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ゾディアックサイン  作者: カラス
古代いろいろ
53/73

水晶髑髏

みなさま、クリスマスはいかがお過ごしでしたか?

自分はゲームでは牛を乗り回し、現実では自転車を乗り回していました。

 マキラがエンシェントかどうかはわからないが、彼女の行いはただの窃盗だ。ゾディアックでも警察でも突き出すべきだろう。

 泰吾は気絶程度に済ませようと彼女へ肉薄するが、


「っ!」


 矢のように飛び蹴りをしてきた金。それをよけることはできたが、勢いを殺し、その場で着地した泰吾は、足を銀によって掴まれる。


「しまっ⁉」


 封じられた動きに、金の飛び膝蹴りが迫る。抑えきれないと判断した泰吾は、腕でその流れをそらし、床に叩きつけた。

 泰吾に命中するはずだった膝は固いコンクリートへ激突。

 見て痛々しいとさえ思ったが、金はなんとそのまま側転を繰り返し、一度泰吾から離れ、再び接近してきた。


「あいつ、痛みを感じていないのか?」

「当然よ」


 そのまま金と銀と取っ組み合いを眺めながら、マキラは語った。その手には、博物館から盗み出した水晶髑髏が握られており、それを愛おしい目で見下ろしている。


「わたくしは、完璧な従者が欲しいの」

「完璧?」


 一度金を投げ飛ばし、銀の腕を固める。

 マキラは水晶髑髏を撫でまわしながら、


「ええ。ただの人間だと、できないことがある。わたくしはそのような不完全なものはいらないわ。ただただ、命令を忠実に実行してくれればそれでいいのよ! 美しいわたくしに‼」


 水晶髑髏を掲げる。


「この、水晶のように美しいわたくしに‼」


「従者というより、奴隷だなっ!」


 泰吾は銀を蹴り、その勢いのままマキラへ肉薄。しかし彼女も鞭で応戦、泰吾のバランスを崩し、転倒させた。


「美しくないあなたは、消えなさい‼」


 さらに振り下ろされた鞭。泰吾の体を砕こうとする一撃だが、

 泰吾は、そこに商機を見出した。

 回転により、泰吾の足がマキラの手の水晶髑髏を蹴り上げる。マキラが焦った顔をするが、もう手遅れだ。

 泰吾はさらに鞭も蹴り弾き、起き上がった勢いで彼女の手から水晶髑髏を奪いとる。

「なっ……⁉」


 目的は不明だが、これを彼女から一度引き離したほうがいいだろう。博物館から飛び去り、一度駅の方角へ逃げようとする。


「おのれっ……! 金! 銀! 始末なさい‼」


 しかし、それ程度で諦めるようなら、最初から強盗など計画しなかっただろう。頭に血が上ったマキラの呼びかけだけで、二人の従者は泰吾のダメージもまるでなかったかのように彼女の前に集う。


「奴を葬れ‼」


 マキラの命令で、二色の鎧はその前で腕をまっすぐ伸ばした。まるでレールのように伸びたそれは、それぞれの間に光の交錯が始まる。


「なんだ……? あれ」


 それは、まるで雷のように発光。博物館からほどよく離れた駅近くでも、その光が日光よりも眩かった。


「……っ⁉」


 金と銀の構えを認識したとたん、その視界を黄金の光が包んでいく。

 どよめく人々。異変を感じ、逃げ始める人々。

慌てて両手を盾にするも、もう遅い。


「デストロイ・レールガン、発射‼」


 マキラの命令とともに、二人の腕の合間より、黄金の光線が飛んでいく。それは迷うことなく泰吾の背中に命中。


「がっ⁉」


 黄金の光線は、泰吾の体を貫き、そのまま貫通、はるか遠くにそびえる鉄塔の一部さえも溶かしつくした。

 安全な場所に着地しようにも、泰吾の全身がいうことを聞いてくれない。そしてその体は、たとえ彼の手から水晶髑髏が落ちることになっても、反応することができなかった。


「しまっ……!」


 泰吾が取り戻そうとするも、もう遅い。百貨店の屋上の角を数回バウンドし、水晶髑髏は人々がひしめく表通りへ落ちていく。


「くそっ!」


 無論、マキラたちが泰吾の失態をみすみす見過ごすはずがない。マキラの命令とともに、金も銀もすでにミサイルのように発射している。

 泰吾はブースターを利用し、行先を屋上から地面へ変更。水晶髑髏へ迫った。

 同時に、金と銀も泰吾と水晶髑髏と同じ距離まで迫っていた。


「マキラさまへ」

「マキラさまへ」

「お前たちに渡すものか!」


 金と銀の間でまっすぐ手を伸ばす泰吾。互角の飛び具合のなか、泰吾はさらに必死に手を伸ばす。


 もう少し。もう少しで、だれかの手に触れる。

 そのとき。


「がっ‼」


 泰吾の体に異変が起こった。全身がこわばり、硬直、ゴムのように引き締まる。そして、伸ばした右腕が人体が起こしえない振動をし始める。


「なんだ……?」


 まるで体内の骨が肉体を破壊してでも外へ出ようとしている。そんな痛みに、泰吾はバランスを崩し、


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 泰吾のガントレットが、変異していった。白い円柱のガントレットが、紫の牙もつ獣の顔となる。

 中世の時代からのドラゴンのような形をし、無数の牙が所せましと突き詰められた顎。

泰吾の腕から現れたその生物は、その牙を突き立て、水晶髑髏を呑み込んでしまったのだ。


「えっ……?」


 そのまま泰吾の腕の獣は吠え、その衝撃音で、金と銀は吹き飛ばされる。さらに、耳を抑えても泰吾の脳を震わすその音は、上野の建物のガラスというガラスを粉々に粉砕していった。


「______________________________‼‼」


 人々の驚きと恐怖。逃げまどい、救急車が急ぐ。

 水晶髑髏が消滅したことを見送ったマキラが舌打ちとともに従者と退却。

 戸惑いのなか、泰吾は痛みに苛まれながら、手という化けの皮を来た自らの手を見下ろすしかなかった。


今年は、これで最後になります。

みなさま、よいお年を~!

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