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Near Real  作者: 東田 悼侃
第二章 遠征編
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16th story 騒がしい作戦会議

「いよいよ来週から大会が始まる訳なんだけれど」


光陰矢の如し。四ヶ月はあっという間に、いや、「あ」と言う前の、息を吸ったような段階で終わってしまった。いよいよ、じゃなくて、早々に、来週から模擬戦闘の大会が始まる。俺達六十六組は、夕食を早めに切り上げて宿舎外に会し、大会に備えて作戦を練っていた。


「何か案がある人」


単刀直入に俺が尋ねる。四ヶ月間、この六十六組と色々こなしていくうちに、いつの間にか、俺がリーダーということになっていた。二人だけ、まだそれを認めていない人もいるんだけど、じゃあ他に誰がやるんだ、というのがフリーメル先輩の意見。出来る人なんて、一杯居そうだけどなぁ。


「あえて、大将が奇襲をしかけるってのはどうだ?かなり意表を突けるぞ」


そのフリーメル先輩が意見する。


「駄目だ。失敗の可能性が高い」


即刻却下される。ここで、大会のルールについて説明しておこう。大会は全員参加型で、およそ一ヶ月に渡って行われる。トーナメント方式の一発勝負で、負ければチームは即解散。会場は“セルベ実戦区”一帯。制限時間三時間の、大将撃破で勝利だ。会場が倍以上になったことと、制限時間が延びたこと以外は、四ヶ月前に百五組とやったあの模擬戦闘とほぼ同じだ。


そして、この組で優勝すれば俺は、“小佐”の地位をプラトン長官から約束されている。それを手に入れられれば、仲間を守ることが出来るかもしれない。俺にとって今や、六十六組の面々も大事な存在だ。


「それじゃあ、最初は徹底的に大将を守って、相手の戦力を削ったところで、一点集中で攻撃するか?」


別の一人が新案を提示する。


「つまり、カウンターね」


「でもそれ、何回も出来るものじゃないよね。最初に守備に徹しているときに、相手が最大戦力で突っ込んできて、こっちの戦力まで削がれたら、泥仕合だわ」


「大将を森の中に隠して、他は草原の上で、如何にも大将が居るかのように必死に守るのは?」


「確かに、それなら大将はやられないかもしれないけど、敵に探索に長けた魔法使いが居れば、一瞬で敗北するわけだし、何よりこっちの攻め手がない」


問題なのは、いかに大将を守りながら、敵大将を倒すのか、だ。活発な議論が続く。


「じゃあ今度は、地上に人員を割いて空から奇襲するか?」


「空からの奇襲は、成功すればかなり有効だけど、そんな単純な作戦じゃ直ぐに読まれるし、第一、上空は発見されやすい上に被弾しやすい」


「両端に開いて、挟み撃ちとか?」


「一人ひとりの層が薄くなるから、結果的に戦力の現象に繋がる。厳しいな」


一旦議論が止まり、それぞれが思案に暮れる。最近そればかり考えていて、寝不足なんだよな。頭働かねえ。もっとちゃんと寝ないと、またぶっ倒れて保健医のおばちゃんに怒られちまう。


「あえて...」


一人が口を開いた。


「正攻法で攻めるってのはどうだ?」


「正攻法ってのは?」


俺は聞き返す。


「攻撃する人と守備する人に分かれて、それぞれに仕事をこなす」


それが正攻法なのかはともかくとして、それでもやはり、余り有効打になる気はしない。もっと決定的な“何か”が必要に思える。その“何か”が分からなくて、今こうやって苦労してるんだけどね。


「んー。そんなに悪くはないんだろうけど、でもそれじゃやっぱり、攻撃側も守備側も戦力が中途半端になるよね。攻守は均等に出来た方が良さそうだし」


と、フリーメル先輩。となると、攻守一体型が妥当な結論だろうか。


「そうすると、やっぱり大将ごと敵陣に突っ込んだ方がいいんじゃねえのか?」


「でも、その策もやっぱり、奇襲と変わらないような気がする。一度披露しちゃえば、二度と通用しないと思うよ。返り討ちに合って負けるのが落ちだ」


きっと、 どこか妥協するべきなんだろうけど、でも、優勝を狙うとしたら、リスクはとにかく減らしたい。


「それじゃあ、相手の策に合わせて臨機応変に対応するか?」


「それは、瞬時に戦況理解できて、最善の一手を打てる頭脳と、洗練された集団行動が必要でしょ。あんたのその頭じゃ、まず無理よ」


「なんだとッ!」


出たよ、この二人。水魔法の得意な男と、無駄にオラオラな女勇者のケンカ劇。二人にその気はなくて、本気で言い合ってるとしても、見ている側からしたら圧倒的に劇なんだよな。コントなんだよな。


「テメェ表出ろ!今日こそ決着つけてやる!」


「決着って。いつも私が勝って終わってるじゃない。そもそも表ってどこよ。もっと具体的に言いなさいよ」


腐れ縁と言うよりかは、もうこの二人、付き合ってるって言っていいんじゃね?なんだかんだ言って、いつも一緒に行動してるって、他の奴から聞いたぞ。


「喧嘩する程仲が良い―――か」


呟いた後俺は、しまったと立ち上がった。周囲から哀れみの目を向けられる。


「「あ”?」」


今まさに、喧嘩しようとしていた二人が、俺の方をギロリと睨んだ。


「おいシェル。いくらお前でも、今の言葉は聞き逃せねえな」


「そうよ。私とこの馬鹿が仲良しだって?ふざけないで頂戴。こんな奴、顔を会わせるだけで吐き気が込み上げてくるっていうのに」


「そうだそうだ。俺はこんなおとこ女、好みじゃねえんだよ。俺らのこと仲良いだとかほざくやつは、誰だろうと――――」


「「ブッ飛ばす」」


パキ、と二人が指の間接を鳴らす。嘘つけよ!やっぱり十分仲良いんじゃねえか!


「頑張れー。シェル」


フリーメル先輩達がははははと笑う。こん畜生!さっさと作戦立てやがれ!


俺は仲良し二人に背を向けると、全力で逃走した。


「あっ!おい待て!逃げ点じゃねーよ!シェル!」


「私達に一発殴らせろ!」


二人が俺を追いかけてくる。このリア充めがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

眠いぜ.....




次回更新は水曜日です。

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