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ゾディアックサイン  作者: カラス
月の夜空
27/73

第二の敵

パソコンではなく携帯のメリット

1 電車でも下書きができる

2 本当に時間を選ばない(でも歩きスマホにはご注意を)

「まあまあ、そうことを荒立てずに」

 

 男はそういいながら、椅子から立つ。飲み干したティーカップを席に置き、


「Hello, ancients」


 気さくな挨拶。だが、彼が泰吾を妨害した張本人であることは、右腕のカッターナイフのような刀から明白だ。

 泰吾、空、美月は一切の油断も見せない。見かねた男はため息とともに、


「私は友好関係を築きたかったのですが、あなたがたがそのような態度では難しそうですね」

「いきなり攻撃してきた相手に友好的になれるほどお人好しではない」


 泰吾は腰を落とす。


「ふふ、I see. あなたがたエンシェントが、ナラクを倒したと聞きましたが、事実ですか?」

「ナラク......やっぱり生きていたんだ……」


 空にとっては浅からぬ因縁の敵、ナラク。前回鬼ゴーレムの事件の際、彼が空に小さな本を渡したことで事件は始まったらしい。

 そのナラクの名を口にするということは、


「お前、奴の仲間か?」

「まあ、分かりやすく言うとそうなりますね。ルヘイスと申します」


 彼は亀ゴーレムの前へ歩き、


「Nice to meet you 」


 丁寧にお辞儀。取り出したノートパソコンを操作し、


「申し訳ありませんが、このゴーレムには少々利用価値がありますので、この場は失礼させていただきます」


 すると亀ゴーレムはみるみるうちにオレンジ色のデータとなって消えていく。驚くエンシェントたちの前で、やがて完全に亀ゴーレムは消滅した。パソコンからはきだされたメモリーカードにあのゴーレムの甲羅が描かれていることから、あのカードに収められたに違いない。


「ゴーレムは、データだったのか?」

「そんなはずはないわ」


 泰吾の疑問を、美月が否定する。


「ゴーレムは有史以前の人類が生み出した機動機械のはずよ。質量無視してカードにできるはずが……」

「これは私が作った私個人のシステムです。しかし、このままあなたがたのplayを終わらせるのも忍びないですね」


 ルヘイスはしばらく考えたあと、


「それでは、このようなものはいかがでしょう」


 ルヘイスは新たなカードをパソコンのスロットに刺しこむ。

 すると、亀ゴーレムの時のようなデータの塊がパソコンから放出され、ルヘイスの前で人間大の大きさになる。


「このΣロイドがお相手しましょう」


 そして現れたのは、鋼色の人型機械。

 両腕が三又に分かれ、強靭な脚部がその重量を支える。薬品カプセルのような頭部からは銃口が所狭しと並び、全身の至る所にはノコギリが踊る。


「さあ、Go ahead. Σロイド。全てを破壊しなさい」


 ルヘイスの命令とともに、Σロイドが活動を開始。

 三又の間から、赤い雷が走った。


「⁉︎」


 あまりの速度に回避が追いつかなかった三人は、爆炎とともにその体を宙へ飛ばす。


「くっ……」


 しかし、空中で体制を立て直した空が、矢を放つ。

 が、対空性能も備えるΣロイドの敵ではない。雷が矢を撃ち落とし、更に空にも一撃を加える。


「きゃあっ!?」

「空!」


 落下する空をダイビングキャッチ、地面を削りながら、泰吾はエンシェントを解除した空を背に回す。


「はははは、素晴らしいものでしょう」


 高笑いするルヘイスは、 美月を指差す。


「あなたがたに敗れるとは、ナラクも落ちましたね。全く」


 彼の指が合図なのかは不明だが、それにより、Σロイドは美月に狙いを定めた。再び発射される雷たちに、美月は高跳びで回避する他なかった。

 しかし、

 ジャンプを繰り返し、いつの間にかΣロイドの上にいた美月は、そのまま垂直落下。Σロイドの頭部に重い足蹴りを命中させる。


「……っつ!」


 どうやら彼女の表情から、期待した手ごたえはなさそうだ。

 飛び退き、泰吾の隣に並ぶ。


「さっきのゴーレム並みに硬いわね。もう一回人間ミサイルやる?」

「さっきのゴーレムより運動性能いい相手ですよ、無理です」

「では、そろそろとどめといきましょうか。Σロイド」


 ルヘイスの言葉とともに、Σロイドの頭部が上半分開く。


「なんだあれ……」

「もう笑えないわ……」


 そこに出現したのは、超大型ミサイル。Σロイド本体の大部分を占めてしまいそうなそれは、大きな煙とともに浮かび上がる。

 しかも、放物線を描くその速度は、明らかに人間の抵抗を許すものではない。

 すでに目前まで、ミサイルは迫っている。


「来る!」


 気絶した空の盾になろうとする泰吾と、彼女を抱き寄せる美月。その二人を、無情なミサイルは、

 発砲音により軌道を逸らした。


「おや?」


 ルヘイスの意思に反した動きに、主人の彼ですら疑問符を浮かべている。異変はそれだけではない。

 突然、Σロイドの全身から火花が散った。ルヘイスからは見えないだろうが、泰吾からはΣロイドの全身に銃弾の跡が刻まれているのがはっきり分かる。


「何事です⁉︎」


 声を荒げたルヘイスは天を仰ぐ。亀ゴーレムが暴れたおかげで、まだ渋谷駅前に他の人影はない。

 109に続く道路にも、山手線を挟んだ向かい側にも、ハチ公広場にも、


「そこです‼︎」


 突然ルヘイスが渋谷駅の屋上へ手を伸ばした。彼の袖から伸びる灰色のツタが屋上を破壊する、

 その直前に、そこに人影がいたのを泰吾は確かに見た。

 人影は軽々と泰吾たちとルヘイスの間に着地し、


「よう、邪魔するぜ」


 左手に持った銃を回転させ、肩にかけた。


「また会ったな、ルヘイス」

「はあ。またあなたですか」


 ルヘイスの肩を落とさせた人物。


「別にてめえを追いかけてきたわけじゃねえよ。少し他所に行きたくなっただけだ」


 その人物は、右手には足まで届く長いサーベルを握っていた。


「てめえのせいで、カナダの遺跡はあまり期待出来そうにねえからな」

 

 地面に着くか着かないかという長いコートは、世界の全てよりも存在感を放つ黄で、


「日本の遺跡を当てにしようと思っただけだ」

「ならば何故このような都会に? 一人で森なり山なり行けばいいでしょう?」


 コートのボタンも、装飾も、一つ残らず煌びやかな宝石が惜しみなく使われている。その豪華さたるや、あのコート一着で豪邸が買えるのではないか。


「腹ごしらえだ。てめえが騒ぎを起こしたせいで、店のやつら全員いなくなっちまったがな」


 堂々とした表情には曇り知らずで、自信に満ち満ちた瞳には力が漲っていた。


「さて、お喋りはこのくらいにしようか」


 乱入者は肩を鳴らし、


「そのメカも、仲良く地獄に送ってやる。俺の性分、知ってんだろ?」

「そうですね」

 

 ルヘイスは腹立たしげに絞り出す。


「あなたの存在は実に面倒ですし、ここで消してしまいましょうか」


 彼の名前を。




「エクウス・クダリオ」




「さて、暴れるぜ!」


 黄色の乱入者ことエクウスは、左手の銃を撃ちながら駆け出す。Σロイドは雷を弾幕として放ち、銃弾は暴発。


「へっ」


 煙に突進するエクウス。次に泰吾たちの視界にエクウスが入ったのは、離れて高みの見物をしていたルヘイスと打ち合っている姿だった。

 そして、煙幕によって敵を見失ったΣロイドは、そのまま泰吾たちに狙いを定めた。


「結局こっちに来るのか⁉︎」


 泰吾は癇癪を起こしながら、Σロイドへ立ち向かう。振り払いを躱し、懐へ拳を叩き込む。


「っ、硬い……!」


 むしろ、イニシャルフィストをつけている自分に反射ダメージが入って来る。


「くっ……」


 さらに、Σロイドの腕が再び泰吾を襲う。だが、


「させない!」


 しかし、それは緑の矢によって妨げられる。この場でこの芸当ができるエンシェントは一人しかいない。


「空!」


 復活した空が再び弓を引き絞っていた。Σロイドが彼女へ雷を放とうとするも、美月の飛び蹴りがその狙いを狂わせる。


「先輩、行ってください! ここは私たちが!」

「ああ、頼む!」


 あのエクウスという者が敵か味方かはわからないが、今は協力するべきだ。

 そう判断した泰吾は、Σロイドを空と美月に任せて、彼の加勢へ向かった。

スマホの欠点

1 行間が開けにくい

2 スマホ中毒から逃げられない

3 カッコが入れにくい!

だからスマホ用のキーボードをアダプター合わせて1000円で入手してきました

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