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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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18th story 曇天 2

リウィウスさんの持つライトから延びる明かりが、地上へと続く階段を照らした。それを見て、皆から歓声が上がる。リウィウスさんは俺達をその場に留まらせ、一人階段を上っていった。しばらくして、上で扉を開ける音がする。


「上ってきていいぞ」


リウィウスさんの声が上から響いた。俺達は列になって、一人づつ階段を上った。本部から続いていた入り口と同じように、階段は狭く急なものだった。上から差し込んでくる太陽の光が眩しい。


地上に上がると、俺は新鮮な空気を求めて深呼吸をした。それから周囲を眺める。俺達は、森の中の開いた空間にいるようだった。四方は全て木に覆われている。


全員が地上へ出たのを確認すると、リウィウスさんは扉を閉じた。その上から土を被せると、周囲との見分けはつかなくなった。完璧なカモフラージュが出来ている。


リウィウスさんは、地面を何度か踏み固めると、立ち上がって俺達を見詰めた。


「この先の森の奥に、廃れた建物がある。ひとまず、今夜はそこで明かすことになる」


リウィウスさんが俺達に今後の対応を説明する。数人がその言葉にざわついた。


「野宿に近いから、抵抗のある人も居るかもしれない。けれど、とにかく今夜は我慢してくれ。このまま町に降りても、すぐにアクピス教に見付かるだけだ」


そう言うと、リウィウスさんは俺達に背を向けて歩き出した。


「こっちだ。歩いてすぐの距離だ」


また歩くのか、と何人からか溜め息が漏れる。しかし、リウィウスさんの言葉に嘘はなく、そこから五分も歩いたところで、目的地に到着した。


「無視とか嫌だな」


女性の一人が呟く。建物は、絵に描いたような廃屋だった。ところどころガラス窓は割れ、壁を植物が這い、コンクリートは欠けている。


「このあとの行動は、また追って連絡する。みんなは休憩していてくれ」


リウィウスさんの言葉に、皆はその場にどっと座り込んだ。俺も地面に腰を下ろそうかとしたところで、リウィウスさんから声がかかった。


「シェル、話がある。こっちへ来てくれ」


リウィウスさんは建物の裏へ俺を招いた。何の用だろうかと首をかしげながら、俺はそれに従った。


「アクピス教がいきなり攻めてきたことなんだけどね」


リウィウスさんはそう切り出した。こうなったのはやはり、俺の駅前での一悶着が原因と言うことなのだろうか。


「一つ、引っ掛かることがあるんだ」


しかし予想外に、リウィウスさんに俺を責める気はないようだった。


「あの本部はね、アクピス教には発見されていないはずなんだよ―――まあ、僕が勝手にそう思っているだけで、案外ばれていたのかもしれないけど」


リウィウスさんは苦笑した。


「でも、どのみちどこからばれたのか―――あそこがばれるってのが、僕にはちょっと信じられなくてさ」


確かに、都市部から離れたらどこにでもありそうな工場の地下に本部はあったけれど、でもばれないことは無いんじゃないのだろうか。リウィウスさんは続ける。


「これは現状、僕の予想でしかないんだけれど―――」


リウィウスさんは間を置いて言った。


「僕は、ヴェーダの中に、アクピス教の内通者が居るんじゃないかと疑っているんだ―――勿論、本当はみんなを疑うようなことはしたくないんだけどさ。みんなのリーダーとしての立場にある以上、みんなを守るために、みんなを疑うことも必要なんだ」


リウィウスさんは、一息挟むと続けた。


「それで、仮に内通者が居たとして、それが誰なのかは検討もつかない。でも、もしそれがここに連れてきた五十人の中にいるとしたら、ここにもそのうちアクピス教の手が伸びてくるだろう。そうなったときには、―――シェル、僕は君を逃がすことだけを考える」


「俺を逃がす?」


何でだ?俺がいても、戦力にはならないとでも言うのか?

遅れました。ごめんなさい。



次回更新は水曜日です。

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