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 震えて言葉が詰まってしまった叫び声を聞きつけ、食い入るように駆け寄った。

 全ての扉が統一されて取り付けられていないのか、内開きの同じ種類に見える扉が据えられており、そこから声が聞こえてきたのは間違いなさそうだと、彼以外も気づくだろう。

 その扉を越えて中を覗いてみれば、そこにはデコ助を遠巻きに避けている女たちが、どんな過程を経て嫌がったかは想像し難いものであるが、結果が目の前で現れている事くらい、ハッキリと表れている。


 「あっ、ボルグ!お前……痛い!」


 呼び捨てが気にくわないのではなく、女を見つけてすぐに下がらなかった事が赦せなかったのだ。

 色の混じった人の波紋に目を向けて、あから目を程々に移したらばデコ助の額を見るや否や体を女の方向へ向けて言った。


 「お前らの仲間はここを抜けて、表で待っている。早く行け」


 学ばない訳ではないが、逃げ道になるのは一つだけだと彼は知っていたため、いたしかたない事であったのである。

 あの部屋でのような視線を向けられて、その流れに仁王立ちをするのは、まるで激流に身を固めて堪える岩石であったといえるが、そんな中にも穏やかな流れもあった。

 髪を後ろで結って動いても邪魔にならないようになっているところから、彼女は動くことを要する何かをしていると推測され、その姿にどこかの誰かを重ね、いい放つ。


 「お前は残ってくれ」


 座ったままだったためか、さほど手間もなかったが、やはり違和感と訝しさの板挟みを食らった感覚には、反発する物を投げつけられた痛みがあって、余計に意識を集中させてしまう。

 彼女は見上げた。


 「ボスのところに行きたいの?」


 低い声はわざとらしく、話も意図の汲めぬ話である。

 よく見てみれば、彼の疑問とその話の歯車が上手く噛み合ったのか、病床の風を向かい風にし、こう言った。


 「どこかは知らんが、二人きりになれる場所がいい」


 彼が真面目に捉えたはずがなく、下心を正しく分け与えた下半身の心に負けてしまったのだ。

 彼女は立ち上がり、その彼の言葉を真に受けたかのような動きはクルミ割り人形の無骨さを彷彿とさせる。

 彼はその後をついていく。

 しかし、彼はその後の光景に落胆するとともに、彼女がこの場所を何なのかをしていたのだと、今更ながら気づくのであった。

 二個となり部屋で、何者かに後頭部を殴られ、彼の視界からの記憶はここから途切れてから。

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