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ゾディアックサイン  作者: カラス
古代いろいろ
52/73

子供のままの大人

2DSでポケモン始めました! そのせいで夢の中で泰吾とマイに殴られました。

「お前、邪魔だ」


 金色が言った。


「お前、邪魔だ」


 銀色が言った。


 二人は背中をくっつけたままその場でバレエのように回転し、


「「デリートする」」


 静止と同時に泰吾を指差す。


「……ほんとうにおかしなかっこうだな」


 色の違いはあれ、二人の姿は鏡に映したかのように全く同じだった。重そうな金属の鎧を軽々しい動きで着用し、その声は無機質極まりない。肩幅から腰に掛けて、三角形になっているデザインで、まるで子供が書いた人の絵がそのまま現実に現れたようだ。

 当然顔も鎧で隠されており、同じように三角形の顔だった。鎧には表情とされる部分も、ましてのぞき穴や呼吸のための穴すら見当たらなない。

 外見だけでも不気味だが、彼らが口にしたもの。

 デリート。消去という意味を、敵意の言葉として受け取った泰吾は、警戒を強める。金色と銀色は姿勢を崩さないまま互いを見つめあい、彼らの会話以外音がない世界となった。


「こいつ、エンシェントか?」

「こいつ、エンシェントだ」

「なら、どうする?」

「なら、どうする?」


 二人は同時に、


「「こいつも、マキラさまへ捧げよう」」

「……っ⁉」


 二人の動きに驚愕する。流れる様に一糸乱れぬ側転を繰り返し、会場をなめるように移動。

瞬く間に泰吾に接近し、二人同時に蹴りを放った。

 反応が遅れた。ガードしたガントレットを貫通し、泰吾の腕が振動する。


「くそっ!」


 応戦として放つ拳。しかし、金へのこの技は、その腕に金が乗るだけの結果に終わった。さらに、左手も銀によって捕縛される。


「お前、もうこちらの手の中」

「お前、もうこちらの手の中」

「まだだっ!」


 泰吾は二人を両腕ごと振り回し、ふるい落とす。寸前で銀の足を掴もうとするも、連撃の蹴りにより、それも阻まれる。

 ならばと金へ狙いを変えた回し蹴りは、まんまと上空への跳躍で逃げられる。金色へ視界を当てている間に、背後の気配をたよりに銀色の回転する花のような蹴りにより、一度彼らから引き離される。

そして銀色もジャンプ、金色と銀色は空中で互いに足裏を合わせ、一気に引き離す。

 二人は壁伝いに走り、泰吾の前後を挟み撃ち。


「っ!」


 しかしそれは、泰吾の目を奪ってはいなかった。同時に繰り出した拳を読み切り、体を反らしてよける。さらに下方の金色を踏み台に、銀色の腕を掴んだ。


「よし!」


 金色を蹴り飛ばし、銀色を放り投げる。

 身動きが取れない空中に投げ出された銀色が落ちてくるまで数秒。その間だけ、泰吾は金色と一対一になれた。

 即座に金色は体制を戻し、連続側転で泰吾に迫る。その足をガードしながら、泰吾はなんとか足をキャッチした。


「だんだん見えてきたな……」


 泰吾は銀色とは違う方角へ金色を放り、落ちてきた銀色にアッパーカット。その腹に食い込み、再び銀色は「ぐあっ!」と小さな悲鳴とともに、博物館の壁へ激突。


「金色はっ⁉」


 さすがに単独行動はしないのか、金色は泰吾の相手ではなく、博物館の展示品を奪うことに専念していた。側転、展示物のケースを砕き、貴重なオーパーツを奪取。泰吾が駆けつけたとき、彼は水晶ドクロを腰の小さな布袋に収めたところだった。


「やっぱり泥棒かよ!」


 しかし、泰吾の首に痛みが。銀色の蹴りにより、泰吾はそちらの相手をせざるを得ない。

 すると、金色もそれに加勢する。最初と同じように、抜群のコンビネーションで、徐々に泰吾が追い詰められていく。


「こいつ、力はあるが弱いな」

「こいつ、力はあるが大したことない」

「「捕まらないようにすればいい」」

「さっき追い詰めたと思うんだが」


 やがて防戦一方になる泰吾。二人は確かに素早く、イニシャルフィストが動体視力の恩恵を与えてくれなければとても防げなかっただろう。

 らちが明かないと判断したのか、金と銀は泰吾から離れ(無論側転で)る。


「おい、こいつより、先に終わらせるぞ」

「ああ。こいつより、先に終わらせるぞ」


 全く同じタイミングで相槌を打ち合う。そして、そそくさと泰吾に背を向け、別のブースへ急いだ。


「お前たち絶対双子だろ」


 泰吾も置いて行かれない。方角からして、金色と銀色はあの水棲生物水晶を盗品にするつもりだ。

 泰吾はブースターでジャンプし、放物線を描きながら、二人よりも先に生物水晶のもとへ着地した。

 七色の輝きが泰吾を迎えた瞬間あの双子も到着。


「お前、速いな」

「お前、速いな」


 驚いているのかどうか、無機質な声の上に顔も見えないから判断できない。


「いい加減二人で一人をやめろよ。聞いてるこっちも疲れる」


 金色と銀色が泰吾の言葉を素直に従うわけがなく、また背中を合わせながら奇抜なポーズをしている。互いに右足だけでバランスを取るなど、組体操の世界にでも行けばいいのにと泰吾は思った。


「さて、俺がエンシェントだって知ってるなら、お前たちもエンシェントだろう?」

「そうだ。私たちが、」

「その通り。エンシェントだ」

「台詞変えてくれた」


 少し感動しながら、泰吾は敵の次の一手をうかがう。確かに二人は、生物水晶に狙いを定める。が、


「……おい、そろそろ時間だ」

「……ああ。そろそろ時間だ」


 突然、二人から敵意が消えた。あまりにも一瞬で、泰吾は警戒を解いてしまった。

 それが原因だろう。

 二人がまた側転を開始、左右の壁を伝って天井へ到達。重力に逆らったまま、足場となった天井を踏み砕くことで穴を開け、そこから退散。

 この間、わずか十秒。


「……って、追わないと!」


 一瞬呆然としたことは、仲間内のエンシェントには決して明かしてはならない。そう、決意した。





 博物館の近くには、動物園や美術館があり、本来は人通りも多い。休日の今日、人が多いことに不思議はないが、博物館の前だけが非常に人口密度が多いのは、ゴーレムが現れたことに対する野次馬根性か。

 金と銀が逃げた穴から博物館の屋上に立った泰吾は、地上からの眩きに目を覆う。

 二人の鎧が、屋上の傍らで跪いていた。


「たったこれだけなの⁉」


 視界を奪われている間に泰吾の耳に届いた怒声。女性の高い声に、思わず泰吾は「えっ」と顔を上げた。


 金色と銀色。この二人のボスらしき女性。

 黒いストッキングに黒タイツと、視覚的によろしくない格好をしていた。胸元を強調して亀裂を入れており、そこから発育の良い体が伺える。

すらりと高い身長と、ヒョウ柄の毛皮のマフラー。泰吾のマフラーとは違い、首元のみを締め付けている。

さらに虎柄のコートを着用し、ただでさえ大きな体がより一層巨大化して見える。

 赤茶色のショートカットの下には、肉食獣のようなギラギラした瞳。その瞳によって、顔立ちすべての印象を「美しい」から「危険」に変えさせていた。

 女性は博物館の盗品を掴み上げ、


「たったの十個⁉ わたくしはもっと、もっと欲しいのよ‼」


 数個を屋上に投げ捨て、腰から鞭を引き出す。それを乱暴にしならせ、金色と銀色を叩いた。しかし二人の鎧の装甲により、鞭はただの金属音を奏でるだけに終わる。

 しかし、それに構わず彼女は続けた。


「もっと、もっともっと! オーパーツを、金になるものを‼ わたくしは、もっと‼」

「そこまでだ‼」


 この一方的なやりとりで、彼女がこの事件の黒幕だともう判別しきっている。泰吾はイニシャルフィストの拳を向る。


「さあ、盗んだものを返せ」


 威嚇として、真空を穿つ。圧された風圧が彼女を吹き、唇をかませる。


「きぃいいいいい……お前たち、どこまで役立たずなの⁉ ほかのエンシェント、どうせゾディアックだろう⁉」

「ゾディアックではない。まあ、協力者な時点で似たようなものか」

「見たことのないオーパーツまで持って‼ 欲しい、妬ましい!」


 初めて悔しさでハンカチを噛む光景を見た。あのハンカチも毛皮で作られており、高価そうだが。


「そこのあなた‼ そのオーパーツを、わたくしに献上なさい! そうすれば今回の邪魔は水に流してあげるわよ!」

「は?」

「このわたくし、レリックスのマキラのコレクションに、お前のオーパーツが仲間入りするのよ‼ 光栄に思いなさい‼」

「レリックス……?」

「そう。レリックスよ‼ エンシェントなら、知っている組織のはずよ‼ 我ら、新世界の創造主、古代の力で穢れきった世界を浄化する組織‼ その幹部たるわたくしの趣向品として、あなたのオーパーツは未来永劫生き続けるのよ‼ 光栄に思いなさい!」


 穢れきった世界を浄化。

 つまり、彼女が所属する組織は、今の世界をオーパーツで新たに作り替えようとしている、という意味だ。オーパーツの悪用。


「……レリックス、まさか、ナラクやルヘイスも?」

「あら、あの二人にも会ったの? なら、あなたがナラクを倒したというエンシェントかしら? ますます欲しくなったわ。こうなったら、金はいくらでもだすわ! さあ、あなたのオーパーツをわたくしに!」


 口が軽くて助かったが、これ以上の情報は見込めそうにない。用済みになった彼女に対し、泰吾は、


「なら俺はこう返事してやろう。博物館から盗んだものを返して帰れ。そうすれば、今回のことは忘れてやる」


 挑発すると、女性は頭に血が上り、地団太を踏む。


「キー‼ 厄介な奴まで引っ張ってきて! お前たち、やっておしまい!」

「「はい。マキラ様」」


 金と銀のたぐわぬ返答とともに、再び泰吾に迫る。


「すでに一度破っている、もう一度できるはずだ!」


 銀と蹴りをぶつけ、そのまま振り回す。これにより金を薙いだ泰吾は、銀をマキラに投げる。


「邪魔よ!」


 しかしマキラは躊躇いなく鞭を振り、銀を打ち返す。床に転がった銀を見下ろしながら、泰吾は少し同情した。


「……手下でも少しは大切にしたほうがいい」

「知ったことかしら。わたくしはわたくしの欲しいものの中で生きられればそれでいいの‼ こいつらがどうなろうと、わたくしには関係ありませんわ!」

「……外道だな」

「わたくしを怒らせないでくださいまし! わたくしは、常に喜びの中で生きるのです! 欲しいものは、すべて、すべてわたくしの手に‼ 手に入らない腐りきった世界など、滅びてしまいなさい‼」


 レリックスとやらの情報はもう無理でも、泰吾は彼女のことは大体理解した。


「中身が子供のままの大人か。惨めなものだな」

書きため、まだしてないのに……夢中になる趣味って二つ以上あると危険ですね

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