要注意人物…
エキサイトな王城ぶらり旅、王様の言うことを聞かないで勇者という強権を盾にメイドさんと書庫に来たよ!
たっくさんの本があってすごーい!何これー何これー!
「っち、政治体制は王政なのに科学発展しすぎワロス、何が異世界だ。近未来SFに無理やり中世ヨーロッパ入れたみたいな感じじゃねえか。」
貪る貪る。知識を、知恵を常識を。
「…はぁ一体幾つ読むんですか?もう100冊目ですよ?」
「こっちの本は難しいこと書いてあるけどほんとしての情報圧縮量が少ないからね、あと10倍くらいかな?」
唖然とするメイドさんを見ずに速読していく。とりあえず一通りの常識と魔物薬草地理歴史人種から儀礼まであらゆる本を読んでいき少なくとも知っている。程度の状態を作り上げていく。
下地があるのとないのとでは話が違うのである。最初はメイドさんが一生懸命跳ね回って捕まえていた本たちがいつしか勝手に本の方が机の上に乗ってくる頃、俺はおよそ2000冊に及ぶあらゆる本を読破した。
「よし、飯を食いに行こう。」
「そう言うところはしっかりしてるんですね。」
俺は描写なしで当たり前のように拾っておいたスマホ内に凄まじい勢いで文章を書きながらメイドさんの先導の元二人で死体二つを担いで王城の食堂に向かおうとしたのだが…
「おい、おいおい。それは」
途中にいた心がイケメンな兵士の人がギョッとした顔で声をかけてくる。
「はい?死体ですよ?ね?」
「そうですね………いま思いましたけどなんで運んでるんでしたっけ?」
「いや、というか…っはぁー、おい!ジグルト、ジーク、来てくれ事件だ。」
兵士さんは兜の耳のあたりを押さえて少し大きめの声で喋る。兜の押さえた反対側からこの兵士さん以外の声が聞こえてくる。どうやら通信による意思の疎通が可能らしい、しかもこれ、純粋な科学技術である。というかこの世界に魔法というものはない、強いて言うなら魔物や魔族がそれと一部の純粋な人種以外の存在はそう言う感じの謎技能の行使をしてくるらしいが少なくとも純粋な人間にそのような真似はできないそうだ。
さて、そして程なくすると屈強な兵士Aと兵士Bが現れ近衛も何人か現れ、明らかに耳の尖ったエルフっぽい人が俺に手を当てたかと思うと図書館の方に近衛を引き連れて行った。
そして俺は…
「え?侵入者?昨日の賊の仲間?はぁー!!」
「大丈夫ですか?」
「…勇者様候補の行動にも頭を抱えているのですよっ!」
苦労してる感じの瓶底メガネな学者さん、もちろん幼児体型である。異世界サイコー!のいる部屋に連れてこられメイドさんが運んできてくれた今日の昼ごはんをむしゃむしゃと食べているのであった。
ちなみに彼女は個々の書記官筆頭らしい、大変そうだがしかもそれに重ねて内政大臣と王族相談役、さらに色々肩書きを持ってそれらを全てこなしている超絶ロリババアらしい。
「ババアちゃうわ!まだ200歳だし!」
種族は小人族らしい、寿命的には軽く1,000年くらい生きる種族らしいが…まあ、それで考えれば二十歳、つまり…
「ツルペタロリ大学生!最高だな!」
「しねぇ!しにさらせ!!なんでこんなのがゆうしゃこうほにいるんだああああ!」
おっと、泣かせてしまった。可愛い可愛い。
「あ、ちなみに私の姉です。」
「へー、すごー…あれ?」
涙目で腕を振りかぶるメガネの彼女、クォータードワーフな彼女のお姉さんと言うことは…
「戦略的撤退!」
凄まじい破砕音とともにソファが真っ二つになった。
「フゥ…以後、ロリとかツルペタとか言ったら役職と物理的な力で勇者様であろうと滅しますよ?」
そのあと正座で色々反省させられたがだき石用の石がないとかで俺の膝の上にでかい図鑑のようなものと自分を載せて説教すると言う斬新なスタイルで俺的にはとても幸せでした。まる。
さて、そいじゃあわかったことを纏めよう。俺は自室に戻され…なぜか知らないが外側から鍵をかけられるようになり部屋の中にメイドさんが常駐するというエキサイトな状況になったのに首を傾げながら勇者の持つ力と邪悪とやらの話、この国や周辺にあった国家そこらへんの今日仕入れた情報を重要なところだけまとめたものを作っていこうと思う。
「というわけで紙とインクをプリーズ。」
「ボールペンとプリント用紙ですね…」
ムゥぅ、羽ペンを使うのが地味に憧れだったというのに!
メイドさんは扉の覗き窓を開け外側のベルを鳴らす。鳴らすと言ってもメイドさん専用ベルのように特殊な波長の音は同じ波長のベルを揺らし呼び出しを伝えるというもので音自体は出ない。
「参りました。」
「あれ?どうしてメイドさんが兵士を召喚するんです?」
すると現れたのは中身がイケメン兵士さん、略してナカイケ、俺が驚いたような表情をするとナカイケとメイドさんが溜息を吐く。
「えー、勇者様、今日付けで閣下の専属護衛となります。アレクサンダーです。よろしくお願いします。」
えー、そんなー、ここはビシッと!ビシッと美少女剣士とかそういう属性の人を専属にしたかったでござるー!ていうかなんでそんな嫌そうなんでござろうか?
するとメイドさんもこちらを向く。
「はぁ、勇者様、様々な問題行動から私キティと専属護衛となったアレクサンダー兵士長があなたの身辺警護と…」
「ん、ああ、良いよ別に取り繕わなくてどうせ『監視』だろう?」
すると空気が凍る。メイドさんはやれやれと肩を竦め兵士長…アレ、アレク…ナカイケもさっきよりでかい溜息を吐く。
「あと天井にいる人も出てきたら?」
すると今度は二人とも臨戦態勢になり俺は天井から降ってきた槍をつかんで逆に投げ返す。
「うわぁ!?」
破砕音とともに天井とその向こう側の床に穴が開き女子の声が聞こえるが問題はそれじゃない、足音は…
「そこだ!」
ベッド、それもその天蓋の縁からだった。ナイフを投擲すると黒い影のような何かが飛びだしいつの間にか入ってきていたアレ…アレク…ナカイケがその手に何かをつかんだようだ。
メイドさんは鈴を何回か揺らしナカイケの部下が現れ部屋を封鎖、俺は水差しを持ってナカイケの手に近づける。
「チュー!チュー!」
ナニカがナカイケの手の中で暴れているがナカイケと俺は息を合わせナカイケが水差しに面した方の指だけを開き俺はその上から手近に有ったコップをかぶせる。
ナカイケが手を離し俺は水差しの中を叩く。
「あががが…がは!?」
どうやら捕獲できたようだ。…いや、というか…
「この城敵多くね?」
「…三連続ですもんね、そう思いますよね。」
「おっかしいな?何処かに秘密の抜け道でもあるのか?」
俺の監視役二人は本当に不思議そうに首をひねる。
俺は取りあえず水差しとコップを逆さにして置き透明なコップにキャプチャーした獲物が入ってくるようにした。すると水差しの中を側面やらなんやらにぶつかりながら転がり落ちてきたのは…
「ハムスター?」
「ネズミはネズミでしたか…」
「魔族?ではなさそうだなぁ?」
「ダセー!出すんだー!…ッハ!そうか貴様らこの私に酷いことをする気だな!エロ同人みたいに!」
喋るハムスターとはまた面妖な、こいつは一体なんだろうかと思っていると水差しが逆さになったことで水を発生するという機能が動き始めじわじわとコップの下から水が満ちていく。
「っひ!水責め!辞めて!辞めてください!私は味方です!王城の警護している影です!だから水を止めて出して!!お願いぃ!」
影、影ねえ?
「どう思う?」
「私メイドですので機密とかはちょっと…」
「俺もただの兵士長だからなぁ、ぶっちゃけ平の兵士とかわらんし。」
とりあえず水が満ちてきてもがいているのを見ているのも楽しいが、かわいそうだったので水差しから解放しコップに布をかぶせて糸で固定した簡易容器に入れ替える。
どうやらストレスの余り気絶したらしく息はしているもののぐったりしているのでこいつが何者か確かめようとキティさんとナカイケとその愉快な仲間たちを率いて…というか彼らに監視されつつ。この状態からこの先どうしようかと考えていると、俺の持っていたコップは光とともに爆散、ネズミさんはネズミから頭にネズミ耳の生えた美女に変身したので有った。
「は?」
ちなみにこれが獣人族の魔法、変化、というものらしい。というのを今日本で読んだような気がする。