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Near Real  作者: 東田 悼侃
第三章 悪魔編
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2nd story 登校日

「ものすげー気になるのがさ」


一年と一ヶ月ぶりの登校日、通学路上でユグと待ち合わせた俺は、学校へ向かいながらユグへ話を切り出した。


「俺って、一年生なの?二年生なの?」


選抜者として討伐隊に参加していたとはいえ、俺達は一年以上休学していたことになる。となるとやはり、進級できていないと考えるべきであろうか。


「何も聞いてないの?」


「学校からは特に何も。嫌だよなぁ。知り合いの一人も居ないような、新一年と一緒に生活するのなんて」


「うちの学校から選抜された一年、シェルだけだったもんな」


そんだよ。そうなんだよ。二年や三年の先輩は何人も一緒に選ばれてるけど、一年で選ばれたのって俺だけなんだよ。


「........鬱だな」


何だか、急に足取りが重くなった。しかも、留年して年度当初から新一年と同じクラスで過ごすなら兎も角、もう九月だからな。きっと、クラスでものすげー浮くんだろうな。


そうこうとしているうちに、学校へと到着する。俺は取り合えず、部室に顔を出すことにした。校門を潜った所でユグと別れる。


会話で騒がしい校舎の間を通りすぎ、体育館裏の部室へと向かう。この辺りも、本当に久しぶりだ。武術部に朝練習はないからな。誰か居るだろうかと不安になりながら、俺は部室の扉を開けた。


「お、やっと来たか」


中には、討伐隊に選抜された先輩がみんな揃っていた。こっちへ来い、と部長が俺を手招きする。


「さっき先生から連絡があってな。まあ、大体は予想がついてただろうが、俺達は留年扱いされるそうだ。それぞれ、去年までと同じ学年の勇者コースでひとまず生活だそうだ」


案の定。俺は溜め息を吐いて落胆した。マジで新一年と過ごすのかよ。


「まあ、そう落ち込むなシェル」


部長が俺の肩を叩く。


「聞くところ、今年の一年はなかなか面白いらしいぞ」




一年ぶりの校舎、一年ぶりの廊下、一年ぶりの教室。しかし、そこに揃う顔ぶれは、一年前とは全く違った。黒板の前に立ち、自己紹介をする俺の身に、およそ四十の視線が容赦なく刺さる。俺は、魔族討伐隊の選抜者だったために休学していたことを漏らさないよう伝えた。もしろ強調して伝えた。怯えることはない。俺はこいつらよりも年上だ。そう思わなければやっていられない自分が情けないけどな!


休み時間、ぼっちなのをまぎらわすために、次の授業の準備の振りをしていると、クラスの男子数名がつるんで声をかけてきた。あ、嫌な予感しかしない。


「同学年なんだから、敬語は使わないぜ、シェル・クライマン」


リーダー格っぽい男が、俺の机の上にバン、と片手をついた。有無を言わせないような高圧的な態度だ。


「ああ、別にいいよ」


しかし、ここは大人の余裕というもので軽く受け流す。内心ドキマギしてる?それはきっと俺じゃない。


「何やらお前、魔族討伐隊に選ばれはしたが、まだ未覚醒らしいじゃねえか」


「そうだな。それがどうかしたか?」


次の授業で使う教科書を机の上に取り出しながら、俺は受け答えする。


「だからって調子に乗ってもらってちゃ困るんでな。上下関係をキッチリさせとこうと思うのよ」


男が指の間接を鳴らす。何か、こういう奴お隣のお坊っちゃま学校にも居たよな。こう言うタイプは、無視するといけないんだよな。

丁重にお断りして帰っていただこう。


「年齢は俺の方が上。でも学年が同じだから立場は平等。これじゃあ駄目なのか?」


ふん、と男が鼻を鳴らす。


「認めないな。俺より弱い奴の言う言葉は、大体が寝言だ」


この男は、何を根拠に自分が俺よりも強いと思っているのだろうか。


「お前は俺よりも強いってことか?」


俺はたまらず尋ねてみる。


「当たり前だ。未覚醒勇者のお前が、覚醒勇者である俺に敵うはずがないだろ」


男は、俺の右隣の机の上に腰を下ろした。机の持ち主が椅子の上で眉を潜める。


「おいおい、人の机の上に勝手に座るなよ」


俺が男を注意する。男は机の持ち主を一瞥すると、興味もないように俺に視線を戻した。


「この学校の中では、俺が一番強い。弱い奴が強い俺に従うのは当たり前だからな。特にこの学年は、その事を身をもって知ってるからな。俺に逆らう奴は居ないんだよ」


学校で一番強い?それは、是が非でも部長と戦わせてみたいものだ。それにしても、サルゴンはどうしてるんだよ。あいつだって相当の実力者だぞ。


「分かったか?魔族討伐隊の選抜者だか何だか知らんが、俺には逆らわないことだな」


男が足を組む。


「逆らったら?」


「一週間ほど医者に世話になるだけだ。分かったら逆らうなよ」


「逆らわなかったら危害は加えないんだな?」


「逆らわなければな。ま、お前が物分かりの良い奴で良かったってこったな」


男は腰をあげると立ち去ろうとした。でも、話はまだなんだよなぁ。俺はその背中に向かって言った。


「でも断る」


男とその取り巻きが目を見開いて振り返る。


「驚いた。痛い目見ないと分からないのか」


「力で他人を支配するのは好きじゃないんでな。それにお前は、色々と勘違いをしているようだ」


「勘違い?」


男が首をかしげる。


「何で未覚醒勇者である俺が討伐隊に選抜されたのか、考えたことはないのか?」


「いいだろう」


男が俺に詰め寄る。


「お前が俺よりも強いって自信があるってのなら、その鼻ごとへし折ってやるよ。昼休み、部室裏に来い」


それだけ言うと、男は立ち去っていった。全く。一年も留守にして居るうちに、面倒なのが入学してきたもんだ。ちゃんとしつけてくれよな、サルゴン。


ユグのキャラが思い出せない.....



次回更新は土曜日です。

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