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Near Real  作者: 東田 悼侃
第二章 遠征編
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17th story 一回戦

「逃がすな!追えーッ!」


敵の攻撃勢およそ三十人と、俺達の攻撃勢十人が森林の中央で衝突し、戦力的に不利な俺達は一時、森林の端へと撤退する。森林の端で行き詰まった俺達十人は、直ぐに敵に包囲された。


「馬鹿め。本隊と合流すれば勝機はあったものを。わざわざ自ら孤立するとはな」


敵の攻撃勢力を束ねるリーダー格の男が、多少息を切らしながら嘲笑する。その男の様子に、俺達は顔を見合わせると笑い転げた。


「何が可笑しいんだ貴様等」


ブチ、と何かが切れる音がする。なかなか、煽りに弱いみたいだ。


「ムカつくな。お前ら、撃ち殺ッ―――!?」


リーダー格の男が俺達に対して攻撃を指示しようとした瞬間、男が腰に巻いたポーチの中の“テルミドール”が鳴った。敵三十人が、一斉にキョトンとした顔になる。故障か?とでも言いたげだ。


「どうした?狐や狸に化かされたりでもしたか?」


味方の一人がそう煽った途端、銃声と敵方の“テルミドール”の電子音が不協和音を奏で始めた。俺達の前に陣取って固まる三十人が、次々と撃たれていく。


どこから?後方からだ。十メートルほどの距離からなら、止まっている的に弾を当てるなど朝飯前だ。最悪俺達の方へ流れ弾が来たとしても、被害は少ない。だから、わざと敵をこの袋小路に誘い込んで、その後ろを本隊で囲んだ。


包囲したと思ったら、実は逆に包囲されていました、がコンセプトだ。


「お疲れ様ー」


呆気に取られながら、十秒と待たずに全滅した三十人を更に煽ると、俺達は本隊と合流を果たした。


「被害は?」


大将マークを着用した味方の男が俺に尋ねる。俺は首を横に振って答えた。


「なし。全弾、敵に命中だ」


おお、と多少の歓声が上がる。向こうは三十人を失ったのに対し、こっちの被害は未だゼロ。これで勝てる可能性が増えた。


「それじゃあ、この後も作戦通りで」


「奇襲に次ぐ奇襲、な?効果があるかどうかは分からないけど、まあ全戦力を掛けるんだ。成功しないとな」


俺達は一度、全員で集合すると、そこからまた三班に分かれた。


一班、正面突撃隊は三十五人。二班、後方奇襲隊は五人。そして三班、上空奇襲隊は十人。因みに、俺は三班の上空奇襲隊。選抜要因は大きく二つ。十人のうち、二人が風邪魔法使いで、直接戦力が八人であること。そして、失敗が許されない、ということ。


成功が絶対条件。失敗すれば、俺達の敗けだ。


また、この作戦には参加せず、自陣に残る者が五人。大将と、その護衛だ。


「シェル、用意は良いか?」


一班が突撃するぞ、と三班の班員が俺の肩を叩いた。おっと、どうやらまた、そっちの世界に行っていたようだ。俺は意識を現実に引き戻すと、一旦深呼吸した。集中集中。


俺達三班は、ギリギリまでは本陣に居残る。二班が襲撃成功したのを見届けてから飛び立つ。敵方に発見されないようにするためだ。二班の奇襲が成功した後なら、敵も混乱の只中に居るだろうから、三班の奇襲成功率も上がる。


「それじゃあ、行ってくるわ」


一班のフリーメル先輩が俺に手を振る。俺は小さく手を振り返した。それに満足したのか、満面の笑みを浮かべるフリーメル先輩。あんたは子供かっ!子供みたいなのは体だけにしろよ。


五分後、にわかに敵陣の方が騒がしくなった。一班が仕掛けたようだ。二班の奇襲を待って、俺達三班の十人はその音に聞き耳をたてていた。魔法使いの二人が、向かい風を起こして音を拾い易くしてくれる。マジ有能だわ。魔法最高。もう大好き。


いやはや、冗談はさておき。


一班突撃から数分が経過した。そろそろ、戦況の偏ってくる頃合いだ。テコを入れるなら今だ。俺は戦闘に向けて準備を始めた。それとほぼ同時に、敵陣からの喧騒が増す。悲鳴がいくつか混じって聞こえてきた。二班が動いたようだ。


フワリ、と体の浮き上がる感覚があった。魔法使いの二人の仕業だ。俺は足元を見た。瞬く間に、俺達は上空十メートルほどの高さにまで到達した。高い。眼下には森林が広がる。


俺達は一キロ近い距離を木々に邪魔されることなく飛んだ。およそ一分で、敵陣上空に辿り着く。


おうおう、大混戦じゃねえか。二班の奇襲の成功で六十六組が有利ではあるが、窮鼠猫を噛む、相手の勢いも侮れない。


俺達三班は、上空から敵大将を探した。


程無くして、目当ての人物は見付かる。中央から少し離れた場所に、数人の六十六組のメンバーを相手にする敵大将とその護衛の姿があった。


「行くよ」


魔法使いの一人が言う。それと同時に、俺達は敵大将目掛けて、一直線に急降下した。


体内の臓器が引っくり返されるような、あの落下感に襲われる。ジェットコースターが嫌いな人にはおすすめできない。


直後、ズドン、と地面に足首までめり込みそうな勢いで、俺達は敵大将の周辺に着地した。


顔を上げると、目の前にポカンと口を開けた敵大将が居る。どいつもこいつも。想定外に驚きすぎだっつーの。


頭よりも体が先に動いた。撃てば勝ちじゃん、と思った頃には、俺は既に引き金を引いていた。


至近距離で“テルミドール”が鳴る。これが本当にうるさいんだよ。多分、百メートルや二百メートル離れたくらいじゃ、まだ聞こえると思う。


しかし、その音に負けないような歓声が、六十六組から発せられた。


ワァッと、皆が俺の元へ駆け寄ってくる。その波に押し流され、気付けば胴上げされている始末。


「ちょっ!ちょっと待てお前ら!まだ一回戦だから!後八試合ぐらい勝って、優勝してからやろうぜ!?これ!みっともねぇって!」


恥ずかしくなって叫ぶも、多分誰にも届いていないし、届いていても聞いてくれない。結局、何も抵抗できず、一分程胴上げを堪能された。


全く。勘弁してくれよ。下ろすときは下ろすときで、地面に落としやがるしさ。誰だよ?力抜いたの。





これで二百組のうち、百組まで絞られた。次は、ベスト五十を懸けた第二回戦だ。



.........イマイチ締まらない数字だなあ。

最近クオリティーが落ち気味。ごめんなさい。精進します。


次回更新は土曜日です。

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