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魔眼少女  作者: つばさ
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第3章「偽りの時間-結」

いよいよ魔眼少女の掲載を始める時がやってきました!

本日の8:00〜18:00までの短いあいだですがどうぞご覧下さい

詳しい詳細は後書きにて

Twitterで#魔眼少女で感想を呟いてもらえると見やすくて嬉しいです

偽りの時間-結


ピピピピッピピピピッ

目覚ましが鳴る、かれこれ10度目ほどの反逆だろうか、いくら起きなくてはならないからって30分も前から1分ごとに目覚ましをセットするとは我ながら馬鹿らしい、と昨日の自分を侮辱したところで流石にそろそろ起きることにする

「ふぁーあ、ほらあんたも起きるわよ」

横で寝ている千夏から布団を引っぺがしてカーテンを開ける

「ちょっと、眩しいじゃない!」

千夏は必死に布団を被ろうとするがそうはさせない、私だって寝ていられるなら布団を被りたいのだ

千夏はそれでもベッドに顔を向けて寝ようとする

「もう仕方ないわね、あと10分したら起こしにくるからすぐに着替えなさいよ?」

神奈は服を着替えながら千夏の頭をトントンとする

「わかったわー、うん...」

どうやら完全に意識があちら側に行ってしまったようだ、まったく60年近く生きても精神は身体に合わさっているのだろうか、いや彼女の場合は60歳でもこの状態の可能性もあるか

どっちでも同じことなので考えるのが馬鹿馬鹿しくなってくる、神奈はパジャマを仕舞って朝食を作りに行く

約10分後

「ほら、10分たったわよ!」

フライパンをカンカンと叩きながら少女の身体を揺さぶる姿はまるで母と娘だ

「わかってるわよ、起きるから静かにしなさい」

千夏はベッドから滑り落ちるように床にぶつかってふぎゃっと声を上げる

「ほら早く着替えなさい、朝食ももう出来てるわよ」

千夏は寝ぼけたまま目を擦りながら着替える

それからなんだかんだで出発の準備を整えた私達は遊園地のすぐそこまで来た

「なんだか人が少ないわね」

ここは50年以上前に建てられたにも関わらずこの街の中でも休日なら一番と言っていいほど人が集まる場所だ、いくら平日だからといって周囲に誰も居ないだなんてありえない

「この雰囲気どっかで経験したような...、そうだ初めてパンドラに行った時もこんな感じだったんだ」

幽霊も悪霊も人間も何も居ない、その状況は容易に起こりそうに思えるが実際は自然に起こり得るものではない

何故ならどれだけの偶然が重なろうとこの世界が空白を作ることなど無いのだ、世界は常に何かで埋まっていなければ気が済まなく、そしてその在り方はいつか人だった者によって満たされている、それがこの世界だ

「どうやら私達だけが招かれているみたいね、魔眼奪いがどこまで加担しているのかは知らないけれど警戒していくわよ」

閑散としたチケット売り場はまるで田舎の駅前のようだ、入場ゲートの方にも人の気配は一切なく不気味なほど静かであった

「ここまで人がいないなら入っちゃっても構わないわよね?」

一応チケット代くらいは持ってきているが渡す相手も阻む人間もここにはいない

「うーん、どうするべきかしらね」

その時背後からトンットンッと足音が聞こえる

「誰!」

念のために持ってきていた裏刻刀に手をかける

(わたくし)は怪しいものではございませんよ、本日お二人を導くために配属された案内役のカミオと申します」

その見た目はただ一点異様なまでに長い髪を除けば道化師と言えば容易に伝わるだろう、配属されたと言っているが魔眼奪いの差し金だろうか

「残念だけど案内は要らないわ、行くわよ千夏!」

神奈は千夏の手を引っ張って入口へと走り出す、カミオは一歩も動く事なくその様子を眺めている

「ちょっと、あいつの事はどうすんのよ!」

「あんなのに一々絡んでたら身がもたないわよ、そもそも神宮優香に私達を襲う意思がなくても魔眼奪いは別でしょ」

息を切らせながらもどうにかゲート前まで辿り着く

「はあはあ、どうやら追ってきてないみたいね、好都合よ早く入りましょう」

ゴンっ鈍い音を立てて私の頭が何かにぶつかる

「痛っ!何よこれ」

そこには見えない何かがあった、それは壁かもしれないし建物かもしれない、1つ確かにわかるのは私の眼で視ても何も視えないということだけだった

「まったく、お嬢様方はお転婆で困りますなあ、物事には手順があるのですよ」

道化師は帽子を脱ぐとそこから2つのカップとボールを取り出す

「これより始まるは第1のゲーム、クリア商品はこの遊園地への入場権でございます!」

高笑いする道化師に神奈はため息をつく

「随分面倒な事をさせるのね、私達を招き入れたいのかそれとも逆か、まあどっちでもいいのだけど」

「どちらもですよ、ゲームオーバーの代償はあなたの時間ですから」

「時間って優香ちゃんと同じ...」

「それなら失敗してもあなたの眼で止められるんじゃ」

「出来ると思う、けど確証は出来ないわ、私の眼は何でもかんでも止められるわけじゃないから」

ならば彼女に頼るのは危険だ、一回で勝負をつけなければ

「そのゲーム乗ったわ、始めましょう」

「ではまずプレイ料金をいただきましょう、あなたの腰についている刀なんてどうでしょうか?」

「それは流石に渡せないわ、お金じゃダメなわけ?」

ここで裏刻刀を手放せばこの先何かがあった時に強行突破出来なくなる

「ではあなた方の旅はここで終わりですがそれでもよろしいのですか?」

こちらの足元を見ている挑発的な態度だ、だが私達は逆らえない、現に彼の持つ入場権が無いとスタートにすら立てない

「わかったわよ、これでいいんでしょう?」

神奈は裏刻刀をカミオに向けて投げ捨てる

彼は驚くそぶりもなくそれを難なくキャッチして帽子の中に仕舞う、帽子は長い刀を何事も無かったかのように呑み込む

「どうやらマジシャンじゃなくて本物(まがんつかい)のようね」

「それではゲームを始めましょう、ルールは簡単です、私が今からこのカップにボールを入れてシャッフルします、あなたはそれを見てどちらにボールが入っているかを当てる、ただそれだけです、但しあなたが見る事が出来るのは指定した1つだけです」

一見すると2分の1の確率を当てるだけの単純なゲームだが神奈には1つ気がかりな事があった

「一応確認したいのだけど、あなたは’必ずどちらかのカップにボールを入れる’のよね?」

「ええ、勿論ですよ」

道化師の口元が歪む、視なくてもわかる、こいつはソレをする

「何心配してるのよ、あなたの眼があれば勝ったも同然じゃない」

それもそうだ、こいつに二回質問するだけで答えは出る

「それじゃあ始めますよ」

手慣れた手つきでコップをどんどん入れ替えていく、途中までは何とかボールを終えていたが見失ってしまう

「さあ、選んでください」

「その前に2つほど質問してもいいかしら?」

「もちろん構いませんよ、それに意味は無いと思われますが」

それさえ出来ればこっちの勝ちだっての、と心の中で思いながら魔眼を発動する

「えっ何も視えない」

「何言ってるのよ、まだ何も質問してないんだから当然じゃない」

千夏は疑問を口にするが道化師はこの結果が見えていたように口角を上げる

「違うのよ、こいつ魂が無い...」

生きている人間は必ず肉体と魂を同時に持たなければ活動出来ない、ならば魂が欠けていても動いているこいつは...

「私はホムンクルス、世間一般で言う人造人間のようなものですからね、さあ早く選んでください」

カミオの眼が赤く輝く、その力を私はよく知っていた、かつて私が世界の裏側に葬ったはずの輝きに限りなく近いものがそこにはあった

「選択の魔眼、何であんたがそれを持ってるか知らないけれどその力は良くないものよ、だからゲームが終わったら私が消してあげる」

「このゲームが終われば私は消えるのでその心配は不要ですよ、さあ早く選びなさい」

選ぶものなどとうに決めている、多少の賭けにはなるがこいつの性格を考えればまずは間違いないだろう

千夏が不安そうな目で私を見る

「大丈夫よ、視えなくてもわかるわ、ボールが入っているのは右側よ」

「では右側のカップを選ぶのですね?」

道化師は勝ち誇ったように尋ねる

「いえ、私が選ぶのは左側よ、あなたはどちらかに必ずボールを入れるんだから左に何も入ってなければ右に入っている証明になる、違うかしら?」

普通の人間ならウッと言うような場面だがこいつはホムンクルスだ、だが冷静に勝ちを確信していた笑みは消え失せる

私が開けた左側のカップにはボールは入っていない

当然の事だ、何故なら彼はボールをどちらにも入れていないのだから

カップを動かしている隙に袖口にでも隠したのだろう、それは卑怯なやり方だがそうする事が確信出来れば破るのは容易い

「私の負けですね、入場権はお二人に譲渡致しました、あなた方はこの先の地獄でいつまで生き残れるでしょうか?」

不気味な一言を残して彼の存在は砕けて砂のように消えていった

そう見えただけか、はたまた実際にそうなったのかはわからない、だけどこれだけは確かに言える、私達は何とか始めの試練をクリアしたようだ

「変な人だったわね、私達を入れたくないならゲームなんてしなければ良かったのに」

あいつのさっきの態度からして敵の想定では私達はどこまで行こうが同じ結末を辿るのだろう、だが私がそんな事にはさせない

「本当よね、さあ早く行きましょう!」

私達はゲートをくぐる、今度はちゃんと通れたようだ、だが安心するのはまだ早い、次に誰が現れてもいいように気を緩めはしない

だが目の前に待っていた光景は想定していたものとはあまりにも違いすぎていて絶句する

賑わいという側面で見ればこの空間は人で溢れていて平日にしては繁盛している方だろう、静寂という面から見ればこの空間はまるで閉園後の真夜中の遊園地だ、人の温もりは一切無くそこにいる人々はまるで死体だ

賑わいと静寂はまるで昼と夜のような関係性である、そして今ここには双方が存在する

「ここら辺一帯の空間が止められてるっていうわけ?」

その光景はあまりに信じ難かった

これだけの力を秘めている魔眼に私達は挑もうとしているのだ、そう思うだけで身の毛がよだつ

「早く止めないと、このままじゃ優香ちゃんの身がもたない」

「神宮優香の身がもたないってどういう事?」

私の反応に彼女は呆れたように答える

「あなた魔眼使いなのに何も知らないのね、暴走した魔眼を使い続けるとその代償が身体に現れるの、こんな大人数を空間ごと止めるなんて自殺行為よ」

「彼女は既に結構な人数を止めてるけれどまだ問題ないわけ?」

「優香ちゃんの時間が死の期限の概念すらも超えて完全に止まってるのも屋敷の人達を全員止めた代償なのよ、きっとその影響で代償がまだ現れてないだけだと思うわ」

死の期限を止めるなど本来ならありえない、だが暴走した魔眼の代償がそれを為したということだろう

「随分と騒がしいどすなあハカマさん」

「そうですねオビトさん、せっかく騒がしい人達が静かになったと思ったらどうやら優香さんのお客さんのようですね」

日本人形のような端正な顔立ちをした着物を着た男女が近づいてくる

「あなた達もカミオとかいうホムンクルスと同じってことでいいかしら?」

「うちらは伝統(ストーリー)に沿った由緒正しい人形(ホムンクルス)や、あんな即興の道化師無勢と同じにされたら困りますやん」

「そんな侮辱みたいなことを言われたらこちらも黙ってはいられませんね、やってしまいましょうかオビトさん」

「そうどすなハカマさん、うちらの本気を見せたりましょう」

2人の眼が赤と青に輝く、その光は交じり紫の輝きとなって空間を照らす

「ちょっと何よこれ、眼を見てないのに...」

「あいつらが空間を視てるのよ、その中にいる私はあくまでもオマケってわけよ」

神奈の呟きが終わる前に二人は光に包まれる

「空間断絶終了、いつでもええでハカマさん」

「転移先を設定、いきますよオビトさん」

そして二人同時に声を上げる

「亜空の眼(転移の眼)、擬似展開!」

光が消える、また遊園地(せかい)は独りぼっちになった


ここは辺り一面が鏡で満たされたミラーハウス、こっちに引っ越してきてからこの遊園地に一度だけ訪れたことがある、その時にアトラクションのミラーハウスに来た覚えはあるが今のこれは明らかに異質なものだ

彷徨うだけで何か大切な物を失いそうな気がする、そんな場所だ

「はあ、生きてるだけマシって思うべきなのかしらね」

既にこの場に飛ばされてから10分ほど歩き回っているが一向に出口が見つからない

「それなら一生ここに残ってればいいじゃない」

「誰っ!」

周囲を見渡すが鏡に映る自分しか見えない

「隠れてないで出てきなさいよ!」

神奈の叫び声は反響して何重にも響く

「そんなに焦らなくても私は消えないわよ、だって私ってあなたじゃない?」

正面の鏡に映る私が勝手に声を上げる

「そうよね、私達は逃げも隠れもしないわ、だってあなただもの」

次は背後から声がする

そうか、ここはそういう世界なのだ、だったら現状を受け入れてどうにかするしかない

「状況は理解したわ、あなた達の目的はなんなの?」

「随分と冷静なのね、まあ私だからそんなもんだとは思ってたけど」

「ここは自身を失う鏡の迷宮、ここから出るための方法はただ1つ、自己を確かに保つことよ」

鏡に映った私は素直に答える、我ながら聞き分けが良くて助かる

「それなら出るのは簡単だわ、なんたって私の事は私自身が一番理解してるもの」

それを聞くと鏡の中の私達は笑い始める

「ふふふっあなた何にもわかってないのね、何一つ理解してないからここから出られないのよ」

「何言ってるのよ、私が何を理解してないって言いたいわけ?」

「そうね、例えば... 」

鏡面の私の眼が輝く

「ボクの在り方とかだよ、未南雲神奈」

その存在は歪んでいる、そう誰よりも知っているのは私の筈なのに私自身はそれを知らない

「そんなの私じゃないわ、(あなた)は一体...」

「ボクは未南雲神奈だよ、弟の魔眼を使っているという無意識下の自覚が生み出したキミ自身だ」

「じゃああなたは...」

「ボクはキミだ、そしてキミはボクだ、何を疑問に思う?」

反響する声に意識が呑み込まれる

「私は誰...?」

その一言はこの空間では禁忌であった、身体(いしき)意識(からだ)が失われていく、最早彼女には自分というものが存在しない

鏡の中と内が入れ替わるように世界は反転する

「あれっ、何してたんだっけ?そもそも私は誰だっけ?」

気がついた時には何もかもを失っていた、記憶も彼女自身の在り方もその存在すらも虚構に呑まれた

そこまで追い詰められ、鏡の外にいる私を見てやっと気づいた、ボク(わたし)が誰だなんてどうでも良かったのだ、何であろうと生き(もくてき)は変わらない

過去を知って未来に繋げる為に今を生きる、その在り方そのものが私なのだから

「ボクがキミの代わりになろう、だから鏡の中で(そっち)でゆっくり休みなよ」

私ではない(だれか)の声が聞こえる、それに従えるならどんなに楽だっただろう、だけど私は出来ない、そんな事で終わらせられるほど私の未来は軽くない

「ごめんなさい、その提案には乗れないわ」

神奈の眼が輝く

「だってさ、これはボクの人生だからね、自分で蹴りをつけさせてもらうよ!」

鏡を挟んで向こう側にいる自身を斬りつける

「馬鹿な、この状況で自身を見つけたというのですか...!」

化けの皮が剥がれる、鏡の外の私の内からハカマが現れる

「あなたは完璧に偽装し過ぎたのよ、適当に綻ばせておけば私が気がつくことも無かったのにね」

ホムンクルスは未南雲神奈を完璧にコピーした、故に彼女は自らの在り方に気づいてしまった、もし彼が人であったのなら或いは勝利していたのかもしれない

「なるほど、それは確かに当然ですね...」

ハカマは負けを認めて潔く消えていく

すると迷宮は崩壊し始める

「さあ、脱出するとしましょうか」

今の自身なら容易に抜け出せる、その確信を胸に秘めて歩みを進める


ジー、映写機が何も写さずに空回りしている

大観衆が同時に座れるよう大量の席が用意されている上映室のど真ん中で少女がたった一人座っている

「あんたはん、ここから抜け出そうとかそんな事は思わへんの?」

EXITと書かれた扉から女が一人出てくる

「確かオビトさんだったかしら?その質問は愚問よ、だって魔眼でできた空間から勝手に出られるはずがないじゃない」

その答えを聞くとオビトは少し驚いた様子で答える

「あんたも神宮優香と同じなんやな、少女でありながらその思考はうちよりも叔母さんっていうわけや」

「あらホムンクルスに年齢の事を言われたくは無いわね、そんな事よりも優香ちゃんの居場所を知ってるの?」

その静かな声は怒りを含んでいた

「あんたらがうちらに負けるなんて思わずに遊園地の中に作られた結界の中で健気にあんたらを待っとるで」

オビトは悪戯に微笑む、その言葉は強がりなどではない、彼女はそれだけの確信を持っている

「だったらあなたに勝ってとっととこんな所から出ないといけないわ、早く始めましょう」

対する千夏の言葉には確信など一つもない、ただ決意だけを持って彼女に挑もうとしている

「じゃあ始めるとしましょか、今から始まるは悲劇の物語、あまりの絶望に押しつぶされるよう気をつけてご覧あれ!」

ジー、何も写していないはずの映写機から映像が映し出される

何もない空間に裏刻刀を携えペンダントを付けた神奈と眼を抑えている優香の姿があった

「幻影なんて出されても騙されないわよ」

「幻影やなんて言い掛かりつけへんで欲しいわ、これは結界の中をうちの魔眼で映してるだけやで」

オビトは携帯電話を取り出すとどこかに電話をかける、すると映像の中の神奈がスマホを取り出す

「どなたかしら?」

オビトは携帯を千夏に渡す

「もしもし、本当にあなたは未南雲神奈なのかしら?」

「そうよ、それよりもあなた今どこに居るわけ?まさかまだ囚われているのかしら?」

間違えなくその声は神奈であった、だがその姿はさっきまで隣にいたのに遠いものに感じる

「すぐに抜け出すから少し待ってなさい」

何を待たせるのか、そんな事は自分でも無意識に自覚していた

「ごめんなさいね、あなたには悪いけど彼女が力を抑えるのももう限界のようなのよ」

優香はさっきから一言も話していない、もしこのまま彼女を待たせていたら待つのは最悪の結末かもしれない

「もう少しだけ待って、すぐに行くわ」

「残念だけどタイムオーバーよ、私を恨むのは勝手だけれど自分の事だけは恨まないでね」

神奈は裏刻刀を振り上げる、そして一歩も動かない優香の首に向かってそれを振り下げる

「ダメ!」

その瞬間映像が消えた

「これがあんたらの末路や、こんな事になることくらいあんたなら予測しとったやろ?

だけど予測と現実は重みが違うんや、それがわかったらさっさと降伏して未南雲神奈に復讐するなり逃げるなりするんやな、あんたが何を選んでもうちは止めへんで」

彼女の言う通りだ、追い詰められたら今を生きる人達を守る為にも未南雲神奈がその選択を取ることくらい予想は出来た

だけど彼女と過ごした、たった数日の日々がその考えを無意識に否定していた、彼女なら優香ちゃんも私すらも救ってくれるのではないかと思ってしまった

「あなたは彼女の選択が正しいと思う?」

優香はオビトに問う

「うちはホムンクルスやから細かいことはわからんけどな、今を生きるのに必死な人間なんてこんなもんなんとちゃうの?所詮は自分のことしか考えてへんのよ、あんたももう人じゃないんやからわかるんちゃう?」

「やっぱりそうだよね、生きてる人なんてそんなものなのかしら」

オビトの口角が上がる

「だけどね、生きてる人は信じなくても未南雲神奈は信じてみたいのよ」

スクリーンに火がつく、偽りの中で見出された真実は燃え盛る紅炎となる

「何故、何故何故何故何故!あんたは信じるんや!裏切りの可能性を持つ者について行く意味なんて無いで!」

そうだ意味など無い、だけど信じるべきだと思ったのだ

「私には人の心は視えないわ、でも彼女ならきっと私達を救ってくれるって思ったのよ、私にそう思わせただけであなたの幻影よりも信じるに値するわよ!」

「うちはそないな事で負けてもうたんやな、ほんとに人の心はわからへんわ」

オビトは名残惜しそうに消えていく

「ふう、いよいよ大詰めかしらね」

燃え盛る炎の中、千夏は出口から出て行く


「やっと来た、遅かったわね」

千夏は気がつくとさっきまで映像で見ていた何も無い空間にいた

目の前には裏刻刀を携えた神奈の姿がある

「その刀は...」

「ここに落ちてたのよね、手元に戻って良かったわ、これでも一応家宝なのよね」

千夏は少しホッとした、やはり先程見たのは幻影だったわけだ

「そんな事よりもいよいよゴールみたいよ、きっとその扉の先に彼女は待っているわ」

「わかってるわよ、もう覚悟は出来てるわ、行きましょう」

扉を開けようとする手を神奈が掴む

「その前に一つだけ、そろそろ真実を教えてくれてもいいんじゃない、神宮優香さん?」

ふざけているわけではない、彼女が言っていることは何より自分が一番理解している

だけど本当にここまで辿り着いているとは驚きだ

「いつ気がついたのかしら?」

「ある人から送られてきた写真であなたが昔書いた手紙を見たのよ、それは一目見て描いた人が左利きだってわかるくらいインクが右に掠れてたわ、そしてもう一枚の写真はあなたと天海千夏が楽しそうに食事をしていたものだったわ」

「なるほどね、利き手で私達が入れ替わってる事に気付いたのね、やるじゃない」

「こっちはネタバラシしたんだからそっちもちゃんと教えなさいよ?」

「わかってるわよ、少し長くなるけど覚悟はしておくのよ」



今からちょっと昔の話、森の小屋で母親と暮らしていた天海千夏と言う名の少女は散歩に出かけました

するとそこで出会ったのは綺麗な服を着ていてまるで絵本の中から出てきたかのような同じ年頃の少女でした、彼女の名は神宮優香といいました

それからというもの彼女達は何度も森で会うようになりました、そしてある日千夏は優香から誕生会に招待されました

楽しみすぎてなかなか寝付けなかった千夏は寝坊してしまいました、そして彼女の為に買った名前入りのペンダントを携えて急いで優香の家に向かって走りました

今日は2人の7歳の誕生日、やっと大人の目を気にせずに堂々と2人で遊ぶ事が出来ると胸をワクワクさせていました

だけれど彼女を待っていたのは彼女が夢見た絢爛豪華なパーティーなどではありませんでした

部屋に入った彼女を待っていたのは部屋に充満する鉄と煙りの香り、そして床一面に広がる血の海の中で強盗犯らしき男達に銃口を向けられている優香の姿だった

「えっ...」

幼い少女の思考では何が起こったのかわからず思わず声を出してしまう

「おや、まだ生き残りがいたようだ、ひょっとしてパーティーに招待されたお友達かな?」

その言葉を聞いて優香が顔を上げる

「千夏ちゃん、逃げて!」

「やっぱりそうなんだね、友達が自分の前で何も出来ずに殺されたらキミの魔眼は暴走するのかな?」

魔眼、それは彼女達が7つまで持つ力の名前だ、それを彼らは知っていた、後から考えればこの襲撃は誰かに仕組まれたものだったのかもしれない

「さようなら不幸なお嬢さん」

引き金が引かれる、私は死ぬんだ、7歳の頃の私でもすぐに悟れた

だが現実(うんめい)は違った、死神は私ではなく友を選んだ

「がはっ....千夏ちゃん、大丈夫?」

優香の胸元が紅く染まる

ドクンッ心臓が強く鼓動する

何故彼女は私の代わりに打たれたのか、何故私は彼女を助けられなかったのか、何故強盗犯(こいつ)は引き金を引いたのか

疑問が、後悔が、怒りが、胸の奥から込み上げる

眼が熱い、だがこれは涙ではない、それならどれだけ救われただろうか

「おい、依頼主の言ってたことを忘れたのか!」

リーダーと思わしき人が声を荒げる

「すみません、でもこいつが...」

「言い訳は後で聞く、取り敢えずこいつを始末してずらかるぞ」

その時少女の眼が輝く

「こいつ、まさか魔眼使いか!」

彼らが気付いた時には遅かった、光は彼女の叫びと共に放たれる

「止まれ!」

その瞬間世界が反転する、時という概念そのものが彼女の眼に吸われる、そして時を失った世界は何事もなかったかのように日常を描く、それこそが天海千夏(わたし)の眼の力

一度だけこの力を使った事がある、その日から前の家族に突き放された、きっと優香ちゃんもこの光景を見たら私を怖がるだろう、悲しい事にもうそんな事も起きないのだが

「千夏ちゃん...」

おかしな話だ、時が止まったこの世界で動けるのは私だけのはず、なのに彼女は私の名を呼んで笑顔で告げる

「生きてて良かった...」

今にも燃え尽きそうな声は死が近いことを察させた、そんな状況でも彼女は笑顔を絶やさない

「優香ちゃん...私の力が怖くないの?」

「もちろんよ、だってそのおかげあなたは今生きてるわ、そして私は大切な友達を失わずに済んだわ」

「でも、私は助けられなかった!」

取り乱す私を見て彼女は優しく微笑む

「そんなに自分が許せないのならこうしましょう、今日からあなたは神宮優香(わたし)として生きなさい、その代わりに私は天海千夏として死ぬ、それなら(あなた)もあなたも生きていられるでしょう?」

無茶苦茶な考えだ、でもその時の私にはそれだけでも十分救いだった

私は黙ってうなづく

「そうだ...今日は誕生日プレゼントを持ってきたのだったわ」

彼女は震える手でポケットからペンダントを取り出す

「それは...」

私が彼女に贈ろうとした物と全く同じ物だ、当然といえばそれまでだが私はそれが何よりも嬉しかった

「私も」

ポケットからペンダントを取り出して彼女と交換する

「本当は手紙も書いてきたのだけど部屋に忘れてきてしまったわ...」

命の燈が消えようとしているのにも関わらず彼女はまるでうっかり宿題を忘れてしまったかのように微笑む

「大丈夫だよ、私が神宮優香が私に届けるわ」

「それなら良かった...」

彼女は何の悔いも残っていないかのように満面の笑みで静かに息を引き取った

その日から天海千夏(わたし)神宮優香(わたし)になった

「ただ今帰りました」

森の中の小屋に戻った私は笑顔を崩さないようにドアを叩いた

「おや早かったじゃないかい、使用人にでも見つかってつまみ出されたか?」

彼女は部屋の奥で小言を言ってからこちらに来る、そして私の顔を見るなり質問する

「何があったんだい?」

流石に4年間も一緒に暮らしていただけのことはある、どれだけ繕っても私の事はお見通しなのだろう

「実は...」

私は事の経緯を全て話した、屋敷で起こった悲劇も私が神宮優香として生きることにした事も

きっと彼女は馬鹿馬鹿しく思うだろう、4年間娘同然に育ててきた子供が嘘のような告白をしたのだから、だが現実は違った

「いいんじゃないかい、あんたがそうやって生きたいのならそうすればいい、そもそも血も繋がらないのに4年間育ててきた娘だ、今更名前の一つや二つ変わっても気にはしないよ」

タバコを咥えフーと息を吐く

「うゔっお母様...」

目が熱い、涙が溢れる、母がこういう人だとは知っていたがこれほどまでに救われるとは

「それでいいんだよ、3歳の頃のあんたは一切の感情を感じなかったけれどあの子と会ってからは心から楽しそうだった、ならあの子の名前を継ぐのも悪くは無いんじゃないかい?」

それから50年間神宮優香(わたし)は母と森で暮らした、そして母は自らの命の終わりを感じ私を紫陽花と呼ばれるボランティア団体に

預けた、それが私の今までの物語


瞬間私の意識が(かこ)から現実(いま)に引き戻される

「今の記憶は...」

「この先は彼女の魔眼の世界よ、だからそこから少しだけ記憶を引き出させてもらったわ」

記憶を引き出す、そんなことが出来るのは彼女が天海千夏として生きた余りある時間が成せる業だろう

「凄いわね...」

「感心している場合じゃないわよ、彼女の魔眼は明らかに暴走しているわ、早く行かないと間に合わなくなるわ」

私は彼女の助言を受けて歩を進める、しかし彼女は立ち止まっている

「どうしたのよ、早く来なさい」

「ごめんなさい、残念だけど私は行けないの」

「えっ」

「時の魔眼の世界は時間の本流が渦巻いているわ、その中に時の止まっている私が入ったらどうなるか分かったもんじゃないわ」

「そんなのおかしいじゃない、あなたの最後が一人ぼっちで終わっていいはずがない、神宮優香は天海千夏に見送られるべきよ」

私は彼女の手を引く

「でも私は...」

50年以上もの間ずっと悩んでいた、仮に彼女に会えたとしてどう声を掛けたらいいのか、そもそも終わった人間が今更彼女に会うべきなのかと

「悩んでたって仕方がないわよ、それに今の私にはあなたが必要なのよ」

でもようやく気がついた、私は私の終着点に彼女が隣にいて欲しかったのだ、だから50年前私は笑顔で彼女を見送れた

「わかったわよ、行くわ、あなたの為でも彼女の為でもなく私自身の為に」

自己の為の願い、その感情は50年間自分を否定し続けた彼女にとって久しいものだった

扉を開ける2人の手が重なる

彼女を救う、目的は違えどその一点はたしかに重なっていた


時間はどんな空間にもありふれたものである、その量は世界が内包する時を持つものの数に比例する

だがこの空間は決定的に何かを間違えた

限度を超えた時の流れは暴れ狂い暴流となっていた、そして流れの中央には優香がいた

「何よあれ...50年間戦ってきた末路がこんなのだっていうの...」

千夏は絶句する、身体のあちこちに見られる時計盤、半身を飲み込む異形の生命、再生と崩壊を繰り返す身体、それは最早人ではなかった

「暴走した魔眼の成れの果てってとこかしら、大丈夫よ必ず救ってあげるから」

神奈の右眼は輝き裏刻刀を生み出す

「そうよね、私だってここに来たんだから絶対に最後まで見届けるわ!」

千夏の眼の輝きが2人を時間の流れから守る、これが無ければそこにいる、ただそれだけで身体は無事では済まないだろう

「ゔゔ、ゔぁー!」

異形の生命は叫びを上げる、するとその身体から時計を模したような小さな生命体が現れる

「ちょっとした使い魔みたいなものかな、突っ込むからちゃんと付いて来なよ千夏!」

神奈が加速する、四方八方から押し寄せる使い魔を千夏を守りながら斬っていく

「いくら斬っても終わりがないね」

千夏を守りながらでは中々前に進めない、それどころか徐々にこちら側が削られていく

「私の事は気にしないで前に進みなさい、そうじゃないと拉致があかないわ」

「でもそれじゃあ千夏が...」

「自分の身くらい自分で守ってみせるわ、若者は年寄りの心配なんてするもんじゃないわよ!」

千夏は壊れそうな魂で魔眼を覚醒させる、千夏を襲おうとした使い魔は淡く光り2人の思い出となる

「無駄な心配だったみたいだね、それじゃあボクも勝負をつけようか」

神奈が舞う、その瞳に映る異形の生命は瞬きする間もなく消えていく

「ナンデ、なんで動くの!ずっと止まっていれゔぁ、ずっと一緒にイレルノニ!」

魔眼に囚われた彼女に最早自らの意識は無い

神奈の眼に映る真実ですらも彼女は人では無い、もう彼女を救うには魔眼を斬るしか無いのだ

「君がどんなに憐れで儚い少女の果てだとしてもボクは救うよ」

一歩踏み込む、突然の加速に周りを浮く使い魔達は呆然と創造主の運命を見つめる

乱れる時間の中を跳躍する、この距離なら届く

だが神奈は裏刻刀を振るえなかった、渦巻く時間の中心に覚えのある少女の顔があった

怪物(しょうじょ)は最後にはただの少女であったのだ

「それが視えるのは反則だよ...」

グサリ、異形の半身から大きな時計の針が突き出し神奈の腹部を貫く

自身の身体から時の概念が無くなっていく、それでも神奈は必死に抗い針に手を添えて一言呟く

「あなたはもう1人じゃ無いわ」

その時神奈の左眼が蒼く輝く、その光は異形に成り果てた優香を包み込む

光が消えた時そこに残っていたのは気を失った幼い少女だけだった

世界が揺れる、魔眼の世界が消えようとしている事で時の本流が溢れ出そうとしている

「優香ちゃんは!?」

「気を失ってるだけよ、それよりもこの先どうするわけ?」

彼女を止めれば勝手に脱出出来ると思っていたが甘かったようだ、神奈は少し考えて結論を出す

「神宮優香は私が持つわ、あなたはこの世界をどうにかしなさい!」

無茶振りだがどうしようもないことも事実だ

「そんな事言われても限度があるわよ!」

優香の魔眼が治った影響か千夏の魔眼の力が徐々に弱まっていく、このままでは3人とも時の流れに呑まれてしまう

「仕方ないわね、一か八かこの世界を突き破るわよ!」

裏刻刀を手にして足元に振るう、瞬間世界に亀裂が入り行き場を無くしていた時間の流れが押し寄せる、神奈達はその流れに巻き込まれながら世界から脱出した


「うーん、ここは...」

目を開けるとそこは遊園地の中心ににある看板とも言えるアトラクション、観覧車の目の前だった

そして楽しそうな話し声に気を取られ後ろを振り向くと優香と千夏が話しているのが見えた

どうやら起きて早々に話し込んでいるようだ

「あっ起きたのね、今回は凄く助かったわ」

魔眼の暴走を抑えていた先程までとは打って変わって印象が180度違う

その話し方も在り方も千夏そっくりだった

きっと互いが互いを真似た結果が今の彼女達なのだろう

「随分とお寝坊さんなことね、ずっと起きないから死んだのかと思ったわよ」

まあ口の強さは桁違いなのだが

「色々話したい事もあるでしょうけど何処かでゆっくり話したいわね」

そして周囲を見渡す

「そうだ観覧車に乗るのはどうかしら?」

「賛成よ、私一度でいいから乗ってみたかったの!」

「いいと思うわ、私も乗ってみたかったし」

どうやら千夏は優香と居るときは少し大人しく振舞っているようだ

遊園地は元の姿を取り戻していたが園内の人々は時間の変化に驚きを隠せていない、楽しい時間は早く過ぎると言っても流石に無理がある話だ

それでもスタッフはすぐに通常通りの動きに戻り、不思議がっていた人々も何も無かったかのように動き始める

魔眼奪いかは不明だが誰かが魔眼を使って彼らの記憶に干渉したのだろう

「事を荒だてたく無いってことかしらね」

神奈は誰にも聞こえないくらいの声でボソリと呟く

観覧車ともなると普段なら混んでいるものだが幸い時が動き出してすぐに並んだのですぐ乗ることが出来た

空はオレンジ色に染まり陽は落ちようとする中私達を乗せた観覧車は天へと登っていく

少しの沈黙の後に神奈が前に座り同じ窓から地上を眺めている2人に対して口を開く

「あなた達2人で乗った方が良かったんじゃない?」

彼女が起きる前はあんなに楽しそうに会話していたのだ、自分が居ない方が話しやすいのではないかと思うのは当然のことだ

「違うの、別にあなたがいるから話していないのじゃないくて...」

少女達は少し窓の外を見つめて同時に答える

「この景色があまりに綺麗だったから」

「ふふっ、2人共考えてることは一緒なのね」

優香と千夏は顔をお互いに顔を見合わせている

「ずっと昔にした約束覚えてる?」

「当然よ、いつか2人で街の遠くに見えた観覧車に乗る、忘れるわけないじゃない、まさかここがそうだとは思ってもみなかったけどね」

そうなのだ、この観覧車に乗ってあの店を見つけるまで気がつかなかった、この街の郊外こそ昔彼女と訪れた思い出の場所だった

「あの頃は楽しかったわね、森で遊んだ時も街に出かけた時も」

「そうね、どれだけ日常がつまらなくても2人で過ごした時だけは幸せだったわ」

日没が近づく、同時に千夏の存在は徐々に透明になっていく

「もう時間みたいね、ここまで付き合ってくれてありがとうね神奈」

千夏は少し寂しそうに呟く

「礼を言われる立場じゃないわよ、あなたには随分助けられたわ、こちらこそありがとう」

「これはあなたに託すわ、この先にどんな困難が待っていてもきっと超えられる、私の些細な願い事だけれど御守り代わりにしてくれると嬉しいわ」

私は千夏からペンダントを受け取る

「ええ、必ず超えるわ」

「それから優香ちゃん、今まで借りてた名前は返した方がいいかしら?」

黄昏の終わりが近づく、夢と現実の共演は時期に終わろうとしている

「そのままでいいわよ、だってそれならこれからもずっとあなたと一緒にいられるわ」

「そっか、それは嬉しいことだわ...」

ゴンドラが頂点に達したまさにその時黄昏が終わる、そして夢は在るべき場所へと笑顔で帰っていった

そして現実に残された私達は思うのだ、なんて幸せな夢だったのだろう、と

しばらくの放心の後私は神宮優香に尋ねる

「神宮優香、あなたの身体は大丈夫なの?」

彼女の身体は止まっていたとはいえ死の期限は逃れなれないはずだ、なのにも関わらず彼女は千夏に会う前から自らの魔眼を止めて欲しがっていた、そこだけがずっとわからなかったのだ

「それは問題無いわ、魔眼の暴走の代償は完全なる時の停止、つまり今の私の身体は過去からタイムスリップしてきたようなものよ」

そうだったのか、前からの疑問が解決してスッキリする

「それよりもあなたは私に用があって探していたのではないの?」

「そうだった、あなたの眼で私の過去を視せて欲しいの、問題無いかしら?」

あれだけ魔眼の暴走の危険性に晒された手前私の為に魔眼を使わせるのは気が引ける

「大丈夫よ、あなたに触れられてたらなんだか調子がいいの」

それを聞いて一つ思い出した、あの時必死に手を伸ばした私は何の力も持たない左眼に何かの力を感じた、あれは一体何だったのだろうか

「他に何か悩み事でもあるのかしら?」

知らぬ間にボーッとしていたようだ

「大丈夫よ、それじゃあやってもらってもいいかしら?」

彼女の手が私の手に触れる、その時ドシンとゴンドラが揺れる

「着いちゃったみたいね、もう一回乗ってもいいけどどうする?」

私がそう尋ねて彼女の顔を見て異変に気付くよりも先に彼女はある一言を残してゴンドラから走り去っていった

「パンドラ」彼女は青白く血の気のない顔で確かにそう告げた

「ちょっと待ちなさいよ!」

星が輝く空の中神奈は慌てて彼女を追いかける


何処かここでは無い場所

足音が聞こえる、これほど早足で歩いているということはやはり計画は失敗か、と少年は思う

「表裏の魔眼を葬る計画は失敗した、やはり奴らでは荷が重かったか」

大方の予想に反して思ったより冷静だ、これなら僕の出る幕はないかもしれない

「彼らは所詮は模造品、完璧では無いですからね、それよりもう片方はどうなってるんですか?」

「そちらは不気味なほど上手くいった、今頃はもう済んでいるはずじゃ」

「なら未南雲神奈は僕が片付けましょう、そろそろ駒も無くなってきた頃合いでしょう」

魔眼奪いは少し考えてから答える

「仕方がないのお、一時的にお前を解放する、必ず彼女を処理してこい」

少年の枷と目の周りに巻かれていた包帯が外れる

紅と蒼のオッドアイ、二色の筈なのにあらゆる色を内包しているようなその眼は力に満ち溢れていた

「この身体で出歩くのは初めてですね、少し外を歩いてきます」

少年は扉を開け出て行く

「あくまでも一時的な解放じゃ、その身体は私の支配下にあることをゆめゆめ忘れるでないぞ」

「分かってますよ」

少年は魔眼奪いに向けて言葉を発する

「さあパンドラの匣は開いた、絶望の中で希望を掴めるかな、お姉ちゃん?」

誰に向けたわけでもない言葉は空虚に響く


偽りの時間-完







どうも新作を思いついてから旧作が踏み止まっていたダメ作者のつばさです

それでも何とか「魔眼少女」を書き終えることが出来ました

そして少しでもこの小説を色んな人に見てもらうためにある企画を思いつきました

それこそがアニメの一挙放送ならぬ、小説の一挙掲載です!

というわけで本日の8:00〜18:00にアニメよろしく30分に一話投稿致します

またTwitterで#魔眼少女で感想を呟いてもらえれば作者が突撃しに行きます!

是非色んな方と感想を言い合ってもらえればと思います

作者Twitter https://mobile.twitter.com/atorietsubasa

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