表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾディアックサイン  作者: カラス
始まり
22/73

後悔なんてない

第一章、これにて終了です!

約八万字と、少し短いですが、ありがとうございました!

『うむ。確かにその笛は雅風だ』


 世界平和部。机に置かれた薄型携帯端末越しに、睦城荘は頷いた。

 鬼の異変から一週間。これは学校がようやく再開したその日の放課後のことだ。


『確かに取り戻したようだな。しかも、猿飛君の報告によれば、逸夏君と空の活躍によって、ゴーレムの事態も収束したと』


 荘の感心を否定したのは、他ならぬ空だった。


「いいえ。お父さん、私はあまり役に立ちませんでした」

『ほう。どういうことかな?』

「それは……」


 空は言葉に詰まる。泰吾が代弁しようとしたが、空はそれを止めた。


「私は、雅風をそもそも取り戻してすらいません」


 空は、雅風をモニター前に置いた。


「アキラスは、彼の方から私に雅風を返しました」

『ほう……』

「!」


 泰吾はまさかのカミングアウトに驚愕。


「私の強さを見たいと。取り戻したわけではありません。だから、」


 空は深呼吸し、


「お父さんの指示を守れたわけではありません。帰れと言われれば、すぐにでも戻ります」

『……』


 荘は無言で空を見つめる。そして、


『今の話は本当か? 逸夏君』

「……はい」


 彼をごまかすことはできない。そう判断した泰吾は、正直にアキラスとの一連の流れを打ち明けた。


「猿飛は俺と空がゴーレムを倒したと報告したようですけど、実際は異なります」


 全ては、幸運だった。

 イニシャルフィストがコピー能力を有していたことも。

 アキラスが気まぐれを起こして協力してくれたのも。

 ナラクが抵抗せずに行方不明になり、鬼との戦場からいなくなったのも。

 学校にいた者たちが誰一人、衰弱のみで大事に至らなかったのも。

 イニシャルフィストが雅風をコピーできたのも。


「……実質、確かに自分はあなたが課した条件をクリアしたと言い切れません」

『ほう。……アキラスの語る、空の強さとはなんだ?』

「よく分かりません。ただ、あの場にいた中で一番強いからだと」

『ほう。……空』

「はい」


 改めた荘の言葉に、姿勢を正す空。荘がこれから空への処分を下すのだと、泰吾のみならず、マイと明日香も身構える。


『私は、雅風を持たないお前をそこには置けないと言ったのだ。手段は限定していない。お前がまだ東京にいたいのなら、好きにしろ』




「助かった~!」


 荘との連絡が切れた途端、マイがぐっと腕を伸ばした。


「よかったわね、空ちゃん! これで無事に残れるわよ!」

「はい……」

「どうしたの? 浮かない顔して」

「結局私、あまり役に立たずに申し訳なくて……」

「な~に言ってんのよ」


 マイは空の肩を引っ掴む。


「役に立てなかったって思うのなら、次から頑張ればいいじゃない! ゴーレムの残骸からいいお宝だって見つかったし。ねえ、泰吾!」

「まあ、これをお宝というのかは微妙だが……」


 泰吾はそう言いながら、机に置かれた一件の戦利品を見やる。

 それは、学校に残すには少し光を放ちすぎる剣だった。ルビーやサファイアなど、色とりどりの宝玉が埋め込まれている。ゾディアックに一度流したところ、どうやらこれはオーパーツであり、イニシャルフィストと同じように、持ち主をエンシェントにすることができるらしい。しかし、今のところ力は微弱で、アキラスも全く興味を示さなかったので、今はこの部屋に匿っておくことになった。


「まあ、戦力強化になるのか?」

「まあ、万が一にもエンシェントになりたいってもの好きがいたらね。まあ、石頭が絶対にさせないだろうけど」

「言えてる」


 明日香が報告後そそくさと立ち去っているから、マイはもう彼女の悪態を精一杯口にしだした。部長である明日香にこれほど不満が溜まっていたのか、


「だいたいあいつは変化が嫌いすぎるのよ。空ちゃんが入ってきたときもダメダメの一点張りだったし、そうでなくともあたしのやることすることに口出しするし。ねえ、あんたたちだってあいつには問題あると思わない?」

「問題あるなしはともかく、いくらなんでも陰口が過ぎないか?」

「いいのよ。あいつはむしろ誰かにげんこつでもしてもらわないと」

「あはは……」


 苦笑する空。泰吾が来る前も、長らく明日香の陰口に付き合わされてきたのだろう。彼女の苦労が知れる。


「そういえば、警察には今回のこと、どういう風に処理されているんだ?」

「新種のゴーレム発生、一定の場所を結界に変えるレアケース、とまでしか取り上げられていないわね。あの千草って人もそうすることを約束してくれたし」

「あのときの猿飛先輩、ちょっと怖かったですね」

「あいつは悪魔よ。それにしても、よかったわね、泰吾」

「ん? 何がだ?」

「今度は、後悔しないで」


 あの時、ゴーレムのせいで、泰吾は一年、後悔をし続けてきた。学校をやめ、気力をなくしていた。

 もし、今回で空を救えなかったら、

 もし、また誰かが目の前でゴーレムの犠牲になっていたら。


「……あの時、こうすればよかったんじゃないかっていうのは、まだ考えたりはするさ。でも今は自分の腕が、より遠くまで届いた。今度は、目の前のなにかを助けることができた。……そうだな、今回は後悔しなかった。でも、それはお前たちのおかげだ」

「へえ。以外にしゃべるわね」

「たまにはな。あと、エスカ」

「ん?」

「お前に、これだけは言いたいんだ」

「何よ、改まって」

「俺を仲間に入れてくれて、本当に……」


 泰吾は二人に頭を下げ、


「ありがとう」

今回の話、まだ検索してはいないけど、イニシャルフィストより雅風の方が入力回数多そう……

一か月に一章を目標にして参りますので、どうかこれからもお付き合いのほどをお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ