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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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10th story 謎

「そう言えば、どうして俺の祖父の連絡先を知っていたんですか?」


リウィウスさんの車で祖父の家に向かう中、俺は一つの疑問を口にした。


「言ってなかったっけ?―――――言ってなかったな。君の祖父、アリスタ・クライマンとはかつて、ちょっとした縁があったんだよ」


「もしかして――――祖父が“ヴェーダ”の一員だったとか?」


「それはない。けれどもまあ、彼は何度か“ヴェーダ”と関わってはいる」


なんだか複雑な事情がありそうだな。車内が沈黙する。ふと、俺の携帯が振動した。電源を入れて確認してみると、ユグから一言連絡が入っていた。


“今度カラオケ行こうぜ”


そういえば、一年前にユグとカラオケに行こうとした時は、電車ジャック事件があって結局行けなかったんだっけ。いいよ、とだけ返事を入れると、俺は携帯をしまった。


田舎道を車で走ること二十分。俺達は祖父の家に到着した。前に来たのはいつだったか。二年くらい前になるのだろうか。祖父の家は、その時以来どこも変化していなかった。“田舎”に相応しいような、広く落ち着いた雰囲気の家だ。


リウィウスさんが呼び鈴を鳴らすと、玄関が開いて祖父が顔を見せた。その視線が俺に向き、表情が驚きのものに変わる。


「シェル!?なしてここにいる?」


「久しぶり、じいちゃん。色々と事情があってさ、今、この人に連れてこられたんだ」


「アタナシア・リウィウスです」


リウィウスさんが祖父に頭を下げる。


「リウィウスさんも、久しぶりですな。あんたが来たってことは、そう言う話なんじゃろ。まあ上がりなさい」


祖父はリウィウスさんを知っているようだった。俺とリウィウスさんは、靴を脱いで祖父の家に上がった。


「それでなんですね、アタナシアさん」


客室に通され、祖父が俺たちの前にお茶を置く。それと同時に、リウィウスさんは本題を切り出した。


「貴方の想像通り、私がお邪魔したのは、貴方の曾祖父の話を聞くためです」


祖父は無言でお茶を啜った。


「実はですね、貴方のお孫さんの、このシェル君が、今回の魔族討伐隊で魔境に行った際に、とても興味深いものを発見してきたのです。シェル君、出してくれるかい」


リウィウスさんに頼まれ、俺は鞄の中から“クライマン”を取り出し、祖父の前に置く。


「―――――これは」


「最初の序章だけでもご覧になって下さい。そうすれば、貴方の中にある謎のピースが一つ、埋まるはずです」


祖父は湯飲みをテーブルの上に置くと、本を手に取り捲った。しばらく、本のページを捲る音だけが空間に反響する。


十分後、祖父は本をテーブルの上に置くと、眉間を右手の指で揉んだ。


「戯言だと――――――思いたかったんだがな――――」


祖父は、やっとこさ、という口調でそれだけ絞り出した。


「シェルや“ヴェーダ”の誰かが偽装した可能性もゼロだ。誰にも話したことのない部分まで書かれてある―――――真実だったか――――」


「じいちゃん、どう言うこと?」


話の筋が掴めなかった俺は、祖父に尋ねた。


「少し待っとれ。あれを取ってくる」


祖父は立ち上がると、客間から姿を消した。


「リウィウスさん、話が見えないんですが」


「―――――かつて、魔族と人類の希望となった男と、人類を救った男が居た、と言う話さ」


もっと分からなくなりました。


祖父が大きめの茶封筒を抱えて戻ってきた。それをテーブルの上に荒々しく置き、湯飲みのお茶を啜る。


「話していただけますか?貴方の父と祖父にあった、全ての出来事を」


リウィウスさんが期待した声色で祖父に尋ねる。


「儂も全ては知らんよ。これから話すのは、儂が祖父の手記と、父から聞いた話と、儂の推測とが入り交じってる」


ここまで来ても全く話が読めない。俺はそろそろ限界だぞ。


「なあじいちゃん。あの本には、魔族と人類が共存していたと言う他に、どんな不思議が書かれてたんだ?俺、話に全く付いて行けてないんだけど」


「―――シェル、この男とお前が一緒に儂の所へ来たと言うことは、お前は“ヴェーダ”に入っているって事なのか?」


「まだ入ってない。加入希望だよ」


そうか、と祖父は溜め息を吐いた。


「運命とは、逃れられぬものなのかもしれんな」

次回から過去編に入ります。そのため、区切りの付け方の都合上、話が短くしまいました。


サボった訳ではないので、ご了承を。


次回更新は土曜日です。

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