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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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24th story 人類と魔族

「君が魔境に来ることになった過程は、一応聞きはしたんだけどね」


「重要なところで間違えていたりするといけないから、もう一度、君の口から説明してくれないかな」


双子の魔王に再度の説明を求められた俺は、自分が討伐隊として魔境にやって来た時のことから、求められる限り細かく成り行きを説明していった。


俺の説明が、あの駅前での騒動からの“悪魔”と言う呼称のくだりに入ると、魔王の二人は、互いに顔を見合わせて、唐突に笑いだした。どうしたのだろうか。俺は口をつぐんで二人を見た。


「ああ、いや、ごめんよ」


「何でもない。続けてくれ」


俺は説明を再開した。半アクピス教組織、ヴェーダと、それに加入した話。そして、アクピス教の襲撃―――


全てを語り終えるのには、三十分以上を要した。成る程、と二人の魔王は頷く。


「それにしても、滑稽だね」


「皮肉だね」


彼等は言う。


「“悪魔”だってさ」


「“悪魔”だってね」


クスクスと二人が笑い合う。意味の掴めない俺は、思いきってどういうことかと尋ねた。


「そもそも君達は、思い違いをしているのさ」


タムズ・アカドが言う。


「そうそう。“悪魔”っていうのは、神に逆らって地上に堕ちた天使のことを言うんだよ」


続いて、キース・アカドが口を開く。


「つまり“悪魔”とは、裏切り者のことを指すんだよ」


「親と喧嘩して、勘当されるようなものさ」


―――裏切り者。確かにそうだ。アクピス教や人類からすれば、魔族との共存を望む俺達は裏切り者だろう。そんなことなど、前々から承知している。それの何が可笑しいのだろうか。俺が今一腑に落ちない顔をしていると、二人は再び説明を始めた。


「そもそも、僕達魔族からすれば、裏切り者は人類の方なんだよ」


「“悪魔”と言われるべきは、本来は人類の方なんだよ」


つまり、どういうことなのか。俺には未だ、二人の言わんとしていることが分からない。彼等は顔を合わせると、さらに詳しい説明を始めた。


「今の人類の祖先は、二種類あるんだよ」


「一つは、今の人類領域である大陸に、ずっと昔から暮らしていた、いわば原住民」


「もう一つは僕達―――魔族なんだよ」


「え!?」


俺は目を見開いて、すっとんきょうな声をあげた。人類の祖先が―――魔族?


「今から二千年以上前のことだね。僕達魔王の血筋の人物で一人、野心を持った男が居たんだ」


「彼は血縁上、魔王にはなれなかったんだ」


「実兄がいたからね」


「でも、彼は魔王になりたかった」


「だから、実兄の暗殺を企てた」


「けれども、その計画が父である魔王にばれて失敗。投獄された」


「結局彼は牢獄から逃げ出し、人類領域へと渡った」


「そこで、まだ文明の発達のなかった原住民と接触し、自らの知恵を武器に、王よりも上の存在、“神”として君臨した」


「その彼こそが、今の君達の言う、アクピス教教祖」


「ピシウスだね」


「てことは、どのみち俺の体には、魔族の血が―――?」


俺は二人に尋ねた。二人は首を横に振ると、次の説明を始めた。


「そうじゃあなかっただろうね」


「けれども、何らかの形で、“勇者”と呼ばれる者の体内には、“魔王”の血が流れているだろうね」


「でなければ、勇者が魔王を除く魔族達より強いことに説明がつかない」


「僕達にも、人類のことはよくわからない」


他に質問はあるかい、とタムズ。俺はしばらく思案したあとに、二人に尋ねた。


「俺は魔王の血を微量ながら継いでいるらしいですが、そんな俺が他の勇者のように“覚醒”しないのは、何故ですか?」


元から俺が覚醒していた可能性は、ステータスプレートに“未覚醒”とあることから、切り捨てていいだろう。


「先代は、ヘロドトスにそれを伝えていなかったのか?」


「先代もまさか、ヘロドトスの子孫に“勇者”の適性が発現するとは、思っていなかったんだろうね」


「だから君も知らないわけか―――分かった。説明しよう」


「とはいえ、僕達にも確証はない。恐らくの話にはなるんだけど」


「なんせ、前例がないからね」


「君が覚醒するのには、おそらく魔王の血を直接摂取する必要がある」

次回更新は土曜日です。

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