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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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25th story 人類と魔族 2

「君が覚醒するのには、おそらく魔王の血を直接接種する必要がある」


キースが言う。


「君の中には魔王の血が混じっているとはいえ、それは全体からすれば数パーセントでしかないかもしれない」


「君か生まれるまでに、沢山の人類の血が混じったからね」


「だから、君が今発揮できている力は、多分、僕達には到底及ばないだろうね」


「十分の一か、あるいは百分の一か。そこは分からないけどね」


「話を戻すとさ、君が覚醒するには、君の中に流れる魔王の素質を、開花させなくちゃならないんだよ」


「それが、年齢と共に開花するものである可能性がないわけでもないんだけどね」


「僕達のこれは生まれつきのものだから、君のその力も、おそらく生まれつきなはずだ」


「けれども、君にはまだ開花の兆しがない」


「ということは、次に考えられるのは、血液中にある魔王の血の割合さ」


「だから、体内に僕達魔王の血を流し込むことで、君の中で魔王の素質が覚醒する可能性はある」


「何ならやってみるかい?今」


タムズに尋ねられ、俺は首を横に振った。


「止めておきます。他人に借りた力でどうこうでは、物事の本質的な解決には至らない気がするので」


「そうかい」


二人は残念そうに頷いた。


「まあきっと、そのうち必要になってくるだろうとは思うけどね」


「何せ、向こうにも魔王の血が流れる者が居るかもしれないんだから」


「ピシウスから続く血縁が、あるかもしれないから」


できれば、そんな相手は居て欲しくないものだ。人類側には、何万人という勇者が居る。それを相手にしなければならないと考えただけでも、空恐ろしいと言うのに。


「まあいいや」


「うん。強制はしたくないからね」


「とりあえず、君には休憩用に一室を貸すよ」


「これから、お偉いさん達と、堅苦しく君の扱いを決める協議をしなくちゃいけないから」


タムズが指を鳴らす。すると、広間の隅から一人の魔族の女性が姿を現し、俺に向かってきた。


「彼女を君に寄越そう」


「僕達に使えてくれている召し使いさんの一人だ」


「超優秀な人なんだよ」


「何か用事や質問があれば、彼女に言ってくれ」


「大体のことなら答えられると思うよ」


俺はその女性を見た。どこかの誰かさんが妄想に描くような、いわゆるメイド服というものに身を包み、かしこまった動作で俺に一礼する。顔立ちは整っているだろうか。人類の先祖が魔族であると聞いた後でこう見ると、なるほど、確かに、どこか人類と共通した顔立ちにも見える。


「こちらへ」


彼女は、俺は広間の脇の扉へと案内した。入ってきた時とは違うものだ。


「それじゃあ、また後でね」


「ゆっくりしていてね」


魔王の二人が俺に声をかける。俺は二人に一礼すると、案内されるままに扉から広間を出た。


広間を出てから、彼女の後を黙々と進む。その沈黙に、居心地の悪くなった俺は、彼女に声をかけた。


「あの―――貴女のお名前は――――なんとお呼びすれば」


「イヴ・ルイースです、シェル様」


「えっと、イヴさん。あの魔王様二人は、おいくつなんですか?魔族は人類より長生きですから、今一見た目だけでは判別ができないんです」


「お二人とも、今は四十八歳です」


イヴさんが答える。たしか、魔族の平均寿命はおよそ二百歳だから、人類の平均年齢を高く百歳だとしても、魔王二人は人類でいうところの二十四歳ぐらいの時期か?そう考えると、魔王としては意外に―――


「若い」


「ええ。仙台のご存命が短かったもので」


「先代は、おいくつまで?」


「百二十歳で亡くなられました」


百二十歳で短命だとさ。気が遠くなるよ。


「ちなみに、参考までですけど、イヴさんはおいくつなんです?」


「三十八です。もうすぐ誕生日ですけれども」


人間に直すと、十八歳ぐらいか。俺は一人頷く。


「着きました。ここがシェル様のお部屋です」


イヴさんが、ある一室の扉を前にして言う。


「あの、イヴさん。その様付けは止めていただけますか?なんだかむず痒くなります」


「では、シェル殿」


「いや、殿でもなくて―――」


「シェル―――?」


「呼び捨て!?行きなり親しくなった!?いや、もう言い易いのでいいです」


「分かりました。では、シェル、ここが貴方のお部屋です」


結局それかい!



次回更新は水曜日です。


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