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Near Real  作者: 東田 悼侃
第四章 破壊編
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2nd story 逡巡

「人類が―――」


「まあ、そのうち来るだろうとは思っていたよ」


人類が攻めてきたというのに、二人はやけに冷静だった。俺はしかし、冷や汗を抑えることが出来ず、二人の冷静さにはむしろ不気味さを感じた。


「それで、それを発見したのはどこなんだい?」


タムズが人類の侵攻を伝えに来た兵士に尋ねる。兵士は、震える声で、沿岸から百キロ先の海上です、と答えた。


「それじゃあ、まだ上陸までには猶予があるね」


「直ちに、全国民に発令しろ。レベル3だ」


「は!」


兵士はそれでも、キビキビとした敬礼をして部屋から駆け足で出ていった。


「「さて」」


タムズとキースが同時に振り向く。


「というわけで、唐突にこんな事態になってしまったわけだが」


「君はどうするんだ?シェル」


「どうする、とは?」


「どっちに味方するんだい?」


「僕達魔族か、それとも人類か」


二人は、これまでにない険しい表情で俺を見詰めた。


「これは君が決めることだ」


「その結果を、僕達は否定しないよ」


俺は躊躇わずに答えた。


「俺が味方するのは、俺と同じように、人類と魔族の共存を目指す者達です」


「それはつまり」


「明確にはどちらに味方するということだい?」


「貴方達魔族です」


「そうか―――」


キースが口をつぐむ。


「例え、攻めてきた人類の中に、君の友人や親族がいたとしても、同じことが言えるかい?」


タムズの言葉に、俺はハッとした。脳裏に、部長やサルゴン達武術部の仲間、メルシス達、討伐隊で出来た友人達の顔が浮かぶ。今回攻め込んでくる人類軍の中には、間違いなく彼等が居る。果たして、俺は彼等と命のやり取りが出来るだろうか――――――






―――――――俺には、その覚悟はできなかった。


「―――君は、この町に残っているといい」


キースが口を開く。


「この戦争は、僕達だけで捌くよ。これまで通りに」


「でも、それじゃあ―――」


俺は何のためにここへやって来たのか。ヴェーダのリウィウスさん達を置いてきてまでここへやって来た意味が、それではなくなってしまう。


「何、逃げることは間違ったことじゃないよ」


「心の分別もつかないうちに決断することの方が愚かだ」


「参戦は、君の心が定まってからでも遅くはないだろう?」


「今はとにかく、妻のイヴと一緒に居てやるといい」


二人は席を立つと、部屋の扉を開けて俺を促した。


「君は家に帰って、安全を確保しておくといい」


「それと、国から出る指令には、必ず従うように」


「これは、皆の安全を守るためのものだからね。一人でも従わない者が居ると、支障が生じてしまうんだ」


「僕達はしばらく、この城から離れる」


「また今度会おう」


「また今度」


二人に促され、俺は家への帰路についた。

遅くなりました。申し訳ありません。


次回更新は土曜日です。

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