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お勉強だけど…


目がさめるとそこは見知らぬ天井であった。

少なくとも俺に割り当てられた部屋は天井まで届く様な本の塔などないし、あの書庫の様に空を飛ぶ本など勿論無い、ついでに言えば何やら紫色の大きなツバを持つとんがり帽子と胸元の開いた服を着たミステリアスかつナイスバデーなお姉さんがいるなんていう素敵物件では無い。


「…目が、覚めたようね。」


「はじめまして…此処は?」


挨拶は大事、古事記にもそう書いてある。

そんなことを思いつつ全体的に黒い…というか紫?っぽい感じの目の辺りに包帯の様な目隠しをしたお姉さんに此処がどこかを聞いて見る。

別に答えてもらわなくとも此処がつい先日戦った場所である書庫の様な知識の集積場である以上あちらになかった本もあるかもしれないので恐らく俺を此処まで運んで着たのであろうナカイケ氏や鼠お姉さん、年上系ロリメイドさんが迎えに着てくれるまで本を読んでいるというのも良い。


「此処は…書庫よ、貴方が、知っている場所で相違無いわ。」

「へぇ…」


それを聞いて改めて周りを見る。

空飛ぶ本に天井まで続く本棚、粉砕された机や椅子に崩れた本棚の一部、そんなものがこの本の山の内側から少しだけ見えた。

そして魔力を知覚できる様になった俺は違和感を捉える。


「む?」

「……」


それはお姉さんからであり、言い様も無い違和感の様なものが、雰囲気だろうか?何か不自然な感じがする。

ジッと彼女を見ているとその姿は変わらなかったものの周囲の景色が、温度が、雰囲気があらゆるものが反転した。


「正解…よ、勇者候補様。」


口を弧の形にした。

気がつけば周りの風景は変わりきっており天井と彼女以外は全く変わらず。血の匂いと石畳の冷たい感触、そして巨大な魔法陣というまるで俺たちが召喚された場所の様な風景になっていた。

いや、恐らくだが彼女がそういう風に変えていたのだろう。だが、守護騎士さんから教えてもらったこの世界のルールではこんな魔法は人の、人類のものでは無いはずだ。

エネルギーの等価交換、いや変換という大原則には程遠いなにかの変質…これは…


「『魔術』、『闇術』人によっては、色々な、呼び方をするわ。」


彼女はいつの間にか持っていた大きな杖に乗り宙に浮いていた。


「人は、私の様な者を、『魔女』と、呼ぶわ。」


その瞳はこちらを見えないはずなのに彼女はこちらの顔を見て喋る。

その声からは何処から寂しげなものを感じたがそれは一瞬だった。彼女が指を鳴らすと俺と彼女は今度こそ本当に書庫の中にいたのだ。その間に彼女の感情は読み取れないほど小さな起伏の中に収まり、その一切を感じ取らせな様な緩やかな、そして穏やかな波を作っていた。



「そういうわけで『魔女』キャシー様が女体がお好きな勇者候補様の知識補填をして下さいます。…守護騎士様の様に押し倒したら…私、怒りますよ?」


「あはは、ごめん、ごめん、キティさんの方が好みだから大丈夫、問題な「メイドパンチ!」まっくのうち!」


と言うわけで此処でも三人に、ナカイケ氏と年上系ロリメイド元隠密な鼠のお姉さんが俺の監視兼護衛兼お世話係(謎)としている。

なので魔女さんと秘密のレッスン(意味深)では無い、バカなことを考えていたらロリメイドが倒れたままの俺にダイブアタックとか言うご褒美…お仕置きをくれたのでさっくりと立ち上がる。

と言うか、うん、あれだな。暴力系ヒロインというよりは俺が欲望のままに女騎士とか言うくっころ職を背後から襲って見たりとか妄想を膨らませたりとかしているのが悪いな…


「あれ?なんでナチュラルに考えが読まれているんだ?」


「女の勘、と言うやつです。」


「そんなツルペタで女とは…」


ああ、ナカイケ氏、そんなわかりやすい死亡フラグ建築しないでくれ、俺へのご褒美が減るだろ?




「…始めましょう。」


「そうですね。」


ナカイケ氏の悲鳴とロリメイドの残虐な笑みというBGMをバックに俺と魔女、キャシーさんの授業は始まった。

特になんの前触れもなく彼女は年齢を明かして来たが実年齢が10世紀単位なのは何故だろう。というか17(世紀)歳ってなんだ。1700歳ですよねそれ、ドワーフやらホビットやらエルフやら色々いるとは知っていたが…え、何?魔女っていううのは長寿の種族なんですか?


「一概に、そうでは無いわ。」


話を聞くと彼女の様な魔女、生まれつき何かに憑かれている魔女というのは少ない上に今から1000年ほど前までは邪悪というものなどかけらもなく人間同士、この場合人類という種の中で差別や争いが横行していたそうだ。

もちろんその中には異教の排除や魔女狩りなどさまざまな事があったらしいが…


「私に、『死』は、無いの。有るのは、無限に等しい、時間、そして、ヒトならざる力…それ故に、私は『魔女』なの。」


事実この国でも何回か処刑されたらしい、焼かれたり斬首だったりと色々あったらしいがその体に一時的な行動不能状態は発生すれど傷はいつの間にか消滅し、多少の記憶を無くすもののそれ以外特に何もなく蘇るらしい、また、記憶が無くなるといってもそれは彼女の自我に関わる部分ではなく一部の術や薬草の知識などが吹っ飛んだりするだけで今でも学んで来た知識や技術はあるし生まれ育った場所や両親の記憶はあるらしい。

…凄いチート臭がする。


「前は、空から、星を落としたり…ああ、星座を消したりもしたけれど…今は忘れてしまったわ。それがあれば…邪悪も灼ける、かも知れない、わね。」


因みに所々、というか意図的に言葉を、文章をぶつ切りにしているのは会話中に発する言葉の中にも術のための詠唱に似た音があるらしくそれによる術の暴発を防ぐためらしい、たまに長文を喋ろうとしてしまい極大の破壊を生み出した事があるらしくそれからこの様な喋り方らしい。


「……昔の事、昔々…遠い、昔のことよ。」


…この時彼女の言葉の端々から我がクラスの誇るイケメン君に振られた時の女子の様な悲しみが見られたのは心の中にそっとしまっておこう。



さて、自己紹介、というより彼女が何者であり俺に知識を与えんとするに足る膨大な知識があると豪語した彼女はまずこの世界の一般的な知識について教授してくれたのだが…


「この世界は…」


「二大神による諍いから生まれたんですよね。」


「…そう…じゃあ次の、話を、しましょうか。」


こんな感じのやりとりがしばらく続きようやく彼女はそこで俺に質問して来た。


「…貴方、もしかして、昨日、この書庫で、本、を読んでいた?」

「はい。」


ついでに言えば読んだ本は返す場所がわからなかったためにメイドさんに片付けてもらったりひとりでに飛んで行ってもらいました。と付け加えると少し残念そうに口をつぐむ。


しばらく沈黙がこの空間を支配し彼女は杖を振る。

すると俺の前に昨日読んでいなかった本がバサバサと飛んできて積み重なった。


「そう、じゃあ、今日は、教えられないわ。…もう少し、怠惰、な方が、教え甲斐、あったのに。」



そう言いながら俺に本を勧めてくるあたり何か矛盾しているというか、教えたいと口で入っているものの彼女も少し億劫なのか…いや、まあ、来て早々まだ2日目か3日目くらいなのにその世界の常識や神話などを網羅しているとか普通におかしいかも知れないが、一般人とはそこにおいて一般的である人間のことであり普通を知らなければ一般人たり得ない、ついでに言えば知識を蓄えるということは決して悪では無い、善い行いであり勤勉の証である。

まあ、えらい人の話をがん無視して書庫に行ったりそこで戦ったり、そのあと本を読んだりと字面にすると意味不明な感じがひどいのだが、俺の普通じゃないところはそれくらいだし、いまいちじゃないと自慢できるのもそこくらいだ。

……テストとかいう忌々しいもののは反映されないものであるというのは大変遺憾ではあるがな!


俺がものの五分ほどで魔法について書かれた基礎知識や情報が書き記された本をコラムの魔導技術について、とかいう大変心踊る厨二ワードの場所まで舐める様に読み三冊の本を空に飛ばすと先ほどと打って変わって彼女は少し嬉しそうに言った。


「…はぁ…貴方、以外の人は、教え、甲斐がありそう…だから、貴方、には、特別…」


おっと、これは特別レッスン(意味深)か?


「魔法の、訓練、つけてあげる。」


「アッハイ。」


わかったので顔を赤らめて杖の先に魔法を発動させようとしないでください、怖いです。



後ほど聞いたが彼女は相手の考えている事がわかるらしい、考えていることも覗けるし、発言の真偽もわかる。

それ故に俺が意味深な想像をしたり胸とか目隠しとかお尻とかそういうところを見ながらいやらしい想像をしているのをはっきりと自覚し、ついでに鮮明に考え出される俺の考えた最強にエロいポーズ(笑)やさまざまなエロい想像がダダ漏れになっているらしく魔法を向けられたのはそれに動揺したかららしい…


…やばいな、この世界の奴らどいつもこいつも色々と皆無なのか?

あんなナイスバディを見てそんな想像をかけらもしないとか…凄い精神力っすね。

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