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Near Real  作者: 東田 悼侃
第一章 日常編
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6thstory 勇者適性者

「初めまして、シェル・クライマン。そして、そちらは...」


職員の男に案内されるがままに、じいさん達の対面の机まで移動すると、じいさん筆頭が酷くしゃがれた声で挨拶をして来た。


「タケノオノ・スサノオです。クライマンの担任です」


「そうですか。スサノオ先生、初めまして。私は教育委員会委員長の ラマ・ブルータス・ジグルです。宜しくお願い申し上げます」


じいさん筆頭改め教育委員長さまがお辞儀をする。当然、俺と先生はお辞儀を返す。


「まあ、先ずは座ってください」


ジグル委員長に促され、俺達は用意されていた椅子に腰掛ける。机の上には、金属か何か、そこら辺の類いの素材でできたB4程度の大きさのプレートが一枚。何に使うのだろうか。


「本来なら、挨拶がてら世間話でもするところですが、生憎我々も余り時間がないので、ここでは割愛させていただきます。いきなり本題に入らさせていただきますよ」


話が早く終わる分には何の問題もない。俺は頷いた。


「さて、貴方をここへ呼んだ理由ですが、それを説明する前に、一つ質問がございます。シェル・クライマン、貴方はこれまでに、大きな手術をしたことや、特別な訓練などを受けたことはありますか?」


ジグル委員長が俺に尋ねる。特別な訓練?手術は兎も角、何だそれ。我が家はFBIでもねーし、スパイとかでもねーよ。


「いえ、どちらも」


「そうですか」


ジグル委員長は俺の答えに頷くと、隣に座る他のじいさんたち、おそらく教育委員会かどこかのお偉いさん方とゴニョゴニョと小さく囁きあった。直ぐに話は終わり、ジグル委員長は俺の方へ向き直る。


「失礼。それでですね、貴方をここへお呼びした要因は、貴方も既に気付いておられるとは思いますが、“勇者適正診断”の結果についてのことです。あれは、結果の偽造や診断時に何らかの不正を行ったのではなく、素の数値ですか?」


やっぱり、やり過ぎた?確かに、勇者の適正者であるシス・ムガルが小学生やそこらに思えちゃうような数値だったからなぁ。もう少し自重すべきだったかな。とは思いつつも、あれは確かに俺の肉体のみで出した結果であることに変わりはない。ジグル委員長の投げ掛けに頷く。ジグル委員長が、フー、と溜め息を吐く。そして、口を開いた。


「もし、あれが本当に貴方の実力を示す数値であるのなら、これはとてつもない大問題です。この数値は、適性者が“勇者”として覚醒し、さらに過酷な鍛練を積んだ精鋭のステータスと、ほぼ同等です。既に貴方が“勇者”として覚醒していても、いなくても、この成長度。将来、我々人類の切り札に成り得る可能性が、貴方にはあります」


ん?どういうこと?俺が勇者の、さらにその精鋭と同レベル?マジすか?それで特別な訓練してないか聞いたのね?それもせずに最早人類最高峰レベルってこと?.........俺最強?おれTUEEEEEEEEEEEってやつ?チートとかバグみたいな存在すか?

まてまてまてまてまてまてまてまてまてまて。思考が追い付かない。


「私達は困惑しました。この記録は本物なのか。それとも偽造なのか。本物である可能性は圧倒的に低い。高校生でこんな数値、見たこともありませんから。ですが、可能性がない訳ではなかった。もし、この記録が本物であったのなら、我々はすぐにでも貴方を保護し、特別な育成をさせる必要があるかもしれない。しかし、紙の上の数字だけでは、本物であるか偽造であるか、判断のしようがない。だから貴方を呼んだのです。私達の目で、その記録の真偽を確かめたかったのです。」


ア、ハイ。ソウデスネ。ゴモットモ。


「その机の上にある物は、ステータスプレートと言うものです。任意の対象者が直接触れる事で、その対象者の名前や体格、適性などの様々な情報が表示される優れもの。素材と作り方、使い方だけが伝わっており、原理などは解明されていない、いわばオーパーツのようなものでもあります。本来なら、“勇者”や“魔法使い”が覚醒し、一人前として認められたときに渡される身分証明書のような役割を果たすものでもありますが、今回は特別に貴方にお渡しします。これが、一番早く、正確に貴方の実力を判断する方法です」


俺は、机の上に置かれているステータスプレートなるものを拾い上げた。重厚な見た目に反して軽い。


「使い方は簡単。そのプレートに手をかざすだけです。そのプレートは“魔法石”という素材からできており、“魔法石”に含まれる魔力が反応してくれます。自然の“魔法石”なので、魔力枯渇の心配もありません」


“魔法石”

人類領域の極端で採れる、自然から魔力を産み出す鉱物である。その原理は判明していないが、おそらく空気中の何らかの元素から魔力を作り出しているのだろうと言われている。


「先に忠告しておきます。もし、あの診断で何か不正を働いていたのなら、今のうちに申告しなさい。今ならまだ、情状酌量の余地はあります」


ジグル委員長の視線が、剣呑なものに変わる。だが、俺は何もしていない。これだけは確かなのだ。自信をもって、ステータスプレートに手をかざす。プレートが、仄かに光を帯びた。魔力すげえ。俺も欲しい。

やがて光が収まる。さっきまで無地だったプレートの表面には、文字が刻まれていた。



シェル・クライマン 男 十五歳 勇者適性者

身長 176.2㎝ 体重 72.8㎏ 練度 5


総合筋力 18000

瞬発筋力 24000

持久筋力 18300

純粋筋力 14100

体力 10000

物理耐性 5010

俊敏 17600

総合戦闘力 20000



これらの数値は、一般平均を10とした場合のものだそうだ。プレートの項目は“勇者”と“魔法使い”でも内容が変わるそうで、“魔法使い”の場合、これらの項目にプラスで“魔力”と“魔力耐性 ”が加わるそう。

ちなみに“勇者”の中でも精鋭に位置するような人材は、20000弱の数値がちょくちょくいるかどうかだそう。つまり、俺は何の実践も訓練もなしに、そういう奴等とほぼ互角に闘えると、そういうことだ。しかも、俺のプレートに表示された“勇者適性者”という項目。これはつまり、まだ“勇者”として覚醒していないということだそう。覚醒すると“勇者覚醒者”と表示されるそうだ。

じいさんたちの中で2.3人卒倒している奴もいたが、俺には関係ない。

ジグル委員長も頭を抱えていたし、スサノオ先生に至っては、口から魂が抜けていたけど。


「.........分かった............もういい..........帰って........」


ジグル委員長が、やっとの思いでそう言った。余りにショックだったようで、目が空虚を彷徨っていた。俺はステータスプレートを机の上に置くと、心ここにあらずといった先生を引き摺って退室した。

ユグに何て報告しよう....

やっとファンタジーらしくなってきた、かな?


次回更新は水曜日です。


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