蛇の爪痕
やっぱり日曜日は投稿したい!
ということで短いですが投稿します
翌日。
世界平和部の部室が使えないので、月光のゾディアック支部を使わせてもらっている。
散乱した道具をかき分けて、机を繋げて人数分の席を確保している状態だ。。
泰吾からみて右側に世界平和部の面々、左にエクウスを含めた月光のメンバーがいた。
「あの独皮極哉がエンシェントになったということですか?」
泰吾が昨夜の出来事を報告し終えたとき、空が聞き返した。
「独皮極哉? 誰だ、そいつは?」
部屋の隅で腕を組んだままよりかかるエクウスが言った。
知らないのは彼だけではない。マイも、「あたしもその人のこと、名前しか知らないのよね」と小さく手を挙げていた。
泰吾は少し考えながら、
「俺も何年も前の話だし、当事者ではないからよく覚えていないけど、たしか……」
「独皮極哉。現在は二十五歳。高校二年生のとき、苛立ちより同級生を殺害、エスカレートして学級の三割を手にかけてしまった。それから逃亡生活を始め、今に至る。あのときは子供の犯罪の扱いもかなり荒れたわね」
昨日のことのように語りだしたのは明日香。空の補足によれば、彼女は毎日様々な新聞を全て目を通し、データにして保存しているらしい。八年前なので、彼女はまだ小学三年生のころだ。
「私も覚えているわよ。テレビで被害者の家族の顔なんか、忘れようにも忘れられないわ」
頷く美月。
「あのころはまだ羽月も小さかったから、お母さんは外にも出歩けなかったくらい」
「そうなの?」
「そうよ」
羽月の頭をなでる美月の表情は、いつものようなにこやかなものではなかった。何事もなくてよかった。そんな顔だった。
「独皮極哉が街に放たれてから三ヶ月は、お母さんも気が狂いそうになるくらいだもの。お父さんはそれでなにか守れる力が欲しいと思ったからゾディアックに入ったくらいだし」
つまり、彼は白珠家がゾディアックに関わる原因でもある。
泰吾は極哉の影響力に恐れながら、自分の過去を探る。
「そういえば、あの頃だったか? 今みたいに学校が全面的に休校になったのは。一、二週間で再開した気がするが」
「間違い無いわよ。十日間、どこにも問題がなかったから再開した。まあ、それでも一人ずつ犠牲者は出ていたみたいだけど。警察の捜査も撹乱しながら逃げ延びてきたみたいね」
淡々と語る明日香は、もうデータアーカイブと呼んでもいいと泰吾は思ったから。
「そいつはやべえな。んで、そんな物騒なのがエンシェントになっちまったと」
「前回のゴーレムの時にいたルヘイスもいたから、奴の仲間とみなしていいと思う」
「嫌なニュースね」
パソコンに文書を打ち込みながら明日香は言った。どうやらそれはゾディアックに届ける正式な議事録らしい。
「今日学校がお休みなのが凶悪エンシェントのお陰だなんて、笑えないわね」
「お店にもお客様は来ませんし」
しょんぼりと落ち込む羽月。慰めるように頭を撫でた美月は、
「急いで彼を無力化しないとまずいわね。まさか、エンシェントが人を襲うなんて……」
「学校関係者にも被害が出たって噂もあるわね。ゴーレムに魂を売ったって書き込みまであるわ。あながち間違ってないけど」
議事録を提出したのか、明日香はもうネットで今回の事件への世間の目を確認している。
「何がまずい? エンシェントはもともと秘密裏に活動するもんだろ? 人からどう思われようが関係ねえだろ?」
「最近まではね。でも最近、ゴーレムの数が飛躍的に増えているのよ。いきなり石を投げられるのは嫌でしょ?」
「へっ。トレジャーハンターが人目を気にしていられるかっての」
「なら貴方はいいけど、こちらは活動にかなり支障をきたす恐れがあるの。悪いけど、独皮極哉の逮捕に協力してもらってもいいかしら?」
「なんで俺がやらなきゃならねえんだ? これだけエンシェントがいるんだ、勝手にやれよ」
どうやら明日香とエクウスの相性は最悪らしい。明日香とエクウスは数秒にらみ合い、
「分かったわ。貴方には頼らない。それで、逸夏泰吾」
「初めて俺のこと普通の名前で呼んだな」
「他に報告はないのかしら?」
明日香の問いに、泰吾は少し気がかりなことを口にする。
「その場に居合わせた警察官に、姿を見られた、かな」
このとき、マイ、明日香、空、美月の顔から色が薄れた。
泰吾は慌てて弁明。
「まあ、 見られたと言っても、 鬼ゴーレムのときの女性警察官だ。たぶん秘密にしてくれるさ」
「ああ、あの刑事さん」
「あの人刑事なの?」
「チラッとしか見ませんでしたけど、どうなんでしょう?」
「そんなことよりも次に行くべきだとお姉さん思うなぁ」
エンシェントたちの各々の反応を聞いたところで、泰吾もあのときは他に対応のしようはなかったのか思い直す。
(正直極哉が相手の時点でどうしようもないが)
念のため去り際に口止めしたが、彼女は聞き入れてはくれなかった。
「めんどくせえな、さっさとそいつをぶっ倒せばすむことだろ?」
「協力的ではないくせに口だけは大きいわね」
明日香がエクウスに噛み付く。
「手を貸してくれないのではないの?」
「気が変わった」
エクウスはもう話し合いはいらないだろうと壁から離れ、
「お前らが怖がるそいつをぶっ倒せば、俺の株があがるだろ? 美月さんよお」
「うーん、そうだね! そうなったらお姉さん、見直しちゃうかも!」
「へっ。決まりだな。逸夏泰吾!」
「ん?」
「お前も来い。俺はモニター映像を覚えるのが苦手でな。顔合わせしろ」
突然エクウスに腕を掴まれたから、泰吾は抵抗できなかった。彼に引きずられる形で月光から連れ出される。
「あ、待ってください!」
「ちょっと! 空ちゃんまで!?」
そのあとを追うように、マイと空も慌ててそのあとを追っていった。
こうして集合してみると一人称被りすぎで申し訳ない。




