21st story 新天地
遠くに沿岸を視認して、俺は深く溜め息を吐いた。
リウィウスさん達と別れ、町中に降りてから、俺は紙に書かれた連絡先に電話をし、事のあらましを告げた。電話口の男性は俺の話を聞くと、俺に居場所を教え、そこへ来るよう指示した。指示された場所へ俺が出向くと、そこには一隻の船が用意されており、有無も言わせず、それに乗せられた俺は、一人で魔境までの航海をした。
何日が経ったのか、ついに、魔境を視界に捉えた。
それから更に一日。俺の乗る船は、とうとう魔境へと到着した。
魔境に上陸した俺は、あてもなく内陸を目指そうと歩き始めた。しかし、しばらくもしないうちに、一人の魔族に呼び止められた。
「止まれ!何をしに来た!」
魔族の男は、魔族語で俺に向かって叫んだ。
「攻撃の意思はない!」
俺は高台の魔族に向かって、そう叫び返した。
「その場で両手を挙げて動くな!怪しい動きをすれば撃つぞ!」
彼はそう言いながら高台から降りてくると、手に構えた銃。を俺に向けながら、俺の前に立った。
「よし、武器は所持していないな。両手を出せ。念のため、縛り上げるぞ」
俺は言われた通りに両手を差し出した。魔族の男が、俺の両手を腰から取り出した縄で縛る。
「これから内陸に送還するが、下手なことはするなよ。その命が惜しければな」
彼は俺にそう告げると、胸から携帯電話のような機械を取り出し、内陸からの迎えを要請した。
三十分ほど待っていると、内陸の方から車が走ってきた。見た目はまるで護送車のようないかつさだった。こんなものが常備されているのだろえか。車の中から数人の魔族が出てきて、俺を車の中に乗せた。ここまでは昔、ヘロドトスが体験したものと、同じような流れだ。
車は、三十分ほど走ると停車した。
車内から降りた俺が連れていかれた先は、第一防衛線より少し内陸に入った所に建てられた、小さなビルだった。
「君の名前は?」
通された部屋には、見た目からして優等生そうな、人間で言うところの公務員のような魔族が居た。
「シェル・クライマンです」
俺は彼の問いに答えた。
「性別と年齢―――あと、身長と体重も」
「男、十七才。身長は178㎝、体重は69㎏」
「フム―――ここ、魔境へ来た目的と経緯は?」
俺はここへ来ることとなった経緯と、人間と魔族の共存についてなるべく詳しく説明した。
「――――――どうしたものか」
全ての話を終えると、彼はしばらく頭を抱えたあと、俺を待たせて奥の部屋へと消えた。しばらくして部屋に戻ってきた彼は、開口一番に、更に移動することを俺に告げた。
更に数時間、俺は車に揺られた。
次に外に出たときには、辺りは暗くなっていた。
「車の中じゃ、君も眠れないだろう。今夜はここに泊まる。明日もまた、数時間移動することになるから、ゆっくり休んでおきなさい」
車の中で俺の回りを固めていた魔族の中の最年長と見られる者がそう言う。俺は、周りに何もない、草原にポツリと建てられた宿に泊まることになった。
次回更新は水曜日です。