イニシャルフィスト
初めて感想を受け取りましたああああああああああ!
頑張って戦闘シーン増やしました!
四千字突破しました!
「はあっ!」
泰吾の突きが、アキラスを吹き飛ばす。
「ぐっ……貴様……!」
「……これは自分でも驚いていいよな」
自らを見下ろしながら泰吾は呟いた。一回りも二回りも大きくなった拳。白い武装は腕だけでなく、足にも装備されており、腰には加速力を与えるためのブースターが取り付けられている。首に纏われる白いマフラーは、風とともに靡いており、これまでの彼とはくらべものにならないほど雄々く思えた。
「えっと……進めと念じると……」
泰吾のブースターが炎を噴き出される。
「うわわっ! ……っと」
泰吾は予想外の速さに少し戸惑いつつも、すぐに体が慣れた。
「なるほどね……よし!」
それとともに彼の体は高速移動を開始し、アキラスを翻弄。アキラスと少しだけ離れている地点を何度もたたきながら、彼の注意を散漫させる。しかし、それが続いたのは最初の数回だけで、やがて彼も泰吾の動きを読んだのか、泰吾がいる場所を的確にペネトレイヤで刺してきた。
大ジャンプにより回避すると、
「な、なんだこれは!?」
ただでさえ高かったこれまでの数倍の高さに、自分でも驚く。松の木どころか、東京を一望できる高さに自力でジャンプできるなど、想像していなかった。
それをアキラスは満足そうに、
「面白い! 来い! 貴様の強さとオレの強さを比べようではないか!」
武器を構える彼を見て、泰吾も決意を固める。
これまでのように、右手に力を籠める。エンシェントの力が全て彼の右手に集約されていくのを感じながら、ブースターに火が溜まる。
そして、
「でりゃああああああああああ!」
その拳を放つ泰吾とともに、巨大な白い拳の幻影が穿つ。ペネトレイヤごとアキラスを大海に放り投げるそれは、イニシャルフィストの更なるスペックを示していた。
だが、アキラスはまだ倒れない。
「なかなかのものだが、まだオレには届かない!」
痛みなど全くなさそうな体。このイニシャルフィストですら、彼には決定打にならないということか。
だが、ここでとまるわけにはいかない。
「まだまだ!」
泰吾の蹴りを皮切りに、二人の肉弾戦が始まる。互いに一歩も譲らない拳とランスの戦い。さらに、そこにマイの乱入により、より一層アキラスが不利になる。
「面白い。貴様たちの強さがだんだんオレに突き立てられている……!」
「ほんっと、こいつがなにしたいのか分からないわ」
イニシャルフィストとハウリングエッジ、ペネトレイヤの無数の交差とともに、エンシェントたちの対話。
「強さを証明したいなら、どっかで武闘会でも開催しなさいよ! エンシェントのみとでも記してさあ!
ゾディアックが許すかどうかは別問題だけど!」
「ゾディアックなどという弱者の集まりなど知らん!」
「ゾディアックが弱者……?」
泰吾は、アキラスの言葉を疑った。ゾディアックとやらの組織については全く知らないが、メンバーである睦城荘は、木刀一本でエンシェントを上回るという話を聞いた。そんな彼が所属する組織が弱いとは到底思えない。
「やつらは弱い。自ら安全な場所からは決して出ることなく、危険な代物を扱うなど、弱者のやり口だ!」
「命令する人間が安全なところにいないと、指揮系統が混乱するでしょうが!」
「命令するならば、前線で立って命を張って命令しろ! それができないなど、ただの臆病者だ!」
ペネトレイヤの一閃が、泰吾を退かせる。もう一度挑もうとしたところで、
「うっ……」
彼の頭に何かが閃いた。脳内に矢継ぎ早に繰り返される映像を、泰吾はイニシャルフィストの能力なのだと判断する。
「これ……」
「よそ見をするな!」
しかし、考えるまでの時間はない。ペネトレイヤの乱れ撃ちをよけながら、泰吾はマイの隣に飛び退く。
「エスカ!」
「えっ! 何!? って、うわっ!」
マイの背中に触れる。当然マイは抵抗しようとするが、それを無視し、
「うわわわわわ!」
彼女のエンシェントの力を吸い取る。無論マイはそそくさと泰吾から離れる。
「何よ!? 何すんのよ!? エンシェントが覚醒したら変態へジョブチェンジしたの!?」
「変態とは失礼だな。これがこのエンシェントの能力……らしい」
「らしいってなによらしいって」
「分からないから、とりあえず実践してみる」
「だから、それで女の子の体に触ろうとしないでよ! きゃっ!」
文句を垂れ流していると、アキラスの突貫が襲う。それらをよけながら、
「できそうなものは実践する。それがクロガネ屋の掟なんだ。理解してくれ」
「あんたの実家の家訓なんて知らないわよ! それより、うわっ!」
「くっ……はあああ!」
泰吾が拳を突き上げると、白い波導が天へ放たれる。道中のランス全てを打ち落とす一撃が、雨のように降り注ぐランスのなかの一つの空間を作った。
「悪いけど、説明している暇はない! 信用してくれ!」
「……ああもう! 何もなかったら恨むからね!」
マイは投げやりに頷く。引き続き彼女の背中に手を当てる。彼女のエンシェントの力が流れ込んでいく。
「……よし、もういいぞ!」
「なんなのよ全く! あんた、何がしたいの!?」
「それは、まあ」
白いイニシャルフィストが赤い光をほのかに纏う。それはやがて炎となり、渦を巻きながら、彼の体を包んでいく。
「こういうことができるかららしい」
炎を破り、現れた泰吾は、白のイニシャルフィストではなかった。
むしろ、さっきまでのイニシャルフィストとの共通点が白いマフラーしかない。白い拳は赤い炎が描かれたものに変化。それだけではない。
赤い瞳に、全身に迸る炎。言ってしまえば、泰吾が完全に自分と近しい姿になったのだ。
「あんた……それ……」
「悪いけど、俺に聞かれても答えられない。こいつが教えてくれたんだ」
烈火のイニシャルフィストを見せつける。
「それが、あんたのオーパーツの能力なの?」
「の、ようだ」
泰吾は頷いた。
「どうやら、仲間の能力をコピーできるらしい」
「あれだけの機動力と攻撃力に加えて、そんな特異能力まで……? どこまで目立てば気が済むのかしら……」
「さあな」
「ほう、面白い!」
アキラスは興奮冷めぬようで、雄々しく新たな姿の泰吾へ挑む。
「貴様の強さ、どれほどのものか!?」
泰吾は彼の手のハウリングエッジを振り、アキラスと打ち合う。火花を散らし、まさにマイに匹敵する火力を誇ったが、アキラスへの決定打にはならない。
「泰吾! ちょっと来なさい!」
マイの命令で、泰吾は後退。
「なんだ?」
「いちおう確認しておくけど、そいつの使い方分かっている?」
「まあ、ある程度は……」
「ならばよし! いい? 最大火力をぶつけるわよ! 二人なら、きっとあいつにぎゃふんと言わせてやれるわ!」
「ああ……それで、どうすればいい?」
「あたしの動きに従ってやればいいわ。準備はしてあげる」
「了解した」
「じゃ、行くわよ! 来なさい! あたしの忠犬たち!」
マイが指をパチンと鳴らす。すると、彼女の周りに炎が集い、再び数体の炎の犬たちがマイに従う。
アキラスもこちらの動きに警戒するようにペネトレイヤを構える。
「さあ、いきなさい!」
炎の犬たちが一斉に動き出す。それぞれアキラスを中心にエンジンを組み、時々その肉を狙う。しか
し、それらは全て簡単に受け流される。
だが、犬たちは全て最初から囮でしかない。
炎の剣、ハウリングエッジに炎が溜まっていく。それは赤々しく、強く。
強大な炎が発生するとともに、その能力は二重に重なる。炎の明かりは、太陽の輝きへと進化していく。
「さあ、行くわよ!」
「ああ」
二人は同時に剣を振り上げる。炎たちはまるで太陽の周りのプロミネンスのように舞い踊りながら、二本のハウリングエッジに吸い込まれていく。
「くらええええ!」
「でりゃあああ!」
二人は同時にハウリングエッジを振り下ろす。
放たれる二人の炎は混じり合い、双頭の狼となり、アキラスを喰らう。狼はそれでも止まることなく、海へ向かって突き進む。水柱とともに、狼は消滅。波打ち際まで、その圧倒的熱量が伝わってくる。
「ぐおおおおおおおおおおお!」
しかし、アキラスは倒れない。歯を食いしばり、汗を飛ばしながらも、例え狼が消滅したとしても、決して倒れはしなかった。
「なんてやつ……」
どうやら泰吾の特異能力も限界だったらしい。烈火のボディは元の白に戻っている。
「ふふふ、見せてもらったぞ、貴様の強さを!」
アキラスは不敵な笑みを崩さず、
「さあ、まだ終わらん! 貴様の強さを、もっと! もっと! このオレに突き立てろ!」
「さっきから同じこと何回繰り返しているんだ、あいつ……」
「ははは……くっ!」
しかし、とうとうアキラスの体に異変が訪れる。とうとう、彼が膝を折ったのだ。
「な……」
苦しそうに起きあがりながら、アキラスのダメージが、自分たちの、そしてアキラス自身よりも大きかったことを理解した。
「面白い……まだまだここから、オレたちの戦いは終わらない!」
彼の目に諦めはない。むしろ、自分を圧倒した泰吾に対して明らかに興奮を示している。
彼はまだ続けるつもりなのか。
泰吾は再び身構えようとすると、
「……!? 待って!」
マイが泰吾の肩を叩く。
「やばい……これはやばいわ……!」
「どうした?」
「ゴーレムよ! それも、いつものじゃない……!」
彼女の顔がみるみるうちに青ざめていく。
「待って。この方角……まずいわ! 泰吾! いますぐ戻るわよ!」
「どうした? おい!?」
しかし、説明する時間も惜しいのか、マイは彼に、そしてアキラスに背を向けて内陸の方へ走っていく。エンシェントの強化された跳躍力を駆使し、すぐに見えなくなった。
彼女の慌てようからただ事ではない。
「すまないが、勝負は預ける!」
「む! 待て! 貴様の強さ、まだ完全に見せてもらってはいない!」
しかしというかやはりというか。アキラスが自分を追って、建物を飛び越えてくる。
ゴーレムの上、アキラスまで相手にするわけにはいかない。
泰吾は、ブースターを再加速。ヒビが入るほどの加速力を備え、一気にアキラスとの距離を引き離した。
すでにすぐにマイの赤い後姿を発見。彼女の手を掴み、
「このまま一直線で行く! 場所は!?」
「あっちよ!」
マイの指さす方へ、ひたすらにまっすぐ進行する。
最近時間を見つけてはパソコンを開いてアクセス数ににやつく毎日です。




