるのは僕だけだ、すぐに向かうから待機していてくれ」
緋夏斗はパトカーから出ると神奈に鞄を渡す
「すまないが魔眼絡みの事件のようだ、こっちは任せてもいいかい?」
「わかりました、ちなみに何があったんですか?」
「この近くのアパートで爆破事件があったらしい、何でもビル爆破に匹敵するレベルの爆発らしくてね、アパートは全壊、そこに住んでいた魔眼使い達も死亡したようだ」
「魔眼使いが爆破させたのじゃなくて被害者側なのね」
私も優香と同意見だった、時を止める魔眼があるんだから視たものを爆破する魔眼があってもおかしくは無いだろう
「その可能性も十分あり得るよ、なんせ亡くなった魔眼使いはいつもパンドラで屯していた5人だ、手を下したのはロブルスと見て間違いないだろう」
ロブルスの姿はパンドラには無かった、彼の目的は不明だ、だが彼が何かに向けて本格的に動き出した事だけは確かだ
「何かあったらすぐに連絡して下さい、ロブルスは魔眼使いです、絶対に眼を見てはいけません」
「ありがとう神奈ちゃん、僕らは魔眼使いを何人も相手にしてきた、でも今回は特別みたいだ、頼れる人には頼っていくよ」
彼はそう言ってドアを閉めエンジンをかける
「さあ神奈、私達も行くわよ」
私は鞄の横に付けられている鍵を出して鍵穴に入れる、この先に真実がある
輝く星々すらも隠すほどの厚い雲が月を隠した時私はドアを開けた
どうも新作を思いついてから旧作が踏み止まっていたダメ作者のつばさです
それでも何とか「魔眼少女」を書き終えることが出来ました
そして少しでもこの小説を色んな人に見てもらうためにある企画を思いつきました
それこそがアニメの一挙放送ならぬ、小説の一挙掲載です!
というわけで本日の8:00〜18:00にアニメよろしく30分に一話投稿致します
またTwitterで#魔眼少女で感想を呟いてもらえれば作者が突撃しに行きます!
是非色んな方と感想を言い合ってもらえればと思います
作者Twitter https://mobile.twitter.com/atorietsubasa
時間ピッタリに上げられそうなものは予約掲載でする都合上後書きはテンプレのみになります




