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地味でチビですが、一応天才です  作者: 和藤 結希花
3/3

翻弄されるカヨリ

「レオン=クラヴェリ。第3王子だ」

「…………」


 その言葉を何でもないように放つ彼に対し、私は言葉を失った。

 なんで研究室(こんなところ)に王子様いるんだよ⁉︎混乱しかできないよ⁉︎

 確か、第3王子は14歳の少年ってことくらいは聞いたことがあるけど、……って、私も挨拶しなきゃ!


「カ、カヨリ=ローランです!よろしくお願いします!」


 跪きながらそう言うとなんか笑われ、立てと促された。言われた通り恐る恐る立つと、なぜか私以外みんな苦笑している。

 え、本当に申し訳ないんですが、意味不明です。


 その空気に耐え切れなくなり、私はそっと研究室長に視線を移した。

『助けてくださいぃ!この状況なんですか⁉︎教えて!』と念じて。

 私の熱い視線が伝わったのか、研究室長はニコニコしながら説明し出した。


「ああ、カヨリン。レオン様はお勉強抜けだしてはこの研究室に入り浸ってるんだよ〜。だから慣れてね」


 そう言ってただニッコリ笑う研究室長。

 慣・れ・る・かっ‼︎

 なぜ⁉︎なんで私だけ取り乱してるの⁉︎私が変⁉︎


「あ、そうだそうだレオン様。カヨリンって、一応この国始まって以来の天才だから、せっかくだしお勉強習ったら?カテキョーだよカテキョー」


「「はぁ⁉︎」」


 あ、第3王子様とセリフかぶってしまった。

 恐れ多いことをしてしまったが、研究室長の方がだいぶ失礼なこと言ってるから許して欲しい。

 何がカテキョーだ!14歳の庶民が14歳の王子様に家庭教師とかありえないから!無礼すぎるにも程がある!


「何言ってんですか⁉︎私に務まるわけないじゃないですか‼︎ていうか私、稼ぐ為にこの歳から働きに来たんですけど!研究はどうするんですか!」

「俺だって勉強したくないから抜け出してきてんだ‼︎なんでここまで逃げてきて勉強しなくちゃいけないんだ⁉︎」


 いろいろとつっこみたい所はたくさんあるが、王子様も私と同じように反対してくれた。

 押せ押せ!


「じゃあ、カヨリンの月給大幅にアップしちゃうよん」

「やらせていただきます」

「おい!」


 寝が入りました、私。お金は欲しいんです。庶民なめんなです。

 ここは素直にいこう。


「じゃ、明日からね〜。はい、決まり」

「わかりました!しっかり務めさせていただきます!」

「おいってば!」


 すべてはお金の為に!

 王子様だって人だよ!なんとかなる!

 私達は王子様の意向をガン無視して決めていった。


「おいお前ら!ふざけんじゃねーぞ!勉強なんて嫌だー‼︎」


 うがーっと王子様が叫ぶ。そんなこと言われても、お金の為だもの。頑張ってもらいますよ。


「バカな事言ってないで、そろそろちゃんと将来のこと考えましょう。レオン様」

「あっ、お、お前⁉︎」


 後ろから聞いたことのない低い声が聞こえ、振り返ると黒の燕尾服に縁なしの眼鏡をした背の高い男の人がいた。

 誰かが部屋に入ってくる気配なんてなかったですけど⁉︎

 ていうか、王子様が見ていられなくなるくらいに顔面蒼白で震えてる!この人何者⁉︎


「私もその考えに賛成です、研究室長殿」

「でしょでしょ〜。はい、この子カヨリンね。カヨリ=ローランちゃん。よーく、その目に焼き付けて〜」

「はい」


 私の脇の下に手を差し入れ、ヒョイっと持ち上げて男性の前に置く研究室長。

 ……私の扱いどうなんでしょう。一応!14歳なんですけど⁉︎

 そしてじいぃっと私を見つめる、この男の人……服からして多分執事か何かだと思うけど。そんなに見つめないでください。照れます。


「カヨリ=ローラン殿。私、クラヴェリ家が第3王子、レオン様の付き人をしております。シェード=ベルトラムと申します」

「は、はい。カヨリ=ローランです。よろしくお願いします!」


 シェードさんの深い一礼に私も慌ててお辞儀をした。


「ほら、あなた様も早くお辞儀してください」


 シェードさんはグイーッと躊躇なく王子様の頭を片手でがっしり掴み、下げさせた。

 お、王子様にそんなことさせるとは……なんて恐ろしい人……。


「何すんだ!この暴力男!」

「おや、勉強サボっていること、お父上様にお伝えしてもいいんですか?」

「ぎゃーっごめんなさい!ごめんなさい!それだけは勘弁してください!」


 叫びながら頭を下げまくる王子様。

 ……ちょっと失礼ですけど、王子様って意外と小物ですねぇ。ふへ。


「おい、声に出てんぞチビ女……ってヒィィッ」

「先生とお呼びしなくてはならない立場でしょう、あなたは」


 またも頭を鷲掴みにされる王子様。

 シェードさん強い。

 まぁまぁ、と宥める研究室長が割って入ってきて私をヒョイと自分の胸の高さまで持ち上げた。

 うおお、高い!


「はい、じゃあ今日はもう寮に帰ってもいいよー。長旅で疲れてると思うし」

「え、いいんですか?」

「うん、明日ここに来たら研究とカテキョーのお仕事について話すから。また、明日ねー」


 ちなみにこのやり取り、高い高ーいと私を上げ下げしながらしていました。

 真っ赤な顔で周りに目を移すと、私と研究室長以外みんな笑いを堪えていた。研究室長は堪えることなんてせず、満面の笑み。

 屈辱だ。

 なぜだか知らないけど、もう完全に私、この人のおもちゃだな。


「いい加減やめんかい」


 さっきまで笑っていたが、さすがに私が可哀相になってきたのか、ターヤさんが研究室長に蹴りを入れてくれた。脱出した私が研究室長を見てみると、彼は先ほど蹴られた所をさすりながら、テヘペロッと舌を出している。まったく反省してませんね。

 どうしてやろうかと考えていたら、おい、と後ろから声をかけられた。


「地味でチビだが、一応天才ならしょうがないか。精々頑張れよ」


 ふんっ、と王子様がそっぽを向きながら言い、まったく懲りないですねぇとシェードさんがやっぱり頭を鷲掴む。


 正直言ってやはりまだ混乱している。しかし、良い人そうだし、なんとかなるのでは、という思いもあるのも事実だったりする。

 うん、せっかく田舎から出てきたんだもん。いろんな経験しておいて損はないはず。ここまで来たらポジティブに行こう。


「はいっ!頑張ります!」


私はたぶんこの日一番の笑顔でそう答えた。

今更ですが、『地味チビ』は『ラブゲーム!』より更新頻度は低めになると思います。気長に待っていただけると嬉しいです。

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