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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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救いの男:魔族拠点へ

「貴様ッ!どういうつもりだ!仲間を裏切るというのか!」


駆け付けてきた魔族の一人が、リキニウス達に助けられて立っている魔族の男へと怒鳴った。


「そうじゃあない」


声量のない声で答えながら、リキニウス達の肩に助けられている魔族は首を横に振った。


「この人達は俺を助けてくれたんだ。人間ではあるが敵ではない」


「それを信じろと言うのか!」


「信じろとは言いません」


答えたのはリキニウスだった。


「私達は彼を連れてきただけです。彼を引き取って頂ければ、後は用もないので帰るつもりです」


「なら、そいつをまずそこに座らせろ」


リキニウスとニケは魔族の兵の言葉に従い、連れてきた魔族の男を地面へと座らせた。


「五十メートル以上後ろに下がれ――――もっとだ」


言われた通りにリキニウスとニケが五十メートル以上後退すると、兵士のうち二人が怪我した魔族の男を回収した。


「それじゃあ、私達はこれで――」


それを見届けると、二人は兵達を背に帰ろうとした。しかし、そこに待ったがかかる。


「待て。そう簡単に帰すわけには行かない。これで人類軍に我々の拠点の位置を喋られても困るんでな。貴様らの身柄は拘束させてもらう」


リキニウスとニケの周囲を、四人の兵が包囲した。銃口を二人に向け、その動きを見張る。二人は咄嗟に両手を挙げた。


「そのまま動くなよ。武器の有無を確認する」


余った魔族の一人が、リキニウスとニケの身体検査を行った。ニケは顔をしか目ながらも、どうすることもできないと悟り諦める。兵の手が、ニケのバックに伸びる。中から回復促進薬の瓶を取り出した兵は、それをニケの前にかざした。


「これは何だ」


「薬です。傷の回復を促進させる」


「成る程。―――どれぐらいの効力だ」


「正確には分かりませんが、人間間で公式に販売されているものなので、信用はできるかと」


「ふむ―――」


兵士は瓶を興味深そうに眺めた後、バックに仕舞い戻した。


「これは我々が預かっておく。そのまま、下手な行動はせずにじっとしていろ」


その兵はニケのバックを肩にかけると、二人から離れて無線機のような物を取り出した。それで誰かと話し始める。


しばらくして、話しにかたが付いたようで、その兵が二人の前へと戻ってきた。


「これから貴様ら二人を我々の拠点の中へ連行する。手錠をかけるが、大人しくしていろよ」


兵士が二人に手錠をかける。二人は魔族に大人しく従った。


リキニウスとニケは魔族の拠点の中央へと連れていかれた。そこには大型のテントが張られており、どうやらその中に魔族の責任者がいるようであった。


四方から銃口を突き付けられた状態で、二人はそのテントの中へと入れられた。


テントの中は広々とした空間が広がっており、左右と後方には武装した兵が立ち並び、前方には机が置かれていた。机には一人の魔族が腰を掛けていた。恐らく、彼がこの場の最高位の人物なのだろう。


「ここまで連れてこい」


その男が、リキニウスとニケを連れてきた兵にそう言い、机の前を示した。二人が兵士に机の前へと連れていかれる。男は、二人の顔を交互にゆっくりと眺めた。やがて、その視線がリキニウスへじっと注がれる。


「その顔立ちは――――まさか―――」


男がブツブツと呟く。


「そこの男、名前は何という」


男に尋ねられたリキニウスは、名を名乗った。


「リキニウス・バグダといいます」


その名前を聞いて、男の顔色が豹変した。


「―――リキニウス..だと。もしや―――失礼なことを聞くが、君の両親は君と血が繋がっているかね?」


リキニウスはその質問を、首を横に振って否定した。


「育ての親とは繋がっていません。血の繋がった両親が、他に居たそうです」


「その両親の姓は、クライマンではないだろうな」


「何故、それを―――」


そう言いかけて、しかし、とすぐに思い至った。自分の母親は魔族だったのだ、と。


「そうか―――そうか」


男はリキニウスを眺め、何度も頷いた。


「育っていたのか―――こんなにも逞しく。これで二人も報われる――」


「一体、どういうことでしょうか」


リキニウスは尋ねた。


「私の母は、本当に魔族だったのですか?」


「人を払え」


男は部屋の中の兵士に声をかけた。しかし、と兵達が顔を見合わせる。


「聞いただろう。この男はクライマンの血を継ぐ者だ。何も心配するな」


それを聞いて、ゾロゾロと兵達がテントから出ていく。中には、リキニウスとニケ、魔族の男の三人だけが残された。


「さて」


しばらくして、男は口を開いた。


「君に伝えよう。今から五十年前に起こった、魔族の人類へ対する憎悪の発端を」

次回更新は水曜日です。

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